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母さん、あんまりじゃないか…78歳義母のワンオペ介護で妻は適応障害に。母の死後、56歳男性が膝から崩れ落ちた遺言書の〈衝撃の中身〉とは?【行政書士の助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月24日 10時15分

母さん、あんまりじゃないか…78歳義母のワンオペ介護で妻は適応障害に。母の死後、56歳男性が膝から崩れ落ちた遺言書の〈衝撃の中身〉とは?【行政書士の助言】

※写真はイメージです/PIXTA

「遠くの親類より近くの他人」とは言われていますが、家族間での遺産相続や介護の問題は、必ずしもこのことわざ通りにはいきません。むしろ「近くの他人より遠くの親類」が現実になるケースも。本記事では、遺産相続が『争続』と化した場合の解決策について、行政書士の露木幸彦氏が事例を通して解説します。

20年間で4割増!遺産相続で揉めるケース

遺産相続で揉めるケースが急増しています。例えば、家庭裁判所に遺産分割を申し立てた件数ですが、2023年には1万3,872件に達しています(法務省司法統計年報)。調停とは当事者同士で示談が成立しない場合、家庭裁判所内で調停委員を交えて話し合う制度です。つまり、裁判所外で解決できないほど揉めに揉めているケースです。2003年は9,196件だったので、20年間で4割近くも増えているのです。

「母の介護を家内に任せきりで…無理がたたって適応障害と診断されてしまったんです。それなのに僕には1円も渡さないなんて!」と絶望の淵に立たされていたのは今回の相談者・真野正人さん(56歳)。筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の悩み相談にのっていますが、「近くの他人より遠くの親戚」が今まさに起こったのです。

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また家族の構成や年齢、介護のきっかけや逝去の原因、財産の詳細などなどは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。

<登場人物(年齢は相談時点。名前は仮)>

夫:真野正人(56歳。会社員。年収800万円)☆今回の相談者 妻:真野由紀(55歳。専業主婦) 夫の母:真野節子(故78歳) 夫の妹:真野正美(48歳。職業不明)

<母親の資産(評価額は調停申立時>

国内の預貯金517万円 日本国債108万円 国内の投資信託581万円 海外の投資信託600万円 外貨預金225万円 貯蓄保険369万円

計2,400万円

ワンオペで姑を介護していた妻が適応障害に…

妻のワンオペ介護が始まったのは今から4年前。このとき、正人さんの父親はすでに他界。父親の遺産はすべて母親が相続し、一人で暮らしていました。もともと母親は緑内障や加齢貞斑変性の影響で歩行に難があったのですが、転倒して腰を圧迫骨折。一人で歩くことができず、介助が必要な状態でした。

正人さんには一人の妹(母親の娘)がいます。それをきっかけに妹と話し合い、これ以上、一人暮らしをさせるのは心配だということで正人さんが母親を引き取ることに。しかし、正人さんは当時、勤め先の企業の統括部長として忙しく、介護を手伝う余裕はなく、妻に任せるしかありませんでした。例えば、食事や入浴、排泄等々……一切の介護を妻が背負ったのです。特に床にはいつくばって母親の尿を拭くのは精神的な負担が大きかった模様。しかし、母親から感謝の言葉の一つもありませんでしたが、それだけではありません。

母親は毎月5.4万円ほどの国民年金を受給していましたが、妻が代わりにATMへ行き、現金を引き出し、母親に渡していました。そこで「うちも余裕はないんです。生活費を入れてください!」と頼んだのですが、母親は「ないものはない、何なの!」の一点張り。そのため、デイケア等のサービスを利用できず、妻の負担はいっこうに減らなかったのです。

あとで分かったことですが……母親は年金の大半を妹に小遣いとして渡していたのです。その妹は3ヵ月に1回しか顔を出さず、また介護は一切、手伝ってはいませんでした。そんな理不尽な生活が続くなか、母親の顔が麻痺する事態が発生。担当医が「ストレスでしょう」と診断したので、母親は妻に「あんたのせいだ!」と言い放ったのです。そのため、妻は緊張の糸がぷつりと切れ、涙が止まらなくなり、「適応障害」の診断を受けるに至ったのです。

衝撃の遺言書の内容は?

それから16日後。幸か不幸か、母親は心筋梗塞で急死してしまったのです。葬儀では参列者が涙に暮れるなか、妹が正人さんに「遺言があるから」と耳打ちしてきたのです。そして四十九日の法要を待たず、遺言のコピーが郵送されてきたのですが、そこには信じられない内容が。「正美(妹の名前)にすべて任せる。全財産を譲る」と。今までの妻の献身が何も報われない内容でした。正人さんが筆者の事務所に遺言のコピーを持参し、相談に来ました。

正人さんは「母は目が見えないはずなのに、遺言書を遺すことは可能なのでしょうか?」と首をかしげますが、筆者は「公正証書遺言なら可能ですよ」と答えました。

これは公正役場を通す方法ですが、具体的には公証人が母親の話をもとに証書を作成します(民法969条1)。それを母親に読み聞かせ、納得した場合、公証人が代わりに署名することが認められています(同法969条4)。正人さんが公正役場に電話をしたところ、連絡の窓口は妹だったとのこと。

ところで妹はどのような人物なのでしょうか? 妹は高校には行っておらず、21歳で子連れ離婚。収入にいかせる資格もなく、職を転々としていました。先立つものがないので、母親の遺産だけが頼り。それを見越して妹は裏で手を引いていたのでしょう。

このように母親は恩を仇で返してきたのですが、筆者は「真野さんは母親の直系尊属なので遺留分(どんな遺言を作成しても残る相続分)が認められており、今回の場合、遺産全体の4分の1ですよ」とアドバイスしました。

妹いわく遺産の合計は2,400万円なので遺留分は600万円。10割欲しい妹と10割渡したくない兄。正人さんは「何もせずに、すべて欲しいなんてひどすぎるじゃないか!」と激しく責めたものの、妹は「だから何なの?」という感じで聞く耳を持たず。600万円をめぐる争いは1年にわたり平行線のままでした。

海外の投資信託分を受け取れることになったが…

業を煮やした正人さんは家庭裁判所へ遺産分割の調停を申し立てました。「訴訟でも認められないよ」という調停員の叱責が効いたのか、妹はついに観念し、海外の投資信託のみ正人さんが受け取ることに。筆者は前もって「名義変更をするには原則、口座番号が必要です」と助言しました。そこで正人さんは口座番号が書かれた取引報告書を郵送するように、妹に約束させたのです。

しかし、いつまでも報告書は届きません。ようやく送られてきたのは調停成立から10ヵ月後ですが、その商品名は新興国株式インデックス。調停の申立時は600万円の価値があったものの、現在は400万円なので200万円も損をしたのです。調停員から「調停が成立したら、これ以外は請求できない」と言われていたそう。結局、正人さんは母親から自分へ変更し、また値上がりするまで塩漬けにするしかなかったのです。

遺産をスムーズに分割する方法が遺言です。遺言は故人にとって最後の意思表示です。残された家族の大半はそれを尊重しようとします。しかし、遺言はいわゆるゼロサムゲーム。これは誰かを優遇すれば、同時に誰かを冷遇するという意味です。正人さんのように理不尽な形で冷遇された場合、優遇された側を恨み、相続は「争続」と化すのです。もし遺言を残そうと考えている方は、関わる人が納得する内容かどうか、十二分に検討したほうが良いでしょう。

露木 幸彦 露木行政書士事務所 行政書士・ファイナンシャルプランナー

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