転職市場が活況の今こそ知っておきたい!年収が上がる3つのパターンと「無謀な年収アップ希望」に潜む落とし穴【エグゼクティブ転職のプロが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月17日 9時15分
(写真はイメージです/PIXTA)
最近活況の転職市場において、転職時に「年収アップ」するケースが増えています。しかし、むやみに年収アップ希望を出すと、かえってあなたの市場価値を落とすことになるかもしれません。年収アップを実現する背景と共に、株式会社経営者JPの代表取締役・CEOの井上和幸氏が詳しく解説します。
転職時に「年収アップ」を実現できるのはどんなとき?
活況な転職市場において、最近の傾向として、転職時に年収アップするケースが増えてきていることが挙げられます。
2024.10のマイナビ調べでは、転職前後の年収変化で「年収アップ」が40.2%で最も高く、次いで「年収増減なし」(34.9%)、「年収ダウン」(25.1%)となっています。
一方、日経新聞では「転職によって年収が1割以上増える人の割合が約4割と過去最高水準にある。」と報じられたと同時に(2024年10月29日)、「求められる成果厳しく、降格や退職勧奨も」ということも言及されています。
実際、マイナビ調べのデータでは30代、40代、50代と世代が上がるほど、年収がアップした人の割合と同時に年収がダウンした人の割合も高くなる傾向が見て取れます。
では、そもそも年収アップはどのような力学で実現されるのでしょうか? 今、知っておく意味があるでしょう。
①転職先企業が、あなたを何としても採用したいケース
まず1つ目のパターンは、「あなたの現職までの経験・専門性・実績を、転職先企業が何としても欲しい」ケースです。
・企業の成長拡大において、あるいはその中で上場準備に入りガバナンス体制の強化が必要であり、それを牽引できるCFOや関連各部のマネジメントが急務である。
・SaaSビジネスのベンチャーなどが、ここまではデジタルマーケティングで顧客拡大をしてこられたが、ここからは大手法人へのダイレクトセールスが必要だ。それを牽引してくれるエンタープライズセールス部隊のトップが欲しい。
・DXを推進するために、レガシービジネスの自社には存在しないデジタライゼーションを経験してきたマネジャーを招聘したい。
これらはいずれも、そのマネジメントをする人がいない限り、どうしようもない状況であり、自社のここからの成長あるいは生き残るための生命線となっています。
投資せざるを得ない幹部採用、投資するに値する幹部採用なわけです。それを担ってくださるあなたが参画してくれるのであれば、年間数百万の給与上乗せは安いもの。
ここでのポイントは、「あなたの持つ専門性・スキル・経験・実績が明確化されている」「それが次の会社でも再現可能であると思える」ことと、「その専門性・スキル・経験・実績を求めている案件である」ことを掛け算することに尽きます。
前者はあなたがしっかり棚卸し準備すべきことですし、後者はあなた自身でしっかり案件のデューデリ(中身・価値やリスクなどの確認、調査)を行い、また転職エージェントにも見繕ってもらうべきことです。
このパターンでの転職に成功すれば、あなたも自信をもって新天地で成果を出せます。念のため気をつけるべきは、お互いの求めるもの・できることへの期待値の誤認識があった場合、入社後に本人もきついですし、企業側からすると「なんだ、できると言うから、高い給与で入社してもらったのに」と、逆に非常にネガティブな評価・見られ方になることです。
くれぐれも、<本当に、企業が求めることに対して自分が必ず成果を出せる>か否か、確認し、話を進めましょう。
②現職の給与が、本来の市場相場より低いケース
2つ目のパターンは、「あなたの現職の給与が、本来の市場相場より低い」ケースです。
給与水準はマクロに見れば、産業ごとの収益性に連動しているのは事実です。どの業界に所属するかでベースの給与水準、生涯年収水準が規定されます。
もしあなたの会社が属している業界が、全産業平均よりも給与水準の低いところであれば、今回の転職活動のテーマに異業界転職を置くことも悪くないでしょう。現在、同業界内での転職と異業界への転職はほぼ同比率です。チャンスは充分あります。
このケースで多いのは、前回の転職において前職給与から給与を落として現社に転職した場合です。職務内容や企業カルチャーなどに魅力を感じたため、給与はダウンするがやりがいを選択し転職した。このこと自体は悪いことではありません。実際、それでやりがいを得て、充実した仕事をされている方も多いですし、結果としてパフォーマンスをあげ会社も成長し、前職を上回る給与まで早い段階でアップされている方も多くいらっしゃいます。
ただ、残念ながら、それを期待しチャレンジしたものの、あいにく職務のフィットがなかった、組織との折り合いがあまり良くなかった。再度、仕切り直しでの転職に踏み切っている。この場合は、ぜひ、前職給与まで戻すことを前提にした転職活動をして欲しいと思います。それだけのアウトプットを出せるかたのはずですから。
応募先企業もエージェントも、あなたの給与が低すぎる場合はそれをしっかり見ています。妥当な給与水準まで戻すことに衒いはありませんので、ぜひ堂々と臨んでください。
③応募先企業間でのオファー合戦となっている
3つ目のパターンとして、「あなたの採用が、応募先企業の間で内定オファー合戦となっている」ケースをあげておきましょう。
あなたの魅力で、2社、3社間での内定オファー合戦となっている際、報酬条件が切り札になりがちです。
ありがたい話ですが、給与の額(が最も高いという理由)で選択して、本来的な職務フィット、職場(カルチャー)フィットに欠けることのないよう、最大限気をつけましょう。給与額を第一に選択しての転職者が、業務内容の部分でミスマッチを起こし早期転職に至るケースも現実には、非常に多いですので。
また、オファー・バブルは入社した企業に対しても、着任後に禍根を残したり、あなたへの過剰な期待値となってしまい、結果うまくいかなくなることも少なくないことは認識しておきたいところです。
このパターンは、あって良いですが、行き過ぎないこと。また提示年収だけを並べて選択することなく、合わせて職務内容や企業への共鳴もしっかり加味して最終選択の判断をすることです。
***
以上、転職時における年収アップの主なパターンをご紹介しました。これらのような背景があって年収アップは実現されます。
こうしたトリガーなしに「キャリアアップ、年収アップ」を希望される方もいらっしゃいますが、要注意です。
あなたの希望、ご家族の状況、生活水準の考え方はもちろんあるでしょうが、企業側からすれば、あなたが我が社の中でどのくらいの貢献をしてくれ、成果を出してくれるかに対して(のみ)報酬を支払うのです。
自分軸のみでの年収アップ希望は、逆にあなたの市場価値を落とす可能性があります。あくまでもあなたの適正なバリュエーション、ニーズとの見合いで転職先の年収を獲得すべし、ということは覚えておいてください。
井上 和幸
株式会社 経営者JP
代表取締役社長・CEO
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