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トランプ再任で注目!若き日のトランプ描いた映画『アプレンティス』から見えてくる、孫社長も体現する「人を追え」交渉術の真髄とは?

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月21日 10時15分

トランプ再任で注目!若き日のトランプ描いた映画『アプレンティス』から見えてくる、孫社長も体現する「人を追え」交渉術の真髄とは?

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1月20日に大統領就任式を控えるドナルド・トランプ氏。退任後132年ぶりの返り咲きとなるその瞬間に世界中が注目するなか、映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』(アリ・アッバシ監督、配給:キノフィルムズ)が1月17日(金)に公開。父親の不動産業を引き継いだものの、気弱で繊細な青年だった20代のトランプがいかにして「怪物」「世界中で最もヤバい大統領」と言われるまでになったのか……。三菱地所出身で「ソフトバンク」孫正義氏の元右腕としても知られる実業家の三木雄信氏に同映画のレビューを綴っていただきました。

「君はクビだ!」トランプがホストを務めた番組『アプレンティス』

不動産業を営む父の会社が政府に訴えられ、破産寸前の危機に直面していた20代のドナルド・トランプは高級クラブで辣腕弁護士ロイ・コーンと出会う。コーンは冷酷非道な手法で名を馳せ、大物顧客を抱える実力者。彼は“ナイーブなお坊ちゃん”だったトランプを気に入り、〈勝つための3つのルール〉を伝授。トランプは洗練され、多くの事業を成功させるとともに、やがて師を超える存在へと成長していく……というストーリー。

この映画の特筆すべき点は、基本的な事実に基づいていることです。映画のタイトルにもなっている『アプレンティス』とは、英語では「見習い、弟子、徒弟」を意味する言葉ですが、アメリカ版の『マネーの虎』と言えるような事業コンテンストの番組名からきています。

実はトランプは、2004年から同番組のホスト兼プロデューサーを務め、トランプが脱落者に浴びせる「君はクビだ!」という言葉は流行語にもなったほど。トランプの「成功した実業家」というイメージを広く浸透させ、2回の大統領選挙での成功の基盤となりました。

そして、この映画の脚本を書いたのは、映画のシナリオライターというより、ジャーナリストの側面が強いガブリエル・シャーマンです。ガブリエル・シャーマンは、洗練されたビジュアルと質の高いコンテンツで知られる雑誌『Vanity Fair』に多くのトランプに関する記事を特派員として多数寄稿してきました。

ガブリエル・シャーマンはトランプの周辺人物に取材を多数行っており、たとえば、トランプの元首席戦略官であったスティーブ・バノンなどにも幅広く取材をしてきました。

こうした背景があって、この映画の脚本は基本的には事実に基づいています。もちろん、事実に基づいているからといってトランプの全人生そのままを反映しているものでないことは当然ですし、一部にはトランプ自身が否定もしくは曖昧にしている部分も描かれています。

「play the man, not a ball.」ロイ・コーンの最も重要な教え

トランプはロイ・コーンから多くのを学んだとされています。そのなかで私が、トランプにとって最も重要な教えだったろうと感じたことは、「play the man, not a ball.」という教えです。

この教えは、日本語で言えば、「ボールを追うな、人を追え」ということです。つまり「勝負に勝つためには『事柄』の正しさを追求するのではなく、その事柄に関わる『人』にまつわる利害得失を広く捉えて交渉するべき」ということです。

実際にロイ・コーンやトランプがこの発言をしたかをさまざまな資料にあたって確認しましたが、残念ながら確認することができていません。しかし、この教えは、トランプの交渉術の本質をついて象徴していると思います。

たとえば、映画中では、ロイ・コーンはトランプが抱えている政府との裁判を政府の責任者の個人的ことをつかみ、和解で幕引きをさせています。

また、トランプは大規模な不動産開発を次々と行っていくのですが、不動産取引は一件の取引ごとに違います。工場で製造された規格製品の売買のビジネスとはまったく異なり、さまざまな関係者の資金の見込みやどこまでのリスクが取れるかなどの個々の利害得失に基づいた交渉の結果のオーダーメイドの取引なのです。

この不動産取引の特性がトランプの交渉スタイルの大きく影響していることも描かれています。

さらに、最近のトランプの大統領選でのキャンペーンを見ても、「おいぼれバイデン」といった発言のとおり、対立候補の政策よりも対立候補個人に対してのコメントが目立ちました。まさしく「play the man, not a ball.」をトランプは実行しているのです。

トランプ流交渉術から学ぶこと

さて、この「勝負に勝つためには『事柄』の正しさを追求するのではなく、その事柄に関わる『人』にまつわる利害得失を広く捉えて交渉するべき」というトランプも実践するロイ・コーンの教えは意味のあるものかを考えてみたいと思います。

映画のなかでの、時には強引さを通り越して横暴とも言えるトランプの振る舞いはひとまず置いておいて、この教えは、普通のビジネスパーソンでも大いに役立つでしょう。

たとえば、あなたがシステム会社の営業担当としましょう。営業先においてそのシステムのよさをいうことだけが営業ではないことは当然です。たとえば、真の意思決定者が誰かを見極めること、その意思決定者の決裁権限の上限額がいくらまでか、いつ予算は策定されるのかなどを知ることが必要です。

さらに、その意思決定者の思考のクセや社内力学での立ち位置を知ることができればベターでしょう。そのうえでその意思決定者の利害得失にあったオファーするのです。

 

日本では、ソフトバンクの孫社長がトランプ並にこのような交渉術に長けています。私は孫社長の秘書をしていたので身近で見ていたのですが、孫社長の提案は、常に「この条件ならこの人受けないわけないよな」と思う内容なのです。

たとえば、アメリカ企業とのジョイントベンチャーを迅速に立ち上げるためにあるスタートアップを買収したことがあります。当時、渋谷の道元坂の裏手にあった古い戸建てにあったスタートアップに孫社長自身が押しかけて、トップと直談判をしてその場で、その事業を1億円現金で買収すること決めたことがあります。

そのスタートアップは事業立ち上げ直後で存続・成長するために現金が必要だったのです。ちなみにその企業はその1億円を元手に多くの事業を起こし、そのなかには現在誰もが知っているSNS系の上場会社に成長した会社もあります。お互いにwinwinの、よい交渉だったと言えると思います。

実は、この教えはトランプが大統領再任目前の現在、我が国の政治やビジネスの中枢にいる人にとっても重要だと思います。たとえば、まだトランプ大統領と会談できていない石破首相や日本製鉄のトップにとってトランプを理解することは極めて重要なはずです。

交渉相手となる「人」であるトランプの利害得失を考えること必要です。「事柄」の正しさを議論することはあまり意味がないでしょう。

そういう意味でも、映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』は、その一挙手一投足が世界中から注目を集めるトランプを理解するうえで必見の映画です。

映画はTOHOシネマズ日比谷ほかで全国公開中。

三木 雄信

元日本年金機構 理事

トライズ株式会社 代表取締役社長

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