うまくやれていると勘違いしていました…「月収35万円」60歳再雇用サラリーマン、若手社員「ありがとうございます。さすがですね」に隠された本音に唖然
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月7日 5時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
高齢者雇用の拡大がトレンドであるものの、「定年は60歳」という会社が大多数。さらに60歳定年企業に勤める定年サラリーマンの9割弱が再雇用などでそのまま会社で働くことを選択しています。そこでは、多かれ少なかれ「世代間の衝突」が起きているようです。
再雇用後の給与「定年前の4割」でも感謝
大手メーカーに勤務する田中誠さん(仮名・60歳)。60歳で定年となったあと、再雇用制度により契約社員になりました。
――現在の月収は35万円、年収で500万円ほどです
再雇用後、管理職から契約社員になったことで、給与は大幅に減少。定年前に受け取っていた給与の40%程度になってしまったといいます。
――給与が大幅に下がることはわかっていたことですが、目の当たりにすると結構な衝撃ですね(笑)30歳くらいのときの給与ですから
給与は大幅減ながら、定年後に働くことを選択したのは、年金を受け取れるようになるまでの5年間、ほぼ無収入になることに不安を感じたから。それでも安定した収入を得ることができ、さらに慣れ親しんだ環境で仕事を続けられることに感謝しているといいます。
――この年になってから新しい環境で働くのは結構キツイですよね。私の場合、再雇用後に異動はなく、同じ部署に配属されました。立場は変わりましたが、環境が変わることに対するストレスがないのはラッキーでした
再雇用後は、定年までいた部署で管理的業務にあたるようになった田中さん。仕事内容は変わったものの、顔なじみの多い環境で働けることは安心材料である一方で、不安材料でもあったといいます。かつての上司としての威厳は薄れ、現役社員たちとの関係は微妙な空気だったと振り返ります。
――やはり立場的に微妙ですよね。それまで上司だった人間が、契約社員として同じフロアにいるわけですから
そのような空気を恐れていては現役社員もやりにくいだろうと考え、これまで以上に積極的にコミュニケーションを図ろうと努めていたという田中さん。その甲斐もあってか、微妙な空気は次第に薄れていったといいます。何よりも40年近い経験を有する田中さんの知見を駆使して、さりげなくフォローすることもしばしば。若手社員から「ありがとうございます。さすが、田中さん」と感謝されることもしばしば。
――そんな言葉を聞いて、素直に喜んでいました
若手社員たちの言葉の裏に田中さんに対する複雑な感情が隠されていることに気づいていなかったと振り返ります。
若手社員ほど「定年後のシニア社員」に対する不満は大きい
――田中さん、たまに自分の意見を強く主張することがあるんです。『私はこうやって上手くいったんだから』というように
若手社員たちは、田中さんのもつ「元上司としての態度」に対して戸惑いを感じ、「またか」と内心でため息をつくことが多かったといいます。「ありがとうございます」と感謝を伝えつつも、心のなかでは反発を覚えていたのです。
そしてあるとき、若手社員のひとりが声を荒らげる場面が。
――少しは私たちのやり方を認めてください!
その若手社員は、自分たちの意見を軽視されているとずっと感じていたといいます。そんな本音に気づかず、自分の経験を基にしたアドバイスを提供することが、若手社員にとっての助けになると信じていた田中さん。それまで穏やかだった若手社員の怒鳴り声に思わず唖然。「うまくやれていると勘違いしていました……」とひどく落ち込んだといいます。
積極的にコミュニケーションを図ろうと努めていましたが、逆に若手社員たちを遠ざけてしまっていることに気づけずにいた田中さん。それからは自分の経験を主張するのではなく、若手社員たちの意見を尊重し、彼らの考えを聞くよう徹底しているといいます。そのような努力もあってか、以前よりも職場の雰囲気はよくなったといいます。
パーソル総合研究所『シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査』によると、自社のシニア社員に対し、1220代の3割が「シニア従業員は給料をもらい過ぎている」「シニア社員は成果以上に評価されている」と不公平感を抱き、その不公平感は若い世代ほど強い傾向がありました。
厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、大卒20代サラリーマンの年収は、500万円以下。再雇用となったシニア社員よりも給与が低いということも珍しくないでしょう。「契約社員なのに自分たちよりも給与が高いなんて……」という不満も、世代間のズレを大きくしている要因のようです。
[参考資料]
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