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実績、能力、人格が二重丸でも採用できません…横領などの不正リスクを減らす「金融調査」と「横領調査」の実態【人材のプロが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月29日 7時15分

実績、能力、人格が二重丸でも採用できません…横領などの不正リスクを減らす「金融調査」と「横領調査」の実態【人材のプロが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

企業側は横領等の不正行為が発生するリスクを極力減らしたいと考えています。そのため、ごくまれではありますが、人材採用の際にお金周りの調査が行われることもあります。今回は、サーチ・ビジネス(ヘッドハンティング)のパイオニアである東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)代表取締役社長の福留拓人氏が、「金融調査」と「横領調査」について解説します。

企業が人材を採用する前に「金融調査」を希望する理由

ごくまれに、当社のクライアント企業から最終レファレンスのチェックで派生した金融調査を依頼されることがあります。たとえばCFO(最高財務責任者)および経理財務の責任者がスカウティングによって中途入社する場合、いうまでもなく会社のお金を動かせるポジションに就きますから、基本的な調査が必要になります。

過去の経験、実績、能力、人格など面接で推し量れる要素が充分であったとしても、もしその人物がお金にルーズだったら、横領等の発生リスクを高めることになります。それを警戒する企業が、極秘裏に私どもに調査を依頼してこられることがあります。

つまり、ノンバンクなどで多重債務に陥っていないかという懸念があるのです。ある機関で統計が出ているのですが、多重債務、異性問題、ギャンブルなど私生活に実際の問題がある場合、残念ながら業務で問題を起こす可能性が高まり、不正に直結する問題の発生要因となることがわかっています。それは企業として致命的なマイナスとなります。

特に、金庫番による横領の話題などがよく出てきますが、数年後の内部調査で発覚することはあるものの、その瞬間を見抜くために仕事をしているわけではありません。不正発生の芽を摘むということであれば、借金問題、異性関係、賭けごとなどにリスクを抱えていないかどうか、あらかじめよく観察しておくべきです。

この点に厳しい企業では、ノンバンクからの借り入れ実績がある人の場合、実績、能力、人格が二重丸だったとしても、その時点で採用NGになる可能性があるでしょう。

次にポイントになるのは素行です。問題のある人物は、通常の私生活を超えたところにお金が流れるような振る舞いをしている場合があります。横領の可能性という意味では日常的な素行にも注目すべきで、何か違和感があればこれもリスクが高くなります。

これらの問題について、私どもは調査の手法を有しています。しかし、これは能力や人格の査定とは違う項目ですから、就職差別につながる可能性があります。職業安定法上の違法行為になる場合もあります。ですから、私どもはこれらの調査を実施しようとした企業を戒める立場にあります。

ただし、一般の従業員に該当しない取締役以上の役職、株主総会で選任を得た委任契約にあたる人に関しては、法解釈上、就職差別などで労働者の保護と違う領域に入る場合もありますから、そういう場合は慎重に本人の同意を取ったうえで調査するノウハウを発揮します。そういう面で、これらの調査の必要があれば、信頼できる人材コンサルタントに相談してみるとよいでしょう。

調査によって「横領」が発覚するさまざまなケース

次に横領調査というものがあります。これは入社前の選定とは違い、在籍社員のお金の問題に対する調査です。ここでも私どもはノウハウを有しています。この問題はエピソード的にご紹介しましょう。横領している人はこういう面からわかるというお話です。

デパートなどで購入した商品の領収証の但し書きを、店員に頼んで都合のよい商品や日付に替えてもらうことがあります。これは会社の経費であるかのように領収証を偽って、着服しようとする行為です。

しかし、その気になればレシートナンバーからどこの売場か特定できるので、但し書きを替えても、どの売場でいつ何を購入したかわかってしまいます。特に現在はインボイス制度が運用されているので、さらに横領が難しくなりました。領収証を利用したごまかしは通用しなくなっています。

次に飛行機の搭乗証明書のケースです。これは主に海外出張の際に大手企業で散見される方法です。まず航空券を高額で買い、その領収証を取得します。そして、すぐに解約して払い戻してもらいます。払い戻し手数料は掛かりますが、大半は払い戻され、領収証は手元に残ります。ではどうやって出張に行くかというと、自分のセレクトで別の予約をしているのです。目的地には行っているけれども、航空券の差額を着服しているわけです。

これを見破る方法もあります。航空券の領収証とは別に、航空会社に請求すると搭乗証明書をもらうことができます。これを合算して照らし合わせることで、横領調査をすることができます。

また昔からある白紙領収書を使う方法もあります。文房具店で売っている白紙の領収書に印章店で偽造した「実際には存在しない会社」の印鑑を押し、あとから金額を記載して、それを経理に請求して費用として受け取ります。

領収証というのは払った側と受け取った側がイコールになっているはずなので、金銭の支出のないものに対して発行すれば、どこかでつじつまが合わなくなります。横領調査ではそこを突きます。

不正を業務上の実績でカバーすることはできない

このような横領調査は、残念ながら職場でレピュテーションが悪化している、何らかの疑いを持たれている人に、リプレースということで依頼が来たときに、その裏付けの一部として私どもに調査を依頼されることがあります。

横領調査では実にいろいろな事例がありますが、ここではごく一部をご紹介させていただきました。通常の自分の職務範囲で実績を出しながら、こういう行為で失脚しないように注意したいものです。

これらの不正については業務上の実績でカバーできると思わないほうがよろしいと存じます。金融調査も横領調査もマイナス評価を受けるだけのものなので、プラス・マイナスで見ることはありません。結局は不正や横領が露見して自分が奈落に落ちるだけなのです。そのような状況に足を踏み入れないように心掛けるようにしましょう。

最後に、この記事に掲載している調査を当社(東京エグゼクティブ・サーチ)が推奨するわけではありません。このような調査が現実に存在し、それなりにノウハウを獲得していることは事実ですが、就職差別につながりかねないので調査を濫用することはありません。

福留 拓人

東京エグゼクティブ・サーチ株式会社

代表取締役社長

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