共働きは不利?紺のスーツは必須?…ヴェールに包まれている小学校受験の正体とは?【令和の小学校受験】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月23日 7時15分
中学校受験に比べて受験者数が少なく、合格基準も明確には見えないため、まだまだヴェールに包まれている「小学校受験」。そんな世界の本質や、経験者としてのリアルな声をSNSで発信しているのが「狼侍」さんです。「小学校受験なんて一般家庭には縁がない」「高級車一台分の費用が必須」といった誤解や噂が飛び交うなか、令和の小学校受験の実情はどんなものなのでしょうか? 1月23日に初の著書『小学校受験は戦略が9割』(新潮社)を上梓した狼侍さんに3回にわたってお話を伺いました。
「受験産業が伝えない部分」を客観的に発信
――「狼侍」のアカウントを始めたきっかけについてお聞かせください。
狼侍さん(以下、狼侍):アカウントでの発信を始めたのは、子どもの小学校生活が落ち着いたころ、コロナ禍で時間があった時期です。
「稼ぎたい」「バズらせたい」という気持ちはなく、子育てに費やした経験をテーマに発信してみようと思ったのがきっかけです。当時、小学校受験の情報発信は少なく、私も「新参アカウント」として仲間入りしました。
発信を続けるなかで、受験に興味はあるけど情報が足りない家庭が多いことに気づき、アカウント運営を継続しました。
また、受験産業の情報を鵜呑みにする危険性を感じ、自分の経験をもとに「受験産業が伝えない部分」を客観的に発信する必要性を痛感しました。特に幼児期の発達を考慮しない受験の弊害を目の当たりにしたことが大きな学びでした。
――本を書いたきっかけと執筆を通して気づいたことなどがあれば教えてください。
狼侍:情報を体系化して発信するなかで、SNSや有料noteだけでは新しい読者にすべてを伝えきれないことに限界を感じていました。そんななか、出版のお話をいただき、情報を再整理するよい機会だと思いました。
執筆ではnoteを見直しつつ、新しい内容を盛り込み、特に第1章を新たに書き下ろしました。これまで断片的だった情報がまとまり、新しい読者にもわかりやすい形になったと感じています。小学校受験の分野で体系的な情報が少ないなか、少しでも役立てばと思っています。
学校選びの重要な要素
――早速、令和の小学校受験事情について伺えればと思うのですが、最近「ワーママが小学校受験に参入」という記事を見かけました。最近の小学校受験の傾向について教えてください。
狼侍:共働き家庭が増えた影響で、親の負担を減らすサポートが充実してきています。たとえば、アフタースクールや学童の設置、給食の提供など、これまで伝統的な学校では考えられなかった取り組みが増えています。
これにより、親御さんの選択肢も広がっています。また、中学受験の過熱を背景に、小学校受験でも付属中学や偏差値を意識する動きが見られるようになりました。このように、従来よりも「学力」や「サポート」が学校選びの重要な要素になってきています。
「共働き」「シングル」…家族構成に有利・不利はある?
――著書では「縁故」の正体についても触れられていますが、たとえば家族構成で、「共働き家庭だから不利」とか「シングルマザーやシングルファーザーだと不利」のようなことはあるのでしょうか?
狼侍:保育園や幼稚園と同じで、家庭の形態自体が不利か有利かという話ではないと思います。ただ、学校側が心配しているのは、純粋に「子供と関わる時間がきちんと取れるかどうか」という点ですね。
それは宿題の管理や日常的なフォロー、心のケアも含めて、家庭としてどれだけきちんと対応できるかが見られています。
つまり、すべてを学校に丸投げするのではないか、ということですね。中学校や高校でもそうだと思いますが、小学校の場合、特に私学が重視しているのは、教育は「学校と家庭の両輪」で成り立つという考え方です。たとえ共働き家庭であっても、限られた時間のなかできちんと子供と向き合う覚悟を持っているかが問われています。
――具体的にどのような「心配」があるのでしょうか?
狼侍:なにかトラブルが起きたとき、たとえば災害や緊急事態の際にどう対応するのかが重要です。
たとえば、「両親が長期間出張で不在で、誰も子供を迎えに来られない」という状況は難しいですよね。でも、「近くに祖父母が住んでいて、サポート体制があります」など、なんらかの具体的な対応策を示すことができれば問題ないのです。
学校側が抱いている「心配」というのは、純粋に物理的な問題への心配です。たとえば、トラブルが起こったときに子供が自宅まで10~20キロも歩いて帰ることなんて現実的ではありません。
そういった「心配」に対して、きちんと「このように対応します」という姿勢を示せば、家庭の形態そのものは不利とは見られないと思います。
――SNSでも、「うちは共働きだけれど大丈夫かな?」と心配をする親御さんが多いです。プレッシャーを感じる質問も多いという声もありますが、実際はどうでしょうか?
狼侍:多くの場合、学校側の純粋な心配に過ぎないと思います。それを必要以上に「1人親だから不利なんだ」「専業主婦の家庭に比べてうちは不利」と受け取ってしまうのは、少し過剰な反応かもしれません。
ですから、あまり気にしすぎず、むしろ解決策を冷静に提示することが大切だと思います。
「紺のスーツを着ていないと落ちる?」
――先入観や噂に振り回されないことが大事なのですね。時々話題になる面接時の服装についても伺えればと思います。小学校受験というと親御さんは紺のスーツを着ている印象があります。なにかルールのようなものがあるんでしょうか? 紺のスーツを着ていないと落ちる、とか。
狼侍:確かに、面接会場を見ると紺のスーツが多いですよね。ただ、それがどこから発信された情報なのかは正直わかりません。リクルートスーツのような現象と似ている気がしますね。
誰が言い出したのかもわからないけど、「とりあえずこれにしておけば無難」という流れで広まっているのでしょう。
もちろんなかには違う服装の方もいらっしゃいます。でも、そういう方が目立ってしまうんです。それが許容できるかどうかという話だと思います。
――確かに、就職活動のリクルートスーツの現象と似ていますね。
狼侍:周りに合わせておけば問題ないという点で、特に深く考える必要もないのかなと思います。男性なら黒や紺のスーツで十分ですし、そこであえて自己主張する必要もないと思います。
さらに言えば、スーツの色なんて、持っているなかから選ぶだけの話ですよね。そこに「どうしてもこれを着たい」という反骨心を持つのは、集団生活を送るうえでどうなのかと思います。場合によっては、「この場ではこれに従っておくべき」というルールに乗っかる柔軟性も必要です。
――「小学校受験は親の受験」と言われていますが、改めて親が意識したいことをお聞かせください。
狼侍:特別なことではないと思います。本にも書いたかもしれませんが、先生方は敬意を持って接するべき存在ですよね。教えを受ける立場として、最低限の礼節を持つのは当然のことです。
特に、小学校受験のような選抜の場では、必要以上に構える必要はありません。当たり前のことを当たり前にやるだけです。
もしその当たり前のルールに違和感を感じるのであれば、その世界は自分には合っていないのかもしれません。それが悪いということではなく、単に相性の問題だと思います。無理に踏み込まず、「ああ、こういう世界もあるんだな」と理解すればいいだけです。
THE GOLD ONLINE編集部
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