すでに三日坊主で終わってしまった…企業経営支援で活用している、「新年の目標」を達成するための“3つの技術”
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月9日 8時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
新年を迎え、目標を立てたものの、気づけば三日坊主で終わってしまった経験はありませんか? 「意志が弱い」と自分を責めがちですが、実は目標を継続するためには技術的なアプローチが有効です。本稿では、社員50名の新聞販売店を23年間経営し、多くの企業を支援してきた米澤晋也氏が、企業経営支援で活用している、三日坊主を防ぎ、目標を達成へと導く3つの実践的な技を紹介します。
新年の目標への取り組みを継続するために“必要な技術”
新年を迎え、決意新たに目標を立てたはいいが、すでに三日坊主で終わってしまったという方もいると思います。
このような挫折を繰り返すと、自分自身を「意志が弱い人間」と責めてしまいますが、本当にそうなのでしょうか。意思は、本人の資質と捉えられがちですが、技術で解決できる部分が多分にある領域です。
本稿では、私が企業の経営支援を行う際に活用している、三日坊主を防ぎ、取り組みを継続させる3つの技をお伝えしたいと思います。
1.「何をやるか?」の前に「何を終わらせるか?」を設定する
三日坊主で終わる最も大きな原因として「終焉」を設定していないことが考えられます。
私たちは、目標を「何をどのように始めるか?」という開始の問題として捉えますが、その前に「何を終わらせるか?」という終焉を設定しなければなりません。
米国の診療心理学者であるウィリアム・ブリッジズ氏は、失恋や失業、大切な人との死別など、人生の岐路に立つ人を多く診る中で、「転機を乗り越えられない人」の特徴として、過去にケリをつけていない……「終焉」が済んでいないという要件を明らかにしました。始める技術ではなく「終わらせる技術」の問題だったということです。
このことは、失恋や失業など、望まざる出来事だけでなく、自らの決意で新しいことに挑戦する場合にも応用できると考えます。
また、ブリッジズ氏は、終焉と開始との間には「中立圏」という、モヤモヤした期間が必要ということも指摘しています。このことは、失恋の経験がある方には深くご理解いただけるのではないでしょうか。失恋の翌日に新しい恋は始められません。失恋を受け入れることができずに苦しみ、自分と向き合う期間が必要なのです。
中立圏から脱すると、新しい挑戦への「開始」のフェーズに入りますが、この時の切り替えを有効に行うマインドセットとして、私は「終焉のセレモニー」という方法を提唱しています。
葬儀会社での事例……震災後の心のケアとしての「位牌」
事例として、葬儀会社を経営する社長から聞いたエピソードを紹介したいと思います。
大震災が起きると、ご遺体が見つからない犠牲者が出ます。ご遺族の中には、ご遺体と対面できないために、気持ちに区切りをつけることができず、ずっと苦しむ人がいると言います。
同社では、東日本大震災の際、そんな方々のために「せめて位牌だけでも」と無償で提供したところ、多くの人が別れを受け入れることができたと言います。「位牌を受け取る」という行為が、これまでの日常を終わらせる「終焉のセレモニー」の役割を果たしたということです。
セレモニーは立派なものである必要はありませんが、インパクトが必要です。「遠山の金さん」は、物語の終わりに「これにて一件落着」と言いますが、あのフレーズを聞くと事件が終わったことがマインドセットされ、翌週の視聴に意識を切り替えることができます。
企業では、新しい経営計画書を作る際に、「お疲れ様でした!」の掛け声とともに、以前の計画書を破り捨てるといったアイデアがあります。
企業で「終焉→中立圏→開始」をスムーズに行うためには、スケジュールに工夫が要ります。
経営者は次期の計画を立てる段階でセレモニーが必要で、社員はその計画を実行する直前にセレモニーが必要という、タイムラグがあるからです。
例えば、新年度が始まる前までの期間に、経営者がまず「終焉→中立圏→終焉のセレモニー」のプロセスを踏み、心機一転して次期の経営計画を立案します。そして、年度終わりに打ち上げを行い、そこでインパクトあるセレモニーを行い、社員のマインドセットを行うというスケジュールが考えられます。
個人が新年の目標を立てる場合は、12月に入ったら終焉→中立圏のプロセスに入り、大晦日にセレモニーを行い、新年に計を立てると良いでしょう。
2.計画は細かく作りすぎない
最近、「PdCa」という言葉を知りました。「PDCA」が原型ですが、PとCは大文字、dとaは小文字で書かれています。
要するに、Pan(計画)とCheck(チェック)はしっかりやるが、Do(行動)とAct(改善・対応)は弱いという、考えてばかりで行動しない、頭でっかちな日本企業の問題点を指摘した造語です。
計画を細かく作りすぎると、かえって足かせになることがあります。
特に現代は、外部環境の変化が激しいので、計画通りに事が進むことは稀です。このような状況下で綿密な計画に依存すると、計画の修正に時間と労力を奪われ、気づけば「年がら年中計画ばかり立てていた」ということになってしまいます。
スタンフォード大学教授のキャスリーン・アイゼンハート氏は、世界中のコンピューターメーカーを調査し、最もイノベーティブな成果を上げた組織の特徴として、計画段階にかける時間が少なく、実施段階における時間が多いことを明らかにしました。
計画は、まずは大まかなものを立て、できるだけ早く実行に移すことが大切です。行動の結果を振り返り改善する「やっては直す」の繰り返しで計画の精度が高まっていくのです。
3.小さな成果をキャッチする仕組みをつくる
ダイソンの掃除機は、ゴミが溜まるボックスがスケルトン(中身が見える)構造になっています。
ユーザーなら分かると思いますが、ボックスに溜まったゴミを見ると「こんなにもゴミがとれた」と充実した気持ちになります。
通常、掃除の成果は、部屋が綺麗になった時に実感するものですが、そこまでの道のりは長く、途中で挫折する可能性があります。スケルトンボックスにより「小さな成果」を確認でき、モチベーションを保つことができるのです。
小さな成果を、できるだけ早くキャッチすることは三日坊主防止に大きく貢献します。この要領は、伝統的にゲーム業界で活用されています。
ゲーム業界は非常に競争が激しいレッドオーシャンです。最近人気のスマホゲームは、まずは無料でダウンロードして、ゲームが進むにつれ課金していく仕組みになっています。つまらなければすぐに削除されてしまいますので、何としても三日坊主は避けたい。
そこで、ゲームを始めたら、できるだけ早い段階でアイテムを入手したり、ミニボスを倒したりと、小さな成果を得られるように設計するそうです。
禁煙に成功した友人は、禁煙アプリを活用しました。初期設定で、タバコの金額と、これまで1日あたりに吸っていた本数を入力すると、禁煙によって節約できた金額と、伸びた寿命が日々更新されていきます。
友人は、マメにアプリを開いて小さな成果を確認することでモチベーションを維持し、見事に禁煙を成功させました。
ビジネスでは「結果の前に訪れる変化」に着目する
ビジネスの場合、結果が出るまでに時間がかかりますので、結果の前に訪れる変化……例えば「顧客から感謝の声が届くようになった」とか「問い合わせが増えた」といったものに着目すると良いでしょう。
継続する意思は技術で構築することができます。
・「何をやるか?」の前に「何を終わらせるか?」を設定する。
・計画を細かく作りすぎない。
・小さな成果をキャッチする仕組みをつくる。
新年の誓いが三日坊主で終わってしまった方は、次の節目を活用して「終焉」の設定から行ってみてはいかがでしょうか。
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