年金月7万円の80歳女性、相続税の税務調査で〈追徴税400万円〉を課されて悲鳴!かと思いきや…調査官に“涙を流して感謝”したワケ【税理士の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月2日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
税務調査は、税務申告者の約5人に1人が対象となります。そのうち8割以上はなんらかの“申告漏れ”を指摘されて追徴税を課されることから、税務調査に対してネガティブなイメージを持っている人は多いでしょう。しかし、なかには追徴税を課されたにもかかわらず、調査官にお礼を言う人も……いったいなぜなのでしょうか。税理士の宮路幸人氏が、税務調査の具体的な事例をもとに解説します。
税務調査で多額の追徴課税発生も、Aさんが「感謝」したワケ
夫と中華料理店を切り盛りしていたAさん
80歳のAさんはかつて、夫とともに中華料理店を営んでいました。昔はそれなりに繁盛していたものの、数年前から近隣に中華の大手チェーン店が出店したことにより、客足が減少。それからは、ほとんど利益が出ていない状況が続いていました。
3年ほど前、Aさんが77歳のとき、年齢もあって店は閉業。夫婦で相談して店舗を売却しました。その1年後、夫は帰らぬ人に。
それからのAさんは、月約7万円の国民年金と店を売却したときのお金で1人でほそぼそと暮らしていました。
そんな日々が2年ほど続いたある日のこと、税務署から電話がかかってきました。聞けば、「相続税調査に伺いたい」といいます。しかし、Aさんが相続した財産といえば、自宅とお店を売却したときの預金の残りぐらいのもの。
「なんでウチに?」
不思議に思ったAさんでしたが、飲食店を経営しているときに税務調査を受けた経験から「税務署に逆らってもいいことはない」と感じていました。そのため、内心は嫌々ながらも素直に税務調査を受けることにしたそうです。
税務調査の結果「400万円」の追徴課税…しかし、Aさん「ありがとう」のワケ
そして、調査当日。2人の調査官が、Aさんのもとを訪れました。調査は和やかな雑談から始まりましたが、午後になり質問は核心に迫っていきます。
調査官「ご主人の預金通帳を確認しますと、現金をご自宅かどこかに保管されているように思えます。心当たりはありますか?」
Aさん「まさか! そんなお金があったら、こんな質素な暮らしはしませんよ」
調査官「銀行に確認したところ、貸金庫があるようですが」
Aさん「あぁ、でも私は一度も見たことないです。夫からは『家の権利証と家系図を入れている』と聞いていただけなので」
調査官「なるほど。では、恐れ入りますが貸金庫を確認させてください。案内していただけますか?」
調査官「追徴税です」→Aさんの意外すぎるリアクション
その後、調査官とともに銀行に行き貸金庫を開けてもらったところ、なんと貸金庫のなかに1,500万円もの現金が。どうやら飲食店が繁盛していたころ、夫がこっそりと貸金庫に現金を隠していたようでした。
この結果、相続税本税のほか、加算税と延滞税を含めた400万円ほどの追徴税を課されたAさん。
しかし、見つかった1,500万円から追徴税を賄えるうえ、残り1,000万円以上はすべて自分のものです。
Aさんは、相続税調査がなければ存在を知らなかった“思わぬ臨時収入”に大喜びしました。
「こんなお金があるなんて知らなかった……。お父さん、なんで教えてくれなかったのよ。お兄さんたち、見つけてくれて本当にありがとうねぇ……」
Aさんは、涙を流しながら調査官たちに感謝したのでした。
税務署が「貸金庫の現金」の存在を突き止めたワケ
税務署はいったいなぜ「貸金庫の現金」の存在を把握していたのでしょうか?
税務署は、相続があった場合、亡くなった人の銀行口座を10年ほど遡って調べることができます。そのため、毎月どれくらい出費があるかは、通帳の数字からおおむね把握できる、というわけです。
たとえばある月に生活費以外で(たとえば100万円単位での)多額の入出金があった場合、そのお金の出所や使い道、保管場所を探し当てます。
貸金庫だけじゃない…富裕層が“お金を隠す”驚きの場所
国税庁は毎年調査の概要を公表しており、令和5年度の報告で次のような隠し場所と現金の使い道が公表されていました。
【現金の隠し場所一覧】
- 天井裏
- 銀行の貸金庫
- 階段下収納
- 蔵に置かれた木箱
【不正資金の使い道一覧】
- 高級車両の購入
- 有価証券等への投資
- 暗号資産の購入
- 競馬や海外カジノ・ネットカジノ等のギャンブル
- 飲食等の交際費・遊興費
※出所:国税庁「令和5年度 査察の概要」
税理士の筆者も実際、自宅の金庫にかなりの大金が保管されていたケースに遭遇したことがあります。一般的に、自分の目の届くところに現金を置いておきたいという意識が働くようです。
現金は“グレーゾーン”?…貸金庫に預けられるもの
最近、銀行員の不祥事で話題の貸金庫ですが、どのようなものが貸金庫に預け入れられるのでしょうか? 三菱UFJ銀行の貸金庫格納規定をみると、貸金庫に格納できるものとしては下記の4点となっており、このなかに現金は含まれていません。
1.公社債券、株券その他の有価証券
2.預金通帳・証書、契約証書、権利書その他の重要書類
3.貴金属、宝石その他の貴重品
4.1.~3.に掲げるものに準ずると認められるもの
一方で、貸金庫に格納できないものは「危険物や変質、腐敗のおそれがある等、保管に適さないもの」となっており、こちらにも現金もありません。このため現金は、貸金庫に入れていいとも悪いとも言い切れない “グレーゾーン”といえます。
とはいえ、税務署では貸金庫も重点的に調査されています。存在を知っている場合には、相続発生時にきちんと確認するようにしましょう。
タンス預金は違法ではないが…
タンス預金は、それ自体は違法でもなんでもなく、相続発生時にきちんと申告すれば問題はありません。
しかし、自宅や貸金庫などに多額の現金を置いておくと、犯罪の可能性が高まるほか、発覚時に相続人間でトラブルとなるケースもありますので、あまりおすすめできません。
また、現金を故意に申告しなかった場合、その事実が税務調査等で発覚すると、過少申告加算税・延滞税といったペナルティが課せられます。
悪質な財産隠ぺいと認められた場合は、過少申告加算税や延滞税に加え、重加算税が課されるほか、相続税法違反として、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金等の刑事罰を受ける可能性もあります。
税務調査の可能性も考慮し、本人がタンス預金をしている場合には相続を見据えて適切に管理するほか、身近な人物がタンス預金や貸金庫契約をしている場合は相続発生時に中身をしっかりとチェックし、適切な申告を心がけましょう。
宮路 幸人
多賀谷会計事務所
税理士/CFP
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