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総遺産額は4,000万円だったが…「障害のある娘を持つ出戻り次女に3,700万円」亡父の遺書は理解も、「相続額300万円」で感じた長女の鬱憤【弁護士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月25日 14時15分

総遺産額は4,000万円だったが…「障害のある娘を持つ出戻り次女に3,700万円」亡父の遺書は理解も、「相続額300万円」で感じた長女の鬱憤【弁護士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

親が死去したあと、残された遺書が原因となり、親族間でトラブルに発展してしまうケースは多くあります。残された親族介助が必要である、持病を持っている等の事情を加味したとしても、実際に取り分が減ってしまった側としては、そう簡単に状況を飲み込めないでしょう。そこで今回は、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、障害のある娘を持つ妹への遺留分侵害額請求について、佐々木一夫弁護士が解説します。

姉妹関係は良好。できるだけ争いは避けたいが…

先日父を亡くした相談者は、残された公正証書遺言を確認したところ、以下の内容となっていました。

長女(相談者):預貯金300万円

次女:上記以外のすべての預貯金、実家、そのほかの財産

妹は数年前に離婚し、子連れで実家に戻り、父と同居していました。次女の取り分が多い理由としては、次女の娘が障害を抱えているからです。そのため相談者は「次女の取り分が多いのは仕方ない」と思っていますが、納得できない気持ちもあります。

なお母はすでに亡くなっており、相続人は長女と次女のみです。実家の名義人は先日、次女に変更されました。

相談者は遺留分侵害額請求も視野に入れてはいますが、できるだけ姉妹間の裁判は避けたいとも考えています。そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の2点について相談しました。

(1)このような場合、相談者は次女に遺留分侵害額請求をできるか。請求できる金額はいくらか。

(2)できるだけ姉妹間の争いは避けたい場合、遺留分侵害額請求はどのような手順で行うべきか。

「遺留分侵害額請求権」とは?

遺留分は遺族の生活保障や相続人間の公平を確保するための制度です。被相続人(今回では父)の財産の中で、被相続人の自由な処分が制限されており、法律上その取得が一定の相続人に留保される割合のことを遺留分といいます。

遺留分は、被相続人である父の遺言があったとしても、その遺言によって相続人の遺留分が侵害されているならば、遺留分を侵害された相続人は、他方の相続人に対して、遺留分の侵害額につき遺留分侵害額請求権を行使することができます。

なお、遺留分侵害額請求権は、あくまでも侵害された遺留分を金銭として請求する権利で、不動産の一部を引き渡せなどと請求することはできません。

いくら請求できるのか?

今回のケースですと、長女と次女の法定相続分は1/2ずつ。そして遺留分は法定相続分のさらに1/2となります。したがって、長女が有する遺留分は1/4となります。すなわち、長女は父の遺産のうち、1/4は遺留分として受け取る権利があるということです。

遺留分侵害額請求権が行使できるかどうかは、まず父の遺産の総額を確定する必要がありますが、長女は300万円の預貯金を相続していますので、遺産の総額が1,200万円よりも多ければ、長女は次女に対して遺留分侵害額請求権を有することになります。

仮に、父の遺産の総額が4,000万円であったとすると、長女の遺留分は1,000万円となり、ここから遺言で取得した300万円を控除すると、長女は次女に対し、700万円の遺留分侵害額請求権を有することになります。

また、仮に父の生前に、次女が父から生活支援として多額の贈与を受け取っていたような場合には、その贈与を特別受益として遺産の総額に加算することもできます。たとえば特別受益にあたる贈与が1,000万円あったとすると、父の遺産4,000万円に1,000万円を加算して遺産総額は5,000万円。長女の遺留分額は1,250万円となり、遺言により受け取った300万円を控除すると、長女は次女に対し、950万円を遺留分として請求することが可能です。

遺留分の時効に注意!まずは書面で意思表示を

遺留分には1年、10年、5年の3つの時効があります。これらの時効を徒過してしまうと、遺留分を請求できなくなってしまいますので、注意が必要です。

1年の時効

遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が、相続の開始を知ったときから1年で時効により消滅します(民法1048条前段)。時効にかかってしまうと遺留分侵害額請求権を行使できなくなるおそれがあります。

この請求権を時効にかからせないために、次女に対し、内容証明郵便にて「遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求する」との意思表示をしておく必要があります。この段階では具体的な請求金額が確定している必要はありません。“権利を行使することの意思”を明確にしておくことだけで足ります。

10年の時効

また、相続の開始があったことや自分の遺留分が侵害されていることを知らなかったとしても、相続が開始してから10年がたつと遺留分侵害額請求権は消滅してしまいます(民法1048条後段)。

5年の時効

遺留分侵害額請求をする意思を明確にしたあとであっても、そのまま具体的な請求をしないまま5年が経過すると、一般の債権の消滅時効により、請求ができなくなってしまいます(民法166条1項1号)。そのため、遺留分侵害額請求をしたあとは、速やかに遺産の総額を確定し、具体的な遺留分侵害額を算定したら、具体的な遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求したほうがよいでしょう。

遺留分侵害額請求を調停や裁判で請求するとなると、解決まで数ヵ月~1年単位の時間がかかってしまいます。姉妹関係が良好なのであれば、いきなり調停や裁判を申し立てるのではなく、まずは当事者間の話し合いでの解決を模索すべきでしょう。話し合いで次女から長女に支払われる具体的な金額が確定したら、その合意の内容について合意書を作成しておくべきです。

どのような合意書であれば後々にもめることなく解決できるのかなど、合意書の作成にあたっては専門家である弁護士に相談するとより安心です。

佐々木 一夫

弁護士法人アクロピース代表弁護士 遺産相続税理士法人アクロピース代表税理士 東京弁護士会・東京税理士会所属

明治大学法学部卒業、明治大学法科大学院修了、弁護士・税理士。相続と不動産を専門とし、10年以上法務と税務の両面から顧客の問題の解決に尽力している。モットーは「誰がなんと言おうとあなたの味方」である。

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