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年金が増えても幸せにはなれませんでした…「年金月30万円」72歳おひとり様男性、老後不安は消えても「年金の繰下げ」を悔やむワケ

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月7日 8時15分

年金が増えても幸せにはなれませんでした…「年金月30万円」72歳おひとり様男性、老後不安は消えても「年金の繰下げ」を悔やむワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

総務省の調査によると、65歳以上の高齢夫婦における1ヵ月の平均支出は25万円ほど。年金だけでは月に3万円ほど不足する計算です。年金だけでは暮らせない……そんな不安を前に、高齢になっても働いたり、年金が増額となる繰下げ受給を選択したりする人が増えています。ただ、こうして叶える「お金の不安のない老後」が、本当に幸せとは限らないようです。

老後を考えると不安ばかり…定年後も働く高齢者のホンネ

相川浩さん(仮名・72歳)。年金生活をスタートさせて2年が経ちます。

――60歳で定年を迎えましたが、まだ住宅ローンの返済があり、貯蓄も十分ではなかったんです。妻とも話をして、定年以降も働くことにしました。老後のことを考えるといくらお金があっても不安がなくならなくて……結局、働いていた会社の上限ギリギリ、70歳まで働きました

65歳で仕事を辞めるか、それとも働き続けるかを考えたといいます。相川さんが選択したのは「働き続ける」。

――65歳の時点で貯蓄は2,500万円ほどあったかと思いますが、もっとお金がないとやっぱり老後が不安。妻は「そろそろゆっくりしたら」と少し呆れていましたけど

【働く目的は何か?】

■お金を得るため

全世代平均…64.5%、60代…62.2%、70代以上…39.7%

■社会の一員としての務めを果たすため

全世代平均…10.8%、60代…11.9%、70代以上…16.1%

■自分の才能や能力を発揮するため

全世代平均…7.2%、60代…7.4%、70代以上…8.5%

■生きがいを見つけるため

全世代平均…12.8%、60代…15.9%、70代以上…24.9%

出所:内閣府『国民生活に関する世論調査(令和5年11月調査)』

相川さんが働き続ける選択をした理由。「年金の繰下げ受給」の存在も大きかったといいます。老齢年金は原則65歳から受給。しかし希望すれば66~75歳の間で受給開始のタイミングを遅らせることができます(昭和27年4月1日以前生まれの場合、繰下げ上限年齢は70歳)。1ヵ月遅らせるごとに受給額は0.7%アップ。最大84%増やすことができます。

――年金の受取額が増えれば当然、老後も安心です。だから年金の受け取りも繰り下げることにしたんです

70代、お金の不安はなし…それでも幸せを感じない理由

65歳で受け取る予定だった年金は月20万円ほど。70歳まで繰下げることで、月受取額は1.42倍に。さらに65歳以降も厚生年金に加入し続けたことで、72歳となった相川さんは月30万円ほどの年金を受け取っているといいます。手取りにしたら25万円強。70歳まで働き、貯蓄も3,000万円を超えたそうです。もうお金の不安はないのでは?

――「絶対」ではありませんが、だいぶお金の不安はなくなりました

そういう相川さんには笑顔はありません。その理由は、45年を数えた妻・良子さんとの結婚生活が終わってしまったから。

――子宮がんでした。気づいたときには肺とかにも転移していて……ちょっと間に合わなかったね

相川さんが70歳で仕事を辞めたあとに発覚した妻のがん。何度か入退院を繰り返す闘病生活は1年ほど続きました。

――仕事を辞めたら、ゆっくりどこかに行こうと話していたんですけど……

良子さんが亡くなる前、「お墓参りがしたい」と1泊2日でふるさとに帰省。定年後、夫婦で行った唯一かつ最後の旅行になりました。

――妻が先に亡くなって、1人になるなんて考えてもみなかった

――お金がないとどうしようもないと思っていた。でも年金が増えても幸せなんてことはない。年金はさっさともらって、もっと妻との時間にお金を使えばよかった

厚生労働省『令和5年簡易生命表』によると、65歳時点の生存率は男性89.5%、女性94.1%。平均余命は男性19.5年、女性24.3年です。また70歳時点での生存率は男性83.9%、女性91.9%。平均余命は男性15.65年、女性19.96年です。

法改正により、今や「70歳定年時代」といわれています。確かに、70歳まで働いても多くの人には長い老後が待っていることは明らか。ただ絶対というわけではありません。老後に対して「お金の不安」は尽きることがありませんが、相川さんのように、心配が過ぎて後悔の要因になることも。

老後を見据えた資産形成。まずはどのような老後を実現したいか、夫婦でしっかり話し合っておくことが重要だといえるでしょう。

[参考資料]

内閣府『国民生活に関する世論調査(令和5年11月調査)』

日本年金機構『年金の繰下げ受給』

厚生労働省『令和5年簡易生命表』

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