どこの大学を出てると思ってんだ!…「年金月20万円・貯金2,000万円」東大卒・62歳元メガバンカー夫へ「年金月6万円」妻の見切り【CFPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月29日 10時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
熟年離婚する夫婦が増加しています。熟年離婚は精神的な苦痛に加えて、老後の生活を経済的に脅かすリスクも伴います。本記事では、立野さん(仮名)の事例とともに、熟年離婚と老後のリスクについてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。
メガバンク出身のモラハラ夫
立野裕二さん(仮名/62歳)は東大を卒業後、メガバンクに就職しました。妻の由紀さん(仮名/62歳)とは大学時代にアルバイトを通じて知り合い、由紀さんの妊娠を機に結婚。すでに40年以上の仲です。
入社後、立野さんは上司から大きな期待を背負いました。見事に期待に応え、現役時代は営業課の課長職にもなり、誰もが認める活躍ぶりにより成果を収めました。退職金2,000万円を受け取り60歳で退職したあとは、年金を少しずつ受け取りながら、自分でコンサルティングの事業を初めて細々と生活費分くらいを稼ぎながら続けて行こうと考えていたのでした。
立野さんは普段は記帳面で真面目な性格ですが、家で見せる素顔は重度のきれい好き。掃除が行き届いていないと妻の由紀さんを厳しく叱責することもあり、時には度が過ぎ、由紀さんは「モラハラ」と感じることもしばしばありました。
退職後、立野さんは妻の由紀さんから離婚を切り出されました。
5年分のモラハラの証拠
由紀さんは離婚を突き付ける際、それまでに受けた暴言の数々を過去5年にもわたりすべてノートに残していたものを見せました。
一つひとつ、いつ、どこで、どのような場面でなにを言われたのかをメモしていました。なかでもメモに最も多く登場したセリフは「どこの大学を出てると思っているんだ!」です。中堅私立の大学4年生だった由紀さんは妊娠がわかると、内定をもらっていた企業を辞退し、立野さんと学生結婚。あと1年で卒業というときでしたが、やむなく休学し、卒業後すぐに地方へ配属となった立野さんについていったため、大学を辞めることにしたという経緯があります。
口論となったときに由紀さんが少しでも口答えをすると、立野さんが「お前は高卒だろう。俺とは違うだろう。俺がどこの大学を出てると思っているんだ?」と口癖のようにいう度、由紀さんはいつも悲しい気持ちになっていました。メモの中には「どうせあの大学じゃ卒業したってたかがしれていた」などという言葉も残されていました。
夫の秘密と妻が仕掛けたワナ
さらに、由紀さんは立野さんが浮気をしていた証拠写真を突き付けます。
由紀さんは立野さんの秘密を握っていました。30代で転勤が決まった立野さんは、子どもの私立中学入学のタイミングだったこともあり、単身赴任になりました。立野さんは単身赴任をきっかけに浮気をするようになり、本社に戻ってからも妻にバレないよう出張先での浮気を続けていたのです。
それに気が付いていた由紀さんは、探偵を雇いその証拠を5年にわたって集め、記録してきたのです。妻には気が付かれていないと思っていた立野さんにとって、言葉にならないほどの驚きでした。
由紀さんの要求は、立野さんの資産の半分と、厚生年金部分の半分を渡すこと。到底納得できずに怒った立野さんでしたが、由紀さんは浮気の相手側にも全員コンタクトを取り、慰謝料を要求しない代わりに証拠としてLINEやメールでのやりとりをすべて見せるように伝え、離婚の準備を進めてきました。
「この年になってもいまだに自分の出た大学がどこだとか言っているあなたのことが恥ずかしい。浮気相手がいて、自分はモテるとでも勘違いしているようで恥ずかしい。あなたのような中身のない人間とこれ以上一緒にいることはできません」
調停・審判の場で浮気相手とのやりとりを公開されることを恐れた立野さんは、由紀さんの要求を飲むことに。退職金も合わせてこれまで築いた資産5,000万円のうち2,000万円を支払います。また、もともと二人の年金額はそれぞれにわけると、立野さんが月額20万円程度、由紀さんが6万円程度です。厚生年金の半額の年間30万円分に加え、慰謝料500万円を支払うことを認めました。
離婚時の財産分与
離婚時には、結婚後に夫婦で築き上げてきた財産をわけることになります。この際、夫婦それぞれが財産の形成にどれだけ貢献したかが考慮されますが、多くの場合、財産は半分ずつにわけられます。また、婚姻期間中に保険料を支払った分の厚生年金についても、分与の対象となるため、半分を配偶者に渡さなければなりません。これにより、資産が豊富にあると思っていても半分になり、厚生年金も半分に減るため、老後の生活設計が崩れてしまうことがよくあります。
そして、原因がモラハラや不倫となれば慰謝料も支払う必要がでてきます。
また、今回早期に離婚協議に決着がついたのは、由紀さんが感情的にならずに夫の浮気相手にコンタクトを取り、全員からLINEやメールの記録を集めていたことにあるでしょう。潔癖症とも思えるほどの立野さんですから、自分の浮気相手とのやりとりを他人に読まれることなど屈辱の極みであり、長期間協議を続けるよりも早期に納得したほうがよいと判断したためでした。
本来でしたらゆとりのある老後を送ることができたはずが、離婚のために資産を失ってしまい、心もとない老後を送ることになったのです。
増える熟年離婚と高まる老後リスク
今回はモラハラと浮気により財産分与、そして慰謝料を迫られ、老後の生活資金を失ってしまった立野さんの事例をお伝えしました。
一般的に婚姻期間が20年以上の夫婦が離婚することをいわゆる「熟年離婚」と呼んでいます。令和3年人口動態統計月報年計(概数)によると、離婚件数のうち熟年離婚は約21.1%にもなるとされています。
老後の生活設計は、基本的に夫婦二人の年金収入を合算し、見込まれる支出に対しどの程度資産があればよいかなどを考えて計算していきます。しかし、今回のように離婚して資産や厚生年金部分の半数近くを失うようなこととなると、せっかくの設計も大きく崩れてしまうでしょう。
大事な人生のパートナーを無下に扱ってしまうと思わぬしっぺ返しを受けることになりますので、お互いの存在、価値観を尊重しあって生活していくことが大切ですね。
小川 洋平
FP相談ねっと
CFP
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