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北関東の家電量販店店員「大幅に前年実績を上回っている」…家電量販店の景況感、厳冬で大幅回復【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月16日 20時30分

北関東の家電量販店店員「大幅に前年実績を上回っている」…家電量販店の景況感、厳冬で大幅回復【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

(※画像はイメージです/PIXTA)

物価高騰が家計を圧迫し、景気の先行き不透明感が強まった2024年。景気ウォッチャー調査では、現状は回復基調にあるものの、物価高見通しが先行き判断を大きく押し下げていることが明らかになりました。気温変動による消費への影響や、実質賃金の伸び悩みなど、課題も多くみられます。本稿では、景気の予告信号灯として2024年12月の景気ウォッチャー調査を取り上げます。エコノミスト・宅森昭吉氏の解説をみていきましょう。

2024年12月「景気ウォッチャー調査」…現状は回復基調、先行きは物価上昇を懸念

12月現状判断DI49.9、前月差+0.5ポイント。先行き判断DI48.8前月差▲0.6ポイント。現状判断DIと先行き判断DIが逆方向に動きの主因は「価格or物価」に関する景況判断が逆であること。

24年12月の景気ウォッチャー調査で、現状判断DI(季節調整値)は前月比0.5ポイント上昇の49.9となりました。上昇は2ヵ月連続です。気温低下で冬物商戦が好調だったことや冬のボーナス支給額増が寄与したようです。

先行き判断DI(季節調整値)は、前月差▲0.6ポイントと2ヵ月ぶりに低下し48.8になりました。現状判断DIと先行き判断DIが逆方向に動いた主因は「価格or物価」に関する景況判断が逆方向であることです。

現状判断DIの24年1年間の動きをみると、自動車の認証不正問題の影響、急激な円安の進行、物価高騰の影響などから、2月の51.2から5月の45.7まで低下したあと、振幅を伴いながらも12月には景気判断の分岐点50に極めて接近する、49.9まで持ち直してきました。

現状判断の内訳をみると、家計動向関連DIは、飲食関連が低下したものの、住宅関連、小売関連などが上昇したことから上昇しました。企業動向関連DIは、製造業が低下したものの、非製造業が上昇したことから上昇しました。雇用関連DIは前月から低下しました。なお、原数値でみると、原数値でみると、現状判断DIは前月差0.8ポイント上昇の49.0、先行き判断DIは前月差▲1.5ポイントと低下し46.9になりました。

内閣府が景気ウォッチャーの見方としてまとめた判断は、12月は「景気は、緩やかな回復基調が続いている」と据え置きになりました。8月に7月までの「緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」から「景気は、緩やかな回復基調が続いている」に15ヵ月ぶりに上方修正となり、9月・10月・11月・12月では判断据え置きになりました。

先行きについては、「価格上昇の影響等を懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている」とまとめられるとしています。

12月、気温がさらに景況感を押し上げ

12月「気温」関連現状判断DIは56.6と11月の53.2に続き、11月中旬以降の気温低下で、景気判断の分岐点50超に。

24年は残暑が厳しく、10月の「気温」関連現状判断DIは40.1で9月48.1から8.0ポイント悪化し、景況感の悪化要因になっていました。

一方、2~3ヵ月先の先行き判断での「気温」関連DIは9月56.5、10月54.7で、気温が落ち着けば、景気に対するマイナスの影響がなくなるとみられていましたが、改善は11月に実現しました。11月は中旬以降の気温低下したことで秋冬衣料活発化などが景況感押し上げに働きました。11月の「気温」関連現状判断DIは53.2、同・先行き判断DIは53.3で、現状と先行きとも景気判断の分岐点の50を上回りました。

12月の「気温」関連現状判断DIは56.6、同・先行き判断DIは56.8で、現状と先行きともに11月より上昇しました。「気温」が景況感にプラスに働いたとみられます。

近畿の百貨店・企画担当が「11月に続き、冬物衣料が堅調に推移し、前年を上回る動きとなった。ただし、9月、10月の高気温による倍上の不振が回復しただけであり、9月以降の合計でみると、全体では前年並みとなっている」という判断のコメントを出しています。

家電量販店の景況感…気温低下で大幅回復

家電量販店・現状判断DIは業種別で一番低かった10月35.9から一転、二番目に高い55.0に上昇。

家電量販店の現状判断DI(原数値)は10月では業種別では一番低い35.9でした。しかし、気温の低下で11月・12月はエアコン販売などが活発化し、50.0、55.0と50超になりました。12月の55.0は業種別では百貨店の55.2に次ぐ二番目に高い水準まで改善しました。

「厳冬となり季節商材が好調に推移し、大幅に前年実績を上回っている。前年の前月比は127%、今年の前月比は140%となっている。売上は前年比108%で着地している。好調の商材はエアコンが130%、冷蔵庫104%、テレビ109%、パソコンハードが125%である」という、北関東の家電量販店・店員のコメントがありました。

異常気象による生鮮食品高騰による物価高見通しが、景況感の先行き判断を押し下げ

12月「価格or物価」関連現状判断DIは42.8で11月の40.5から2.3ポイント改善しました。一方、12月先行き判断DIは39.7でこちらは、11月42.6から2.9ポイント低下し、23年1月の38.2以来の悪い水準になりました。

先行き判断のコメント数は333名で半年ぶりの300人台に増加しました。先行き判断では、物価高見通しが景況判断の足を一段と引っ張っている状況です。

東京都区部消費者物価指数でみると、24年は5年連続で、「食料」の前年比が、「総合」や「生鮮食品を除く総合」の前年同月比を上回りました。食料の価格高騰が景況感の足を引っ張る状況が長く続いています。ただし、東京都区部消費者物価指数の21年では、「総合」「生鮮食品除く総合」「食料」のすべての項目がマイナスでした。

ロシアのウクライナ侵攻が始まった22年以降24年まで3年連続で「食料」と食料の中の「生鮮食品」の前年比が「総合」「生鮮食品除く総合」を上回っています。異常気象の影響もあり、かわるがわる何某かの食品が高騰するような状況です。3年連続の高騰ともなると、天候要因は一時的な要因ではなく、構造的な要因になり、生鮮食品をはじめとする食料価格を押し上げています。

また、円安の影響や輸送コスト高止まりなど、そのほかの上昇要因の影響も大きい状況です。

インバウンド需要の現状と先行き

インバウンドのプラス効果は大きいものの、だんだん状態化してきていることもあって12月の現状判断での「外国人orインバウンド」関連のコメント数は64にとどまり、23年2月の60以来の少ない数字になりました。

一方、12月の「外国人orインバウンド」関連の現状判断DIは60.5と11月の57.9から2.6ポイント上昇し、5ヵ月ぶりに60超になりました。なお、現状判断DIは22年5月から景気判断の分岐点50超が維持されて景況感を支える要因になっています。ただし、コメント数の減少は、全体へのプラス効果を削減しています。

先行き判断で「外国人orインバウンド」関連DIは、23年10月49.9から上昇に転じ、24年3月は23年7月69.8以来の水準である67.6まで改善しました。その後、4月以降8ヵ月連続60割れとなり、一時の勢いは薄れていました。しかし、12月は61.0と11月56.8から4.2ポイント上昇し、9ヵ月ぶりの60台になりました。

実質賃金はマイナス続くも、先行きはプラス転換に期待

12月「実質賃金」関連先行き判断DIは54.2と3ヵ月ぶりに景気判断の分岐点である50超に。

1月9日に公表された毎月勤労統計11月速報値の実質賃金・前年同月比は▲0.3%で4ヵ月連続マイナスになりました。12月景気ウォッチャー調査で「実質賃金」関連現状判断DIを計算すると0.0と厳しい数字になっています。ただし、先行きは実質賃金がプラスになることを期待してか、12月「実質賃金」関連先行き判断DIは54.2と3ヵ月ぶりに景気判断の分岐点である50を上回りました。

12月「ボーナス」関連現状判断DIは12月53.9と50超になり、個人消費の下支え要因となったと思われます。一方、12月の「最低賃金」関連DIでは現状判断は25.0、先行き判断は47.2となり厳しい判断が続いています。「最低賃金上昇分をすべて価格転嫁することは難しい」とする企業にとってマイナス要因との見方が多いようです。

まもなく就任「トランプ次期大統領」…「関税」関連先行き判断DIは35.7と厳しい数字に

12月の「米国大統領」に関する先行き判断コメント数は10名になりました。「米国大統領」関連先行き判断DIは50.0で、景気にとってプラスかマイナスかどうかの見方は分かれている状況です。11月の「米国大統領」に関する先行き判断コメント数は19名で、先行き判断DIは52.6と僅かに50超でした。

なお、バイデン政権下でゼロだった「貿易摩擦」のコメントが、トランプ次期大統領の関税政策を見据えて4年前までのように増えるか注目されましたが、11月・12月ともゼロでした。先行き判断で「関税」についてのコメント数は7名で、「関税」関連先行き判断DIは35.7と、景気にとってマイナスに働くという見方が多い状況です。

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

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