初競りマグロ2億700万円!…「2025年株高」のサインか【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月7日 7時15分
(※画像はイメージです/PIXTA)
2025年の幕開けを告げる豊洲市場の初競り。青森県大間産のクロマグロが史上2番目の高値2億700万円で落札され、早くも話題を呼んでいます。しかし、注目すべきはその価格だけではありません。過去のデータを見ると、初競りで高値が付いた年は株価も上昇する傾向にあるようです。本稿では、景気の予告信号灯として「マグロの初競り」「十二支と日経平均株価」を取り上げます。エコノミスト・宅森昭吉氏の解説をみていきます。
大間産クロマグロ、史上2番目の高値2億700万円
魚河岸では新年の初取引日に、その年の商売繁盛を願ってさまざまな魚介類が通常より高い価格で取引されます。なかでも、築地市場を受け継いだ豊洲市場での新年恒例のマグロ初競りが毎年注目されています。
25年1月5日早朝に豊洲市場で行われたマグロの初競りで、青森県大間産クロマグロの最高値は記録が残る1999年以降で2番目の高値の2億700万円でした。1億円を超えるのは2024年の1億1,424万円に続き2年連続になりました。4日に大間港「第56新栄丸」が釣り上げた276キロで、1キロ単価は75万円。この日の取引で最高値の「一番マグロ」になりました。過去最高値は築地市場から豊洲市場に移転後初めての19年の初競りで落札された大間産クロマグロの3億3,360万円です。
なお、「一番マグロ」という用語に関しては、日刊スポーツ(電子版)の24年1月5日の解説記事では、
鮮魚を対象とする市場では、価格の基準となるのは1キロ当たりの取引値になる。市場における「一番マグロ」も同様で、あくまで1キロ当たりの最高値を記録したマグロの呼称。初競りで話題となる大きなマグロの総額について高価であることから「一番マグロ」と勘違いされやすい。また、市場では1匹の総重量で価格を取り上げることはほぼない。報道する側が、響きがいいので都合よく「一番マグロ」という言葉を間違って使っているケースは少なくない。としています。
2019年には、すしチェーン「すしざんまい」を展開する喜代村が史上最高の1キロ当たり120万円、総重量278キロで、3億3,360万円で落札しました。21年、22年はコロナ禍による消費不振が響き、一番マグロの価格もそれぞれ前年を下回ってしまいました。しかし、24年・25年にはインバウンド客も増え、売り上げが大きく伸びるというコロナ禍からの本格的な回復が、競り値を吊り上げる原動力になったようです。
各種報道によると、25年の一番マグロを競り落とした「やま幸」の社長は、
鮮度が抜群によく、雰囲気もよかったので狙いに行った。ほっとしている。と話していました。一番マグロを競り落としたONODERAGROUPの回転鮨店では「赤身とトロ1貫ずつのセット」を1,160円で提供しました。また、昨年9月に傘下に入った和食老舗「なだ万」でもマグロのセットを提供したということです。
ご祝儀価格的な高額の落札ができる年の景気はしっかりしている
2008年から25年までの18年間で一番マグロの価格(1キロ当たり金額)が10万円以上は9回、24年までの8回すべてで、その年の日経平均株価はすべて上昇し、上昇率の平均は+23.2%となりました。また、マグロ初競り価格が1億円以上になった過去4回では、その年の日経平均株価は2ケタ上昇しています。ご祝儀価格的な高額の落札ができる年の景気はしっかりしていると考えられます。
最高値が1億1,424万円で、1キロ当たり48万円になった24年の日経平均株価は、年間で+19.2%上昇しました。25年もマグロの初競りの結果から、日経平均の上昇が期待されます。
「辰巳天井、午尻下がり」巳年は日経平均上昇が期待される
「辰巳天井、午尻下がり、未辛抱、申酉騒ぐ、戌は笑い、亥固まる、子は繁栄、丑はつまずき、寅千里を走り、卯は跳ねる」という十二支と株価との関係を表す格言があります。データで確認すると、いくつか例外もありますが、おおむね格言どおりに株価が動いているといえそうです。
1950年から2024年のデータで日経平均株価・前年末比の75年間の平均をみると上昇率の平均は+11.1%です。12年に1度、暦の上で回ってくる十二支ごとの日経平均株価・前年末比の平均をみると、全期間の平均+11.1%を上回る十二支は、辰年(+26.7%)、子年(+22.5%)、卯年(+18.0%)、亥年(+16.5%)、酉年(+15.7%)、巳年(+13.4%)の6つです。
逆に+11.1%を下回る6つの十二支には平均で2ケタの上昇率はなく、最も高くても申年(+8.8%)です。次いで未年(+7.9%)、戌年(+6.2%)である。ほとんど横ばいに近い十二支は丑年(+0.8%)、寅年(+0.2%)で、いちばん低いのが午年(▲5.0%)で格言のなかで唯一「下がり」と下落を示唆されている十二支といえます。
米国では4年に一度大統領選挙が行われ、その前年にNYダウは上昇しやすい傾向があります。NYダウは上昇すると日経平均株価も上昇しやすい傾向があります。日本にも影響があるか確認してみると、米国大統領選挙の前年の十二支・3つのなかで、上昇率が高い十二支を6番目までに亥年と卯年の2つは入りますが、未年は含まれません。また米国大統領選挙の前年の十二支・3つのうち子年と辰年の2つは入りますが、6番目までに申年は含まれないので、米国大統領選挙の影響であるとは必ずしもいえません。
ただし、上昇率が高い十二支を8番目まで拡大すると、未年、申年も含まれるので、十二支と日経平均株価との関係には、4年に1度の米国大統領選挙が少なからず影響している可能性があるといえそうです。
最近12年間(2013年~2024年)の日経平均株価・前年末比は、75年全期間(1950年~2024年)の動きとほぼ同じ傾向です。不思議なことに、2ケタの上昇率となった年は、辰年、巳年、酉年、亥年、子年、卯年の全期間平均でも2ケタ上昇率の6つの十二支です。
2013年巳年+56.7%と2ケタ上昇後、14年午年+7.1%、15年未年+9.1%、16年申年+0.4%と3年間平均以下の上昇率にとどまりました。17年酉年+19.1%と4年ぶりに2ケタ上昇になり、18年戌年が▲12.1%の下落。19年亥年+18.2%、20年子年+16.0%と2年連続2ケタ上昇率となりました。21年丑年+4.9%、22年寅年▲9.4%ともたついたあと、23年卯年は+28.2%と跳ねました。24年辰年は+19.2%です。一つ前の12年辰年は+22.9%でした。「辰巳天井」といえそうです。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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