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同じ国なのに所得税率が違うってどういうこと?「タックスヘイブン」で有名なケイマン諸島では英国の税法が適用できない…イギリスの複雑な領土事情

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月13日 11時15分

同じ国なのに所得税率が違うってどういうこと?「タックスヘイブン」で有名なケイマン諸島では英国の税法が適用できない…イギリスの複雑な領土事情

(※写真はイメージです/PIXTA)

ある地域で税制上の優遇を受けることができる「タックスヘイブン」。そんなタックスヘイブンで有名なのがカリブ海のケイマン諸島など、イギリスの海外領土です。日本でイギリスと呼ばれるこの国は、実は4つの地域を含んでいます。イギリスの独特で複雑な地理と税制度について詳しくみていきましょう。本連載では、国際税務の専門家が解説します。

英国の名称

日本では英国またはイギリスという名称が一般的ですが、外務省による正式名称は連合王国(The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland:略称UK)というものです。英国はイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの地域が1つの国になっています。UKはこれらの総称です。

しかし、サッカーあるいはラクビ―の世界大会ではUKという国は出場せず、イングランド、スコットランド、ウェールズの代表チームが参加しています。日本的な感覚からすると、世界大会に1つの国から地域代表が多数参加することに奇異な感じがします。

ちなみにラグビーのアイルランド代表は、アイルランドラグビー協会によって組織されるラグビーユニオンです。アイルランドが南北に分かれる以前から同協会が存在していたため、アイルランド共和国および英国の1地域である北アイルランドから選手が選出されています。

また、オリンピックに出場した英国選手のゼッケンの名称はGB(Great Britain)などになっています。

スコットランドでは独自の通貨が流通 

英国は2020年にEUから離脱しました。その理由の1つに、EUの共通通貨であるユーロを国の通貨にしたくなかったからという説があります。英国は一貫してポンドが基軸通貨です。

しかしスコットランドではイングランドで通用するポンド紙幣も使用できます。通常のポンド紙幣はイングランド銀行によるものですが、スコットランドでは3つの銀行がそれぞれ紙幣を発行しています。

また文化の面でも、スコットランド独特のキルトというタータン柄のスカートのような衣装があります。

上記に述べたように、英国は2020年にEUを脱退しています。しかし、スコットランドは独自にEUに加盟するといううわさがあります。

どこまでが英国なのか

英国は19世紀には多くの海外領土を有していました。英国が上記の4つの地域から構成されていることは国際的に認められています。

たとえば日本と英国の租税条約では、英国の地理的範囲は「グレートブリテンおよび北アイルランド」となっています。

しかし、英国とアイルランドの間にあるアイリッシュ海には「マン島」があります。英国国王がこの島の領主から島を買い取ったことから、王室属領となっています。マン島は人口8万余で、法人税の基本税率が0%のタックスヘイブンです。マン島は独立国家ではなく、また英国の海外領土でもありません。しかし、英国が責任を持っている領土となっています。

マン島と同様に英仏海峡には、ガーンジーとジャージーという島があります。この2つの島は、周辺の小島を合わせてチャンネル諸島と呼ばれ、ガーンジーは人口6万5,000人、ジャージーは人口9万5,000人です(王室属領で、タックスヘイブン)。このように英国の周辺には、英国の領土ともいえない地域があります。

また、英国の海外領土としては、カリブ海のケイマン諸島、北大西洋のバミューダがありますが、いずれもタックスヘイブンです。これらの海外領土は自治権が認められていますので、独自の法律、税制を規定しています。英国領土といっても、英国の税法が適用になるわけではありません。

英連邦とは?

英連邦という56の国から成る連合体があります。たとえば、カナダあるいはオーストラリアの元首は英国国王です。このように英連邦の国では、元首を英国国王とする国がありますが、政治的には英国とは別の独立国で、英国が支配しているという状況ではありません。

国税なのに所得税が地域によって異なる

地方税がその地域により異なるのは、ほかの国でもよくあります。ですが、国税である所得税が地域により異なるというのは少し異例です。

英国には地方税としての所得税がありません。もちろん所得税は英国の国税ですが、2017年以降、スコットランド議会は、所得税の立法権限を行使して独自の税率をスコットランド居住者に適用しています。

現在でも英国は多くの海外領土を有していますが、英国の経済力の衰退とともにこれらの地域に自治権を与えたことから、英国の支配が現在も強力という状態ではありません。  

矢内一好

国際課税研究所首席研究員

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