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お父さん、これまでの恩返しに…年金月18万円の79歳父、裕福な53歳息子が親孝行で入居させてくれた「高級老人ホーム」の豪華なラウンジで一人ポツン。家族が半年後の面会でみた衝撃光景【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月1日 11時45分

お父さん、これまでの恩返しに…年金月18万円の79歳父、裕福な53歳息子が親孝行で入居させてくれた「高級老人ホーム」の豪華なラウンジで一人ポツン。家族が半年後の面会でみた衝撃光景【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

介護負担を抱える家族。介護する側/される側ともに、QOLを高めるためにも施設での生活を選択するケースは増えています。しかし「老人ホーム」に入ったら安心というわけにはいきません。想像もしなかった事態に直面することも珍しくはないようです。本記事では、山田さん(仮名)の相談事例とともに、親の終の棲家問題について、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナー・波多勇気氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

豪華な施設で孤立

山田一郎さん(仮名)は、79歳の元地方公務員。退職後は妻と穏やかな生活を送っていましたが、数年前に妻を亡くし、独り暮らしが続いていました。そこで、「お父さんが安全で快適に暮らせる場所を」と考えた息子夫婦が、高級老人ホームへの入居を提案しました。

見学時、施設の素晴らしい環境に感動しました。広い庭園、レストランのような食堂、プール、さらには24時間対応の医療スタッフ。月額30万円の費用は決して安くありませんでしたが、息子夫婦は「これなら安心だ」と確信していました。山田さんの年金は月額18万円、資産は1,000万円超。息子は輸入雑貨店を経営しており、仕入れルートが安定していて、売り上げは一定が保たれています。自身の成功はこれまで支えてくれた両親のおかげと感じているため、父想いの息子は自身が費用を負担すると宣言しました。

山田さんは当初、「俺にはこんな豪華な施設は不釣り合いだよ」と謙遜していましたが、息子夫婦の「お父さんに快適な老後を過ごしてほしい」「これまでがんばってきたんだから、人生のご褒美と思って楽しんでほしい」という後押しにより、この選択を受け入れました。「ここなら介護で家族に迷惑をかけることはないな」と考えたことも決め手のひとつでした。

しかし、半年後。家族が施設を訪れた際、広々としたラウンジで一人ポツンと座る山田さんの姿を目にします。豪華な空間に囲まれているはずの父親がどこか孤独そうに見えたその瞬間、息子は思わず声をかけました。

「お父さん、大丈夫? なにか困ったことでもある?」

山田さんは、一瞬微笑んだものの、どこか迷うような表情でこういいました。

「まあ、大丈夫だけど……。あまり話の合う人がいないんだ」

高級老人ホームに潜む「見えない壁」

山田さんがいう「話が合わない」というのは、入居者の生活感覚や金銭感覚の違いからくるものでした。施設に入居している人たちの多くは資産家や企業経営者で、話題にのぼるのは海外旅行や高級ワイン、さらには投資やアートコレクションの話が中心。山田さんはこう語ります。

「隣に座った人が、南フランスのワイナリーを訪れた話をしていてね。僕にはそういう話題は遠い世界のことなんだ」

また、施設内で開催されるイベントにも、参加をためらうことが多かったそうです。たとえば、月に1度の音楽セラピーコンサートの参加費は3万円、美術館ツアーは5万円以上。山田さんは「お金をかけてまで楽しむ必要はない」と感じ、参加を控えることがほとんどでした。

「息子たちが費用を出してくれている以上、贅沢をするわけにはいかない」と山田さんは話します。その一方で、参加を見送ることで他の入居者と交流する機会を失い、孤立感が深まっていったのです。

こうした状況は、山田さんだけの問題ではありません。2023年に内閣府が実施した『孤独・孤立の実態把握に関する全国調査』によると、高齢者の中には孤独を感じる人が一定数存在します。このような状況は高級老人ホームでも例外ではなく、入居者間の価値観の違いが孤独感を助長する一因であるとも考えられます

孤立と財務負担を軽減するために家族にできること

山田さんのような孤立を防ぐために、家族ができる具体策を考えてみます。

1.家族が定期的に訪問し、外部との交流を増やす

家族が定期的に訪問し、施設の外に連れ出すことで、山田さんの孤立感を軽減できます。地元の友人を訪ねたり、一緒に手ごろな趣味活動を楽しむことで、生活に新たな楽しみを加えることができます。

2.入居者層に合った施設を再検討する

施設選びの段階で入居者層を詳しく確認することも大切です。豪華さだけでなく、価値観や生活感覚が似た人たちが多い施設を選ぶことで、孤立を防ぎやすくなります。

3.財務負担を減らす工夫をする

家族が施設費用を補助している場合、財務計画を見直すことで負担を軽減できるかもしれません。たとえば、リバースモーゲージを利用して入居費用を補填する、生命保険を活用する、あるいは自治体の支援制度を活用するなど、選択肢を広げて検討しましょう。

自身に合った終の棲家を選ぶには

いずれにしても、プロのファイナンシャルプランナーに相談してライフプランを作成したり、今後のイベントについて整理したりすることが重要といえます。

息子の裕一さんはこう振り返ります「父の生活を豊かにするためには、ただお金を出すだけでは足りないんだと感じました。もっと父の気持ちに寄り添い、どうすれば楽しめるのかを一緒に考えるようにしています」。

高級老人ホームは、快適で安心な生活を提供する一方で、入居者間の価値観の違いや財務負担といった課題が見えにくい形で存在します。家族が入居後も積極的に関与し、精神的・経済的なサポートを続けることで、本人がより充実した老後生活を送れるようになります。山田さんのケースは、老後の選択肢を考えるうえで、多くの示唆を与えてくれる事例です。

〈参考〉 内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」

https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/zenkokuchousa/r5.html

波多 勇気

波多FP事務所

代表ファイナンシャルプランナー

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