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トランプ革命は「電力革命」 “ちゃぶ台返し”のエネルギー非常事態宣言【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月22日 10時15分

トランプ革命は「電力革命」 “ちゃぶ台返し”のエネルギー非常事態宣言【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】

(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフグローバルストラテジスト・白木久史氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。

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【目次】

1.経済政策の目玉「エネルギー非常事態宣言」

2.米国で急増する電力需要

3.トランプ革命は電力革命

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トランプ新大統領は1月20日の就任演説で「米国第一」を掲げ、不法移民対策、関税を徴収する外国歳入庁の設置、資源開発の積極化などの自身の政策に触れながら、「米国の黄金時代が今始まる」と宣言しました。

トランプ新大統領の政策については、大規模な不法移民の強制送還や、中国からの輸入品などへの高額な関税といった強硬策が話題の中心となっていますが、米国経済への影響という意味では、「エネルギー非常事態宣言」を発令して取り組みを加速させる「資源開発の促進策」が注目されます。

1.経済政策の目玉「エネルギー非常事態宣言」

■トランプ新大統領は就任早々に「エネルギー非常事態」を宣言し、パリ協定からの離脱、バイデン前政権が温暖化対策で凍結した資源開発と輸出の審査の再開、国有地と海底油田の開発の積極化を表明しました。そして、「ESG投資の禁止」にまでも言及しました。

〈破壊王の「ちゃぶ台返し」〉

■トランプ新大統領は、前政権が進めた気候変動問題への取り組みを政権初日から180度転換してみせた格好ですが、得意のちゃぶ台返しでまさに「破壊王の面目躍如」といったところでしょうか。そんなトランプ新政権のエネルギー政策により期待される経済的な効果は、①資源エネルギー価格の下落によるインフレ緩和、②資源輸出の拡大による貿易収支の改善、③エネルギー収入に国家財政を依存するロシアへのけん制などが挙げられますが、中でも注目したいのが、④米国内で今後急増が予想される電力需要への対応です。

2.米国で急増する電力需要

■エネルギー多消費型社会の米国で、現在その不足が指摘されているのが「電力」です。米エネルギー情報局(EIA)による長期予測では、全米の発電所のキャパシティは2022年時点の約1,132.7GW(ギガワット)から、2050年には約2,199.3GWへと倍増するものと予測されています(図表2)。

■こうした電力需要急増の背景には、生成AI向けに急増する大規模データセンターでの電力需要、製造業の国内回帰による生産活動の活発化、そして、車やビルの電動化などがあるとされています。

■米エネルギー省(DOE)所管の研究所の報告書では、米国のデータセンター向け電力需要は、2023年の約176TWh(テラワット毎時、電力総需要の約4.4%)から2028年には最大で約580TWh(同12.0%)まで急増することが予想されています。

3.トランプ革命は電力革命

■トランプ新政権による「エネルギー非常事態宣言」については、「掘って、掘って、掘りまくる(Drill baby drill)」という言葉のイメージの強さから単なるエネルギーの増産と誤解されがちです。しかし、その背景にはバイデン政権が差し止めていた資源開発を積極化させ、発送電設備を整備・拡大し、AIを始めとする将来の経済競争力に直結するハイテク開発競争のインフラを整備することにあると言えそうです。

■こうした「国策」の恩恵を受けることが期待されるのが、電力にかかわる①発電、②送電、③蓄電に関わる企業群です。具体的には、①電力会社、発電機を製造する重電メーカー、②送電・変電設備を製造する電機メーカーや電線会社、そして、③大容量の送電網の電気を蓄電するグリッドスケール蓄電池の関連企業や、燃料電池、電気自動車用バッテリーメーカーなどが挙げられます。

■まさに、化石燃料を最大限活用した巨大な電力供給と、AI時代を見据えた米国のハイテク戦略であり、「電力革命」とも呼ぶべき状況といえそうです。こうした状況から、例えば日本株では、大手電線メーカーのフジクラや古河電工の株価は昨年から大きく上昇しています(図表3)。また、米国でも、トランプ新大統領の当選以降の株式市場(S&P500)のセクター別騰落を見ても、発電機を製造する重電メーカーなどが入る「重電機設備」や、「独立系発電・エネルギー」が好調に推移しており、既に強い政策の追い風を感じさせる展開となっています(図表4)。

〈まとめに〉

大きな混乱もなく無事にトランプ新大統領が就任しました。新政権の政策については不法移民対策や関税と言った強硬策に目が行きがちですが、経済政策としてはエネルギー非常事態宣言により180度転換した資源政策に注目したいところです。

長期的な視点で見た環境破壊への懸念には目もくれず、資源エネルギーの増産に邁進するトランプ新政権下では、原油や天然ガスの供給増によるインフレの抑制、資源輸出増加による貿易赤字の縮小、そして、電力不足の解消が期待できそうです。生成AIの開発競争と社会実装が進む中、データセンター向け電力需要は急増が見込まれています。爆発的な需要増と新政権による規制緩和で、米国の電力事情は激変することになりそうです。まさに、「トランプ革命は電力革命」とすることができそうです。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『トランプ革命は「電力革命」 “ちゃぶ台返し”のエネルギー非常事態宣言【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】』を参照)。

白木 久史

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフグローバルストラテジスト

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