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マグロ漁船なんて乗るんじゃなかった…親の借金「5,000万円」返済に挑む17歳の“ヤンチャ少年”が手にした「衝撃の給与額」【実話】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月1日 11時15分

マグロ漁船なんて乗るんじゃなかった…親の借金「5,000万円」返済に挑む17歳の“ヤンチャ少年”が手にした「衝撃の給与額」【実話】

(※写真はイメージです/PIXTA)

借金返済のためマグロ漁船に乗ることになった筆者を待ち受けていたのは、「二度と乗るものか」と思うほど危険で過酷な労働環境でした。怪我もしましたが、なんとかはじめての航海を終えます。そんななか、ヤンキーの先輩からの誘いを受け、再び海に出ることに……。菊地誠壱氏の著書『借金を返すためにマグロ漁船に乗っていました』(彩図社)より、詳しくみていきましょう。

はじめての「マグロ漁」が終わり…ようやく手にした“初任給”

台風被害で両親の営んでいた事業が失敗し、5,000万円もの借金を背負った菊地家。

そんななか、筆者は高校中退を機にマグロ漁船員になることを決意します。

初めての漁は「二度と乗るものか」と思うほど過酷な仕事でした。

しかし、ヤンキーの先輩に誘われ、再び海に出ることになるのです。

仕事を覚えるのに悪戦苦闘しているうちに、1回目の航海が終わりました。

長福丸の航海を終えて初めての給料は、合計で25万円。そのうちの8分(8割)が自分のもので、残りの2割である5万円が船主預かり金として控除されます。さらに1航海で必要なものを揃えるための船員貸付金(仕込み金)などを差し引くと、最終的な手取りは15万円となります。給料は、給料明細と書いた茶封筒に入れて渡されました。

マグロ漁船での仕事を終えると、船員は分け魚といって魚を少しもらえます。一番美味い部位を切って、タダで大量に土産として分けてくれます。このときはブロック肉くらいのメカジキをもらい、家に帰って初めての給料と一緒に両親に渡しました。

お袋は「ありがとう、ご苦労さんだね」と笑って給料袋を受け取りました。

夕食には肉や刺身など豪勢な料理をお袋が振舞ってくれて、オヤジもビールを飲みながらニコニコしていました。

オヤジはこのとき食べた分け魚のメカジキが一番うまかったと言って、それからずっと思い出話のネタにしていました。

「長福丸でもらってきたメカジキの刺身はいまだに忘れらんね。あんなうめー刺身、食ったことがねえ」

私が両親に「マグロ漁船はな~、こんなに大波が来て……」「サメを殺すのが俺の仕事でさ」なんて自慢気に語っていると、オヤジは「そうかそうか。ご苦労さん、うんうん」と酒に酔って顔赤くしながら、満面の笑みで話を聞いてくれました。家に帰って手料理でもてなしてくれて、武勇伝を聞いてくれる両親に感謝していました。

マグロ漁船の“ブラックすぎる”仕事内容と初乗船の正直な感想

給料を借金に充てるとかそういう話はまったくされませんでしたが、さすがにそれを息子に言うのはつらかったのかなと思っていました。当時の私は借金の額など知りませんでしたが、こんなに喜ぶんだから助かっているんだろうなと思いました。この後の遠洋延縄マグロ漁船になると、給料が毎月家に送金されるようになります。

今思えばたかだか1ヵ月ですが、仕事は当初思っていたよりもキツかったです。

毎日毎日、ジリリリン、ジリリリンと警報機のようなスタンバイの音で起こされ、海に向き合って揚げ縄を12時間、長いときでは20時間行っていました。なかなかキツい仕事です。3日くらいに1度回ってくる投縄の当番の日は、2時間睡眠で起こされて5時間餌を入れる仕事をします。

私は1年生で仕事もろくにできなかったので怒られることが多く、それも非常につらかったです。ブラン手繰りをしていて後ろから「何やってんだ! 遅いぞ!」と怒鳴られる日々。スナップ外しもこなさなければいけない。他にもいろいろな仕事がありますが、新人の私はどれもまともにはこなせません。

メカジキをカメの中に入れて、アンカーで下ろされるのを受け止めて寝かせるという仕事もありますが、大きなメカジキは数百キロもあり、アンカーで下ろすとはいえ受け止めるのは重労働です。大量に釣れるサメを解剖してカメに運び入れたり、重いマグロを運んだり、その他危険な仕事も山ほどあります。

帰ったら辞めよう。こんなキツい仕事、続けられるわけがない。船の上でそんなことを考えていました。陸での仕事と違って、会社を退職するようにすぐその場から立ち去るようなことはできません。マグロ漁船での仕事は甘くはないのです。

ヤクザや闇金からのゴリゴリな取り立てから無理やりマグロ漁船に乗せられるというルートもありますが、私はそういうわけではありません。でも、借金返済のためにマグロ漁船に乗せられたというのは同じです。

ノイローゼとまではいきませんが、乗って後悔したと思ったのは間違いありません。

とはいえ今思えば、初めて乗った長福丸の船員さんは、私に優しくしてくれていたと思います。初めてで右も左もわからない1年生の私を、それなりに優しく扱ってくれました。

あと、コック長のおんちゃん(※筆者の伯父)は、みんなの前では厳しいことを言いますが、2人になったときには私のことを気遣ってくれました。

おんちゃん、ありがとう。感謝してるよ。おんちゃんが持ってきてくれた仕事だから、ちゃんとした船会社で、ちゃんとした乗組員の漁船だったんだろうね。

「絶対に乗りたくなかった」マグロ漁船に再び乗船したワケ

ヤンキーの先輩の英雄さんという人がいます。

英雄さんと出会ったのは高校1年のときで、駅でダチと2人でいたときに声をかけられました。ゴリラというバイクに2人乗りでやって来て、やたら怖いのが来たなと当時は思いました。リーゼントパーマをあてていて、色黒で身体がデカくて見た目も怖いのですが、喧嘩が強くて豪快な人だったので地元では有名人でした。

英雄さんと会ったとき、その相方の人に脅されました。

「お~、おめーらこんな時間にこの辺にいると怖い目に遭うぞ!」

この人は高明さんというのですが、組長というあだ名で呼ばれて恐れられていました。パンチパーマに剃り込みを入れていて、上下スウェットで、体形は細身ですが人相の悪い感じでした。上半身裸になってサラシを巻いて単車を飛ばすという、なかなかにぶっ飛んだことをやる人でした。

英雄さんが私に質問してきました。

「お前ら、どこから来てるのよ?」

「白川です」

「本当か? 秀樹って知ってる?」

「え……いとこですけど」

「マジでか? ガハハハハ」

めちゃくちゃ笑って喜んでいました。私のいとこの秀樹ちゃんも地元では不良で相当有名だったので、繋がった! と私は驚きました。

この出会いが、まさか次のマグロ漁船の航海につながり、英雄さんと一緒に船に乗るくらい仲良くなるとは思いもしませんでした。

秀樹ちゃんのお兄さんの安広くんは私より2つ年上で、身長が高くて不良っぽい男前なお兄ちゃんです。女遊びの天才だったので他の高校の女にまで手を出していました。喧嘩は弱いですが優しいです。

英雄さんと駅で話してから数ヵ月後、私は長福丸から帰還し、家で休みながら次の仕事をどうするか悩んでいました。

ある日、安広くんと秀樹ちゃんの家へと遊びに行きました。

そこで偶然、英雄さんと再会しました。実は安広くんと英雄さんは友達で、2人は一緒にマグロ漁船に乗っていました。それから英雄さんと仲良くなり、3人で一緒に遊ぶようになったのですが、あるとき英雄さんから誘いを受けました。

「せー、俺らと船いこうや! 楽しいぞ」

英雄さんは満面の笑みでそう言いました。長福丸のときは二度とマグロ漁船に乗るものかと思っていましたが、英雄さんと安広くんがいればきっと楽しくやっていけるだろうと思い、快諾しました。

筆者「もう一度マグロ漁船に乗る」→父親の反応は?

こうして次の航海が決まり、私はオヤジに説明しました。

「父ちゃん、俺、英雄さんと安広くんとマグロ漁船行ってくるわ」

「うん、いいんじゃないか!」

オヤジは笑いながら満足げにそう言ってくれました。この頃からオヤジは、私にまったく怒らなくなりました。

ボボボボボボ……とマフラー音を鳴らしながら、安広くんは車高の低いハコスカで私を家まで迎えに来ました。私の家の2階の洋間は綺麗な海が見えるくらい見晴らしがよく、近くを走ってくる車は丸見えでした。私はハコスカを停めた近くの窓へと向かい、安広くんは車の中から話しかけてきました。

「せー、ひでのところに行くから来いよ」

「はーい、待ってて!」

この頃には安広くんと英雄さんとはすっかり仲良くなり、3人で遊ぶことが多くなっていました。

そして車で港まで向かい、船と船頭さんを紹介してもらいました。秋洋丸という船で、前回の初航海で乗った長福丸とだいたい同じ大きさの近海マグロ漁船です。大きさは60トン、定員は十数名くらいです。そして今回もまた1ヵ月の航海ということでした。

今回の船頭さんは40代くらいと若く、笑顔の絶えないとっつきやすそうな感じの明るい人でした。

「おう! ひでの後輩かい。よろしくな!」

快く受け入れてもらい、一発で採用が決まりました。素直に嬉しかったです。

マグロ漁船は1人で行くのは本当にキツいので、誰かしら仲間と一緒にいられたらそれに越したことはないです。しかも英雄さんと安広くんの2人がいるなら、楽しめるかもしれない。そう思って期待に胸を膨らませていました。

英雄さんはサングラスをかけて黒のツナギを着て、とても堅気には見えない格好で港を歩いていました。

「せー、よかったな、採用になって! 一緒に行くの楽しみだわ」

豪快に笑って、おっかない顔をほころばせていました。  

菊地 誠壱 元マグロ漁船員/Youtuber

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