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もっと早く帰っていれば…1年ぶりの帰省で発覚した実家の「変わり果てた様子」に息子呆然。年金暮らしの81歳母が涙ながらに語った“困窮”の理由【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月18日 7時15分

もっと早く帰っていれば…1年ぶりの帰省で発覚した実家の「変わり果てた様子」に息子呆然。年金暮らしの81歳母が涙ながらに語った“困窮”の理由【CFPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

女性のほうが長生きする傾向にあるため、夫の死後に妻が1人残されるケースは少なくありません。その際に大きく変わるのが年金受給額。想像以上の減少に驚いたという声も多く聞かれます。そこで、今回は老後の生活に大きな変化が起こった田中さん親子の事例と共に、いざというときに役立つ「年金生活者支援給付金」についてCFPの伊藤寛子氏が解説します。

一人暮らしになった母の異変

地方出身の田中和彦さん(仮名・56歳)は、新卒で東京のメーカーに営業職として就職して以来ずっと東京勤務です。自宅も東京に購入し、家族と共に暮らしています。

実家では父と母の2人暮らしでしたが、昨年父親が病気で他界しました。81歳と高齢の母が一人になることを心配した田中さんは、東京で一緒に暮らすことを提案しましたが、地元と住み続けた家から離れたくない、と母から断固拒否されました。

一人暮らしになる母が心配ではありましたが、「私は大丈夫だから」と意思が固く、その言葉を信じて別々に暮らすことにしました。

もともと実家と頻繁にやり取りするタイプではなかった田中さんは、仕事の忙しさもあり、こまめに母の様子を伺う連絡をすることはありませんでした。実家は遠方で交通アクセスも不便な地域にあるため、なかなか帰省するタイミングも取れずにいました。

そして、ようやく父の1周忌法要で帰ると、実家が様変わりした状態になっていたのです。

父のものが手つかずで残っているだけでなく、部屋中に物やゴミが溢れかえっていて、まったく片づけができていない様子でした。

尋常じゃない状態に呆然としましたが、元気がなく、もともとはこんな状態にするとは思えない母の様子が気になった田中さんが母に話を聞くと、涙ながらに答えました。

「お父さんが亡くなっても、家や生活が変わるわけじゃないし、一人でも大丈夫だと思っていたんだけど。年金が振り込まれたら、こんなに年金が減るとは思ってなくて、びっくりしちゃって。遺族年金がもらえるから何とかなるのかなって思ってたけど、これしかもらえないなんて思ってもみなくて。今までは2人でもらえる年金でなんとか暮らしていたけど、これだけじゃとても足りないし、この先どうなるのか不安で仕方なくなったら、何も手につかなくなってしまって……」

遺族年金の仕組みとは?年金額がガクッと減る理由

遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者だった人が亡くなったときに、その人によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。

遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、いずれかまたは両方の年金が支給されます。「遺族基礎年金」を受け取ることができるのは、「子のある配偶者または子」です。子とは、18歳になった年度の3月31日までにある人、20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人をいいます。

上記の条件に合致しないため、田中さんの母は、遺族基礎年金を受け取ることはできません。

一方、「遺族厚生年金」は、死亡した人に生計を維持されていた「子のある配偶者・子・子のない配偶者・父母・孫・祖父母」の順に、最も優先順位の高い人が受け取ることができます。老齢厚生年金から国民年金に相当する額を差し引いた、報酬比例部分の4分の3の額を「遺族厚生年金」として受け取ります。死亡した人が受け取っていた老齢厚生年金の全額を受け取れるわけではありません。

さらに、65歳以上で「自身の老齢厚生年金」と「遺族厚生年金」の両方を受け取る権利があっても、どちらも全額受け取れるわけではありません。自身の老齢厚生年金は全額支給されますが、遺族厚生年金については、老齢厚生年金に相当する額は支給停止となるため、差額分のみが支給される仕組みになっています。

田中さんの母の場合、生前の父と2人で受け取っていた年金額は、合計でひと月当たり約20万円でした。父が亡くなったことにより、専業主婦だった母が受け取るひと月の年金額は、自身の老齢基礎年金が約5万円、遺族厚生年金が約6万円、年齢に応じた加算がつき合計約12万円になりました。しかも社会保険料などが引かれ、実際に振り込まれる金額はさらに減ります。

年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」とは?

父が健在のときには思いもしなかった年金の少なさに、この先暮らしていけるのか、不安とストレスを抱えきれなくなったものの、「息子には迷惑をかけちゃいけないと思い言えなかった」と涙で話す母に、「まずは家のなかを片づけて、どうしていったらいいか一緒に考えよう」と田中さんは声をかけ、散らかった部屋を片づけ始めました。

すると、片づけの最中に、積み重なった書類のなかから「年金生活者支援給付金請求書」と書かれたはがきを発見したのです。

年金生活者支援給付金は、公的年金等の収入金額が一定基準額以下の人に対して、生活の支援を目的として、年金に上乗せして支給するものです。以下の支給要件をすべて満たしている人が対象となります。

(1)65歳以上の老齢基礎年金の受給者であること。

(2)同一世帯の全員が住民税非課税であること。

(3)前年の公的年金等の収入金額※とその他の所得との合計額が、昭和31年4月2日以後に生まれの人は889,300円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの人は887,700円以下であること。

※障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。

給付額は、月額5,310円を基準に、保険料納付済期間等に応じて算出されます。たとえば、国民年金保険料を40年(480月)納付した人の場合は月額5,310円で、20年(240月)納付した人の場合は半分の月額2,655円になります。

「年金生活者支援給付金」支給対象者かどうかを判断する方法

年金生活者支援給付金の支給対象となる人には、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書」がはがきで送られてきます。届いたはがきを元に申請手続きを行わないと、給付金を受け取ることはできません。

田中さんの母は、父が存命で年金をもらっていたころは、この制度には該当していませんでした。父が亡くなり、母自身の年金額(遺族年金は含まれません)が基準額以下であり、住民税非課税世帯となったことで、新たに制度に該当しました。

そのため、母の元には「年金生活者支援給付金請求書」のはがきが届いていましたが、よくわからなかった母は、そのまま放置してしまったのです。

給付金額は年金の上乗せとして十分な額ではありませんが、給付要件に該当している間はずっと受け取り続けることができます。

利用できる制度をきちんと活用するためには、給付金などの存在を知っておくことが大切です。しかし、年金制度は複雑で、年金の種類や制度も複数あり、なかなか把握するのが難しいでしょう。書類を見てもよくわからない場合は、まずこどもに聞いてみるのはもちろん、年金事務所などの担当部署に書類を持参して教えてもらうこともできます。

親子のコミュニケーションが家族とお金の問題の解決の鍵

「こんな給付金があったなんて全然知らなかった」

田中さんと母はそう話しながら、まずはできることからと年金生活者支援給付金の給付申請手続きを行い、給付を受けられるようになりました。

家も少し片づき、落ち着いてきた母と改めて今後の暮らしについて相談をしました。ですが、やはり今から東京で暮らすのは負担も大きく、実家から離れたくない、という意思は変わりません。

今のところ健康状態に大きな問題はないことから、田中さんが生活費の援助として仕送りをすることで、母は実家で一人暮らしを続けることになりました。

田中さんは、母を長い間放っておいたことを反省し、母の様子や困っていることがないかなど、以前よりもこまめに連絡を取って確認するようにしました。

親子でコミュニケーションを取っておくことで、変化に気づいて、早めの対処をすることができるでしょう。家族とお金の問題は、お互いの状況を理解して、早めに話し合うことが解決の鍵となります。

伊藤 寛子 ファイナンシャル・プランナー

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