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大船に乗ったつもりでいてくれよ!「年金300万円・貯金5,000万円」威風堂々、自信みなぎる65歳夫…一転、セカンドライフの荒波に座礁。3年後に通帳をみた妻が絶叫したワケ【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月3日 10時45分

大船に乗ったつもりでいてくれよ!「年金300万円・貯金5,000万円」威風堂々、自信みなぎる65歳夫…一転、セカンドライフの荒波に座礁。3年後に通帳をみた妻が絶叫したワケ【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職後のセカンドライフ。これまでの経験や長年の趣味を活かして起業するなど、新たな挑戦に胸を膨らませる人も少なくないでしょう。しかし、現実はそう甘くないようです。思い描いていた理想と現実のギャップに苦しみ、大切な老後資金を失ってしまうケースもあって……。本記事ではAさんの事例とともに、定年退職後の起業で直面する可能性のあるリスクについて、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。

平均以上で威風堂々の夫

公的年金額は毎年、厚生労働省から次年度の年金額改定についてお知らせがあります。2024年度の厚生年金保険は夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額は23万483円でした※1

Aさんは65歳で定年退職をしましたが、年金は夫婦で300万円(月25万円)と標準以上です。退職金含めての貯蓄額は、5,000万円。世帯主が65歳以上の世帯の平均貯蓄残高の平均値が2,463万円、貯蓄保有世帯の中央値では1,604万円であるため、平均以上の老後資金を確保できています※2

Aさんは大きな負担となるローンもなく、健康状態もよいため、定年後の生活にも自信に満ちていました。

「人生100年時代、まだまだセカンドライフを謳歌しなければ!」

思い切って起業

Aさんの趣味はテニス。どうせなら、趣味を事業に活かせないだろうかと考えていました。そんなとき、テニス仲間のYさんから、ある事業を立ち上げないかと提案されます。

「インドアシミュレーションテニススクールはどうだろう。天候に左右されず、楽しめるし、ちょっとした喫茶室を作って、気の合う仲間とコーヒーでも飲みながら語り合うこともできる」

初期費用はYさんと折半。貯蓄から立替えて、軌道にのったら少しずつ取り戻せれば問題ないだろうと一念発起します。妻は不安そうにしているので、「大船に乗ったつもりでいてくれよ」とそのかわり貯蓄の半分は手を付けないことを約束しました。

喫茶室はAさんの担当。学生のころ、学校近くの喫茶店でアルバイトしていた経験があり、当時のことを思い出しワクワクします。大勢の仲間とテニスをすると、懇親会に喫茶室を貸切にして、ケータリングで楽しいひと時を過ごしていました。

一転、大船が座礁

喫茶室のお客様の半分はAさんの仲間。この喫茶室で仕事をしていると、いろんな話ができるし、やりがいがあると活気に満ちたセカンドライフを送っていました。しかし、2年ほど経ったころ、仲間のなかには、いつも同じ場所で集まるのはどうかといいだす人が出てきました。場所を変えて懇親会をすることが増え、喫茶室に訪れる仲間は少なくなっていきます。

Aさんは、高齢期に老後破産する人の原因の1つに、定年退職後の起業に失敗があるという記事を読んだことがありました。自分は大丈夫と自信満々に始めたため、誰にも相談できずに、Yさんとやりくりに神経をすり減らします。

さらに誤算だったのは、もともとテニスとゴルフの両方を嗜んでいた同世代の友人たちが、加齢に伴いテニスを敬遠し、ゴルフに移行していったことでした。足のステップや体重移動などが負担になったためです。Aさんとのあいだにトラブルがあったわけではありませんが、友人たちは次第にスクールを退会し、喫茶室からも足が遠のいていきました。

スクールは月会費制です。退会する人が増えると、当然ながら売上が減少します。なんとかしなければと思うあまり、事態は悪化の一途を辿る一方……。

通帳をみた妻、絶叫

3年が経ったある日、妻は最近元気のない夫を心配します「体調が悪いの? 人間ドックでも受診したらどう?」。Aさんは全身から汗が噴き出すのを感じました。妻に内緒で、約束を破って貯蓄を切り崩していたのです。

もう隠しきれないと観念したAさんは妻に通帳をみせました。通帳をみるなり、妻は絶叫。修復不可能な大げんかに。通帳の残高は1,000万円を切ってしまっていたのです。どうしてこんなことになったのかと問いただします。

最初は自分が働いてきた賜物だと強気なAさんでしたが、妻の言い分を聞いて意気消沈します。妻は、「あなたがやりたくてやったことだから、起業に失敗したことは仕方ない」と詰めることはありませんでした。ただ、夫婦で約束したことを黙って破ったことに激しい怒りを覚えたのです。

定年退職を機に「卒婚」や「熟年離婚」という言葉を耳にする機会が増えるなか、現役時代は多忙を理由に、特に環境の変化がなければコミュニケーション不足でも問題ないと捉えがちです。しかし、老後は蓄えが尽き、働けなくなった場合、老後破産という深刻な事態に陥る可能性があります。

Aさんは妻が起業に失敗したことには触れなかったことに自身の考えを改めました。本来ならば卒婚や離婚を切り出されてもおかしくない状況だったと気づき、妻に対し心から謝罪しました。そして、今後のことについては専門家と相談しながら慎重に検討していきたいと話していました。

〈参考〉

※1 厚生労働省Press Release「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」 https://www.mhlw.go.jp/content/12502000/001040881.pdf

※2 家計調査報告貯蓄・負債編2023年(令和5年)平均結果の概要(二人以上の世帯)

https://www.stat.go.jp/data/sav/sokuhou/nen/pdf/2023_gai.pdf

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

代表

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