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定年後は一瞬無職「社会から取り残されたよう」→ たまらず再就職の65歳元大手部長、ただならぬ努力で“年金月18万円と月収40万円”現役時代の収入キープも…厚労省に奪われた「働く意欲」【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月2日 10時45分

定年後は一瞬無職「社会から取り残されたよう」→ たまらず再就職の65歳元大手部長、ただならぬ努力で“年金月18万円と月収40万円”現役時代の収入キープも…厚労省に奪われた「働く意欲」【CFPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

定年後も働くことを考えている人は多いでしょう。働き方によっては、年金の受給額が変わることをご存じでしょうか? 在職老齢年金制度は、働き方次第で年金額が変動する仕組みです。本記事ではAさんの事例とともに、本制度の注意点について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

現役を退いたあとの葛藤 

65歳のAさんは、大手メーカーで人事部長を務めた女性です。部下数十人を統率する責任ある立場。忙しい日々ではあったものの、仕事に生きがいを感じ、なにより「自分の存在意義」を実感できる毎日を送っていました。 

しかし、定年退職の日が近づくにつれ、Aさんの心は複雑でした。 

「仕事のない生活なんて想像できない」 

「社会から取り残されるような気がする」

表向きは「第二の人生を楽しみます」と笑顔を見せていたものの、その心には漠然とした不安が広がっていました。 

退職後の数週間は旅行や趣味に時間を費やしてみましたが、どこか物足りなさを感じる日々。「このまま年金だけで暮らしていくのも悪くないけれど、もう少し自分の力を社会で発揮したい」そんな思いがふつふつと湧き上がり、再就職を考えるようになりました。 

再就職…65歳の新しい挑戦 

再就職先として選んだのは、以前取引のあった中小企業のコンサルタント職です。Aさんの経験や知識を求めていたその企業は、週4日勤務で月額40万円という条件を提示。「自分のペースで働けるし、年金と合わせて十分生活も豊かになる」と感じ、すぐに引き受けることにしました。 

新しい職場では、かつてのようなプレッシャーや多忙さはなく、自分のペースで働ける環境が整っていました。若手社員の育成や人事制度の改善に携わる仕事はやりがいがあり、「また自分が社会の一員として役立っている」と人生に充実感を取り戻しました。 

期待していた収入に喜びも、突然届いた「年金決定通知書・支給額変更通知書」 

Aさんは、再就職後の生活に大きな期待を寄せていました。毎月40万円の給与に加え、65歳以降に受け取れる予定だった老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計は月額18万円。合計58万円の収入はこれまでの努力の結果、退職前の生活とほぼ変わらないもので、旅行や趣味の費用にも余裕が生まれると思っていました。 

ところが仕事を始めて数ヵ月が過ぎたころ、日本年金機構から1通の封書が届きました。中には、「収入が基準を超過したため、老齢厚生年金を一部停止する」という旨の通知が入っていました。 

「どうして? こんな話、聞いていない!」Aさんは愕然としました。「再就職で得られる収入と年金を計算して、これがベストな働き方と思っていたのに」と、突然の通知に戸惑いを隠せません。 

在職老齢年金の仕組み

厚生年金と国民年金は、国(厚生労働省)が財政と運営の責任を負い、実際の事務作業(加入手続き、保険料の徴収、年金の給付など)は日本年金機構(平成22年に設立された公的法人)が行っています。

在職老齢年金とは、年金を受給しながら働いて収入を得ている方の年金額を調整する制度です。給与や賞与(総報酬月額相当額)と老齢厚生年金の基本月額を合計した金額が一定の基準(支給停止調整額)を超えた場合、その超過分に応じて年金が一部または全額停止されます。 

2024年度(令和6年度)の支給停止調整額は50万円です。このため、総報酬月額相当額+老齢厚生年金の基本月額が50万円を超える場合、超過分の1/2が老齢厚生年金の支給額から引かれます。 

Aさんのケース 

《収入状況》

月額給与:40万円 

老齢厚生年金の基本月額:12万円(老齢基礎年金6万円は支給停止の対象外) 

《計算手順》 

総報酬月額相当額+老齢厚生年金の基本月額を計算 

40万円(給与)+12万円(老齢厚生年金)=52万円 

支給停止調整額と比較 

52万円(合計)-50万円(調整額)=2万円(超過額) 

超過額の1/2を計算 

2万円 ×1/2=1万円(支給停止額) 

《実際に支給される年金額》

12万円(老齢厚生年金)-1万円(支給停止額)=11万円(支給額) 

Aさんは月額40万円の給与を得ながら老齢厚生年金を受給しています。しかし総報酬月額相当額が基準を超えたため、月額1万円分が支給停止され、実際に受け取れる老齢厚生年金は月額11万円です。老齢基礎年金(6万円)は全額支給されるため、合計で月額57万円(給与40万円+老齢厚生年金11万円+老齢基礎年金6万円)の収入になります。 

在職老齢年金制度の注意点 

年金制度は複雑です。在職老齢年金については、以下3点を押さえておきましょう。

1.老齢基礎年金は支給停止の対象外 

老齢厚生年金のみが調整対象であり、老齢基礎年金は影響を受けません。 

2.総報酬月額相当額に賞与も含まれる 

年間賞与を12で割った額が含まれるため、賞与の多い方は支給停止額が増える可能性があります。 

3.働き方を調整することで年金額を維持可能 

給与額を調整するか、勤務日数を減らすことで支給停止を回避する選択肢も検討できます。 

Aさんが選んだ「新しい働き方」 

年金の支給額変更通知を受け、一時は働き続ける意欲を失ったAさん。しかし、自分の経験を活かして社会とつながり続けたいという思いから、冷静に自分の働き方を見直し、次のような工夫をすることで「年金を減額されずに働く方法」を見つけました。 

収入を調整するために勤務日数を減らす 

Aさんは、現在の週4日勤務から週3日勤務に切り替えることで、月給を40万円から30万円に調整しました。この変更により、以下のように在職老齢年金の支給停止額を抑えることができました。 

《変更後の計算 》

給与(月給):30万円 

老齢厚生年金の基本月額:12万円 

総報酬月額相当額+年金の合計:30万円(給与)+12万円(年金)=42万円 

この結果、総報酬月額相当額+年金の合計が支給停止調整額(50万円)を下回るため、老齢厚生年金が全額支給されることになりました。 

Aさんは今回の経験を通じて、「制度を知らなかったこと」が年金の削減という思わぬ事態につながったことを痛感しました。年金制度を理解したうえで計画的に行動することの重要性を強く実感したと話します。 

年金を減額されることなく働くためのポイント、4つ

1.制度を事前に理解する 

在職老齢年金の基本ルールを学び、年金が減額・停止される条件を把握することが大切です。具体的には、支給停止調整額や計算方法を確認しましょう。 

2.収入ラインを意識する 

働くことで年金が減額される場合、収入を調整することでバランスを保つことが可能です。たとえば勤務日数や給与額を調整することで、無駄なく収入を確保できます。 

3.専門家に相談する 

年金制度は複雑なため、自分だけで判断するのが難しい場合があります。ファイナンシャルプランナーや社会保険労務士、年金事務所の職員に相談することで、最適な働き方を見つけやすくなります。 

4.将来の計画を立てる 

年金だけに頼らず、資産運用や貯蓄も併せて計画することで、安定した老後を迎える準備ができます。

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表

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