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空き家となった実家の「借地権」を売りたい…「地主の許可なし」に譲渡する裏ワザ【弁護士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月30日 14時45分

空き家となった実家の「借地権」を売りたい…「地主の許可なし」に譲渡する裏ワザ【弁護士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

借地権を有効活用したいのに、地主の承諾が得られず困っていませんか? 借地権の譲渡や転貸、建物の増改築など、地主の承諾が得られない場合、裁判所が地主に代わって許可を与える「借地非訟手続き」という制度があります。今回は、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービスによせられた質問をもとに、借地非訟手続きの種類やメリット、費用相場などを西明優貴弁護士が解説していきます。

「借地非訟手続き」とは?

借地非訟手続きとは、建物用の借地権に関する紛争を解決するための非訟事件手続きのことです。法的手続きには「訴訟」と「非訟」というものがあり、こちらは非訟の分類になります。

借地非訟手続きの類型については借地借家法という法律に記されています。借地非訟事件の類型の代表格が以下の5つです。

・借地権譲渡または転貸の許可申立事件

・借地条件変更申立事件

・増改築許可申立事件、(更新後の)建物再築許可申立事件

・競売または公売に伴う土地貸借権譲受許可申立事件

・借地権設定者の建物及び土地貸借権譲受申立事件

借地権とは、すなわち土地賃借権・土地を借りる権利です。この借地権を地主(土地の所有者借地権を設定されている人)から許可をもらって譲渡または転貸する場合の許可申立事件というものが比較的多いです。

借地条件変更申立事件は、土地の貸管に関する契約条件を変更するための申立てをする事件です。増築許可申立事件は増加築をするにあたって地主の許可を得るために裁判所に申立てをする事件のことを指します。

借地非訟手続きのメリット(総論)

まず、この手続きの総合的なメリットについて解説します。

1つ目が公正性と一方的解決です。裁判所に借地権の紛争判断を求めると公正な状況で一方の意向を強制的に満たすことができます。法的手続前の交渉がまとまらないと時間が無駄に過ぎ、ビジネスチャンスを逃すことになってしまうかもしれません。その点、当事者間では解決できなかった問題に裁判官という第三者の目線が入ることで、問題解決しやすくなります。

2つ目が和解による早期解決が見込めることです。裁判のなかには裁判所からなにかしらの究極的判断をもらう前に和解で終わるものがあります。そうすることで当該紛争がよりスピーディーに解決しやすくなります。

借地非訟手続きでは和解による解決が多く、実際双方の譲歩による円満な解決が望ましいです。スピードは絶対的価値ですので、コスト効率がよくなりますが、解決スピードを優先するのか、経済的利益を優先するのか、天秤にかけたうえで自身の意向に沿い、総合的に考慮しましょう。

借地非訟手続きのメリット(各論)

賃借権譲渡または転貸の許可申立事件

実家などの居住用建物が、空き家で利用されておらず、借地権を譲渡して金銭に換えたい場合について考えていきます。

多くの方は、土地や建物を所有してそれを売却すればお金になることはご存じかもしれません。一方で、「土地を借りられる権利」という所有権ではない権利もお金に変えられることをご存じでしょうか。空き家など、「建物は利用しないので、第三者に利用してもらうために譲渡する」という許可を申し立てる場合に本件の手続きを使います。

第三者は経済的合理性メリットがある場合に、その借地権を譲り受けます。ここで借地権を譲り受ける第三者のほとんどは、不動産会社か不動産を扱う投資家です。

借地人が、自らが持つ借地権を第三者に譲渡したいと求めた譲渡承諾を地主が不許可した場合、難航する交渉を解決するのが借地非訟の賃借権譲渡の許可申立事件です。

借地条件の変更や増改築、借地契約更新後の建物再築などほかの事件

借地権譲渡の変更や増改築は少し応用的です。借地権等を譲り受ける第三者はメリットがあって、これを譲り受けます。そのメリットとは、建物をそのまま貸し出すこと、リフォーム、民泊施設への転用、再築などです。経済合理性や投下資本回収に基づくアイディアが考えられるでしょう。

借地権を譲り受ける第三者は、一軒家をそのまま譲り受けてそれをそのまま転貸するということもあれば、民泊に転用してインバウンドビジネスに対応する、あるいはリフォームする・壊すなど有効活用したいケースが多いです。その場合に既存の契約条件では具体的な行動計画に落とし込めないということになり得ます。

これらを実現するには、先行して借地権の譲渡許可を得てからもともとの契約条件も変える、という借地非訟の類型を使うことがあります。メリットは既存の契約では対応できない点も含めて地主に許可を得ることができることです。譲り受け人には地主との人的関係はありませんから、経済合理性や投下資本の回収といったビジネスマインドを持って譲り受けてくることが多いと考えられます。

手続きに要する費用・相場

借地非訟にかかる費用には弁護士費用や申し立て手数料、地主に対する承諾料などがあります。

弁護士費用については借地非訟の弁護士費用をインターネット上で公開している弁護士は少なく、着手金と成功報酬金の別払いなど弁護士によって費用が異なるので直接確認したほうがよいでしょう。申立て手数料は、裁判所に法的手続きを利用する際に支払うお金のことです。

最も大きい金銭が発生する可能性があるのが地主に対する承諾料です。もともと予定していた契約条件から異なった、見知らぬ第三者との契約になる対価として裁判所は地主に対する承諾料というものを支払うよう命じます。これによって地主に対する結果を公平にするのです。

これらの費用についてはケースバイケースだとは思いますが、実務では以下のように紹介されています。

・借地条件変更の承諾料……更地価格の10%

・建て替えの承諾料……更地価格の3~5%

・建物の一部増改築の承諾料……おおむね更地価格の1% ※増改築の規模による

・借地権の譲渡承諾料……借地権価格の10%

借地権がたとえば5,000万円だったとしてその借地権価格の10%ですから承諾料は500万となる、というイメージです。

借地非訟手続きのメリットのまとめ

総論:公正性、一方的解決、早期解決事件

各論:選択する手続きによるが、不動産の有効利用計画にも活用可能

ご自身がビジネスをされてない場合、借地権譲渡許可をしてそれでおしまいという立場の方。あるいは、借地権を譲り受ける第三者として不動産有効活用計画のステップの一段目という立場の方。それぞれの立場によって対応は異なります。

借地非訟手続きは、専門性が高く、土地所有者との交渉も不可欠です。当事者間同士だけでの解決は難しいでしょう。実務家に相談することも一案です。

西明 優貴 弁護士

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