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マグロ漁船員は“マッチョ”だらけ!?…親の借金5,000万円返済のため「マグロ漁船」に乗った“元ヤンチャ少年”が語る〈船内の実態〉

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月8日 11時15分

マグロ漁船員は“マッチョ”だらけ!?…親の借金5,000万円返済のため「マグロ漁船」に乗った“元ヤンチャ少年”が語る〈船内の実態〉

(※写真はイメージです/PIXTA)

両親の事業失敗で負った5,000万円の借金を返済するため、17歳にしてマグロ漁船員になった筆者。仲のいい先輩に誘われ臨んだ二度目の航海には、筆者と同じ見習いの姿も。マグロ漁船の生活はいったいどのようなものなのでしょうか。菊地誠壱氏の著書『借金を返すためにマグロ漁船に乗っていました』(彩図社)より、詳しくみていきましょう。

先輩に誘われ、二度目の航海へ

5,000万円という多額の借金を返済するため、高校中退後マグロ漁船員になった筆者。

最初の航海では苦労も多く、「二度と乗るものか」と思ったほどでした。

しかし、ヤンキーの先輩に誘われ再びマグロ漁船に乗ることに。

仲のいい先輩に教えてもらいながら、だんだんと仕事を覚えていきます。

安広くん※1、英雄さん※2、私の3人で仕込み屋へと向かい、また航海に必要なものをいろいろと買い揃えました。前の航海とは違ってマグロ漁船の先輩2人からのアドバイスがあったので、心強いし頼りになるなと思いました。それと同時に、初めてのときにあれほど嫌だったはずの航海が、少しずつ楽しみになっていきました。

※1筆者のいとこである秀樹の兄。筆者より2つ年上で、身長が高く不良らしい見た目。

※2リーゼントパーマをあてていて、色黒で身体が大きく、迫力のある外見。喧嘩が強く豪快で、筆者の地元では有名人。筆者を秋洋丸に誘った。安広とは友達で、2人は一緒にマグロ漁船に乗っていた。

「これも買っておいたほうがいいぞ!」

「はい!」

英雄さんは不良仲間の間ではレジェンドのような存在ですが、マグロ漁船でも冷凍長というポジションに就いています。言うなれば船の要となる幹部で、船員の人たちも一目置いている存在です。

「せー(※筆者のあだ名)、これも買っておけよ!」

「わかった!」

いとこの安広くんも仕事ができて頼れる兄貴分です。この仲の良い先輩2人がいるおかげで、以前のような恐れもなく安心して航海に臨めました。

そうして、2回目の航海が始まりました。冷凍長の英雄さんは船の中では中心的人物なので、連れの私に対しても船員の人たちはしっかり面倒を見てくれました。そのおかげで前の船とは違い、とても居心地がよかったです。他の船員の対応も悪くはなく、私の働きぶりを認めてくれている感じがして働きやすかったです。安広くんも仕事ができるので、英雄さんや安広くんといると本当に楽しかったです。

それから、この船にはもう1人、私と同じ1年生が乗っていました。

筆者と同じ「マグロ漁船1年生」は船頭の甥っ子

ひろしという私よりも年下の子で、船頭の甥っ子らしいのですが、見た目は貧弱で漁師に向いているという感じはまったくしませんでした。いつもオドオドしていて、あまり人と話したがりません。いわゆる発達障害を抱えていたようなのですが、ああいう環境で働くのは本当につらかっただろうなと思います。

とはいえ、1年生がひろしと私の2人いるということで、仕事を覚えるのにはいい環境でした。1年生1人だと目の敵にされることが多いので、ひろしの存在には助けられたと思います。1年生の私とひろしは「ポンスケ」と呼ばれて煽られていたのですが、これもマグロ漁船の習わしのようなものです。ひろしに対して私は活きのいいほうだといって可愛がってもらえました。

英雄さんの仕事ぶりを見たのですが、やはりすごかったです。運動神経がいいのか、スナップ外し※3は誰よりも上手かったです。

※3幹縄と枝縄(ブラン)を接続する金具であるスナップを、手作業で一つ一つ外していく仕事。マグロ漁船での仕事の7割がスナップ外しで、最初の難関と言われる。

ひろしがブラン手繰りに入ると、英雄さんは「ポンスケ!」と言って短いノンコ(鉤のついた棒)の柄の部分でひろしのヘルメットをコンッと軽く叩いていました。ちゃんとやれよ! という意味で叩いているのですが、少しふざけて遊んでいるようでしたね。

仲良しの先輩が担う重要な役割

私はというと、一生懸命にサメの解剖をせっせとこなしたり、魚を引っ張ったりしていました。スナップ外しの腕もメキメキと上達していきました。

そんな中で頻繁にやっていたのが、冷凍長である英雄さんの手伝いとして、氷をスコップで掘って移動させる仕事です。本来であれば冷凍長の仕事ですが、私が英雄さんを手伝うのが日課になっていました。いつの間にか英雄さんの助手のようになっていて、仕事を手伝っていました。でも英雄さんを常に慕っていた私からすればむしろ当然だったので何の不満もありませんでした。

ただ、他の船員から「仕事中に2人してカメ(貯蔵庫)入られたら、こっちはたまんねえな」とか言うのが聞こえてきたこともあり、やっぱりマグロ漁船には乱暴な男が多いよなと思っていました。

冷凍長は、魚を管理して水揚げの際に市場へと持っていくという重要な役割を担っています。毎日毎日、大きい地下室のようなカメにある氷をあっちに掘ったりそっちに移動したりしていて、大変な仕事だなあと常々思っていました。

そんな矢先、英雄さんから言われました。

マグロ漁船員が「筋肉ムキムキ」になる理由

「せー、氷砕き手伝え! 毎朝少し手を貸してくれな」

「氷? わかった」

「魚のエラと腹に氷を詰めて綺麗に並べることを『漬ける』っていうんだ。鮮度のいい状態で陸まで持っていくんだよ」

この氷を砕くというのが本当に大変で、カッパを着てカメに入るとかなり寒いです。大きなメカジキが何匹も釣れたら、操業中にカメに入って氷をスコップで掘って、メカジキを置く場所を作ります。

運んだ氷は、英雄さんがメカジキの腹とエラの中に入れ、漬けていきます。同じようにマグロも漬けていくのですが、かなり疲れる仕事です。英雄さんもよくやっていられるなと思っていました。

「せー、疲れたか? 若いから大丈夫だべ」

「結構疲れた……」

氷砕きも氷掘りも大変な仕事だと実感しました。こんな感じで私は英雄さんの手伝いをしていて、どこへ行くのも一緒で舎弟のようについて回っていました。

「今日はメカ(メカジキ)が多いから、カメ入って氷砕きだ!」

「おう! わかったよ」

今思えば、カメの中の構造を頭の中でシミュレーションして管理していた英雄さんは、当時20歳やそこらでした。あの若さで大したもんだなあと改めて尊敬します。

ちなみに、大量のサメをカメに入れておくのですが、サメは死ぬとアンモニア臭が出るので、なかなかの異臭でした。

釣った魚でいっぱいになるカメの中は、ものすごい迫力です。これは壮観だ、いいものを見たと思いましたね。

近海マグロ漁船のマグロは鮮度が自慢ですが、これは冷凍長の腕次第と言っても過言ではないでしょう。何百キロもある大物のメカジキをアンカーで吊るし、「ほら! 行くぞー」という掛け声でカメの中までウィーンと下ろすんですが、それを受け取りメカジキを寝かせるという大変な力仕事は私の役目でした。

おかげでかなり筋肉がつきましたね。マグロ漁船員が港に帰る頃には間違いなく筋肉ムキムキになります。私も当時は120キロのマグロを持ち上げて、シャワールームに立たせて生(血)を抜いていましたから。   

菊地 誠壱 元マグロ漁船員/Youtuber

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