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「景気の行方」を気象で読む…“台風の上陸数”が個人消費にもたらす差【解説:エコノミスト・宅森昭吉氏】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月18日 8時0分

「景気の行方」を気象で読む…“台風の上陸数”が個人消費にもたらす差【解説:エコノミスト・宅森昭吉氏】

(※写真はイメージです/PIXTA)

約40年にわたり国内外の景気分析をしてきたエコノミスト・宅森昭吉氏が、景気や市場を先読みするヒントを紹介する本連載。今回は、「台風の上陸数」について見ていきましょう。

台風の年間上陸数:歴代1位は「10個」、歴代2位は「6個」

2004年の台風発生数は29個であったが、そのうち日本に上陸したのは「10個」。統計を開始した1951年から2024年にかけて最多であり、歴代2位の上陸数「6個」を上回る異例の年だった。

2004年における日本への台風集中上陸は、6月から11月まで約半年間にわたって続いた。上陸確率が全台風の3分の1を超え、次々と襲来した台風により、各地で多くの深刻な被害が出た。

2004年では、6月という季節外れの時期に4号と6号が上陸したのを起点に、7月に10号、8月に11号・15号・16号と相次ぐようになり、9月に18号・21号、10月になっても22号・23号が上陸した。9月以降は秋雨前線の活動を強めて大きな被害をもたらし、特に10月の23号は、各地で甚大な被害を発生させた。また、10個のうち、半数以上の6個が四国に上陸した。

2016年の上陸数は「6個」で、1951年の統計開始以来、1990年・1993年と並んで2番目に多い年となった。年6個上陸した3年を代表して、2016年を見ていこう。台風1号の発生は過去2番目に遅かったが、その後は続々と発生し日本に押し寄せた。例年と異なる気圧配置が主因であると気象庁は分析した。

2016年に上陸した台風は、8月は4個、9月は2個だった。例年、8月の太平洋高気圧は日本の南海上に大きく張り出し、台風は高気圧の縁を回るように南海上を西や北西へ向かい、徐々に東寄りに進路を変えて西日本に接近するものもある。

しかし、2016年8月の太平洋高気圧は南海上への張り出しが平年より弱かった。台風は西へ向かわずに北上し、関東から北日本にかけての地域に上陸した。日本海付近の冷たい空気「寒冷渦(かんれいうず)」に引っ張られた10号は、東北に太平洋側から上陸する異例のコースを辿った。

太平洋高気圧は8月下旬ごろから東方に後退する年が多いが、2016年は逆に日本の南海上に張り出した。9月に2つの台風が西日本に上陸したのはこのためと見られる。9月20日に台風16号が鹿児島県と和歌山県に上陸し、6個目になった。

「上陸数の違い」が個人消費にもたらす差

台風の上陸数が多かった年(歴代最大の10個、あるいは過去3回あった歴代2位タイの6個)と、少なかった年(ゼロあるいは1個)とでは、個人消費の動きに違いがある。なお、上陸数が一番多い四半期は7~9月期であるので、個人消費をGDP統計の実質最終消費支出の7~9月期前期比で台風の上陸数による違いを見ることにする。

GDP統計は、現在2015年基準で1994年からのデータが内閣府HPに掲載されている。さらに、1980年まで遡ることができる支出側GDP系列簡易遡及のデータも掲載されているので、それも利用して1980年から2024年の実質最終消費支出を7~9月期前期比でチェックすることにした。

なお、台風上陸数のデータは1951年からあるが、1979年までの期間での最多上陸数は1954年、1962年、1965年、1966年の「5個」が最多で、6個以上はなかった。また「0個」はなく、「1個」が1957年、1973年、1977年の3回あった。

10個あるいは6個と上陸数が多かった年の実質最終消費支出の7~9月期前期比の平均は+0.65%にとどまるが、0個または1個の年の平均は+1.13%と、1.7倍の伸び率である。台風の上陸が多いと、7~9月期の個人消費のレジャー関連支出などのマイナス要因になっているようだ。

宅森 昭吉

景気探検家・エコノミスト

ESPフォーキャスト調査委員会 委員 ほか

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