人生の最期は自宅で迎えたい…ニーズが高まる<在宅診療>を支える現場の工夫
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月1日 8時0分
(画像はイメージです/PIXTA)
訪問看護利用者数は年々増加傾向にあり(※)、在宅診療の現場からは「人生の最期は自分の家で迎えたいと考える人が増えている」という声が聞かれます。患者さんに良質な在宅医療を提供するためには、診療に携わる一人一人が自身の業務に全力を注げる体制を整えることが重要です。本記事では、在宅医療における理想のチーム体制を、実際の例をもとに詳しく解説します。(※参考 在宅医療の現状について|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000909712.pdf)
訪問診療の基本体制
ここまで、クリニックの概要を決定する際に必要な視点を中心に解説してきましたが、ここからは、実際の医療の提供体制について解説していきます。
私がおすすめする訪問診療の体制は、医師1名、看護師1名、訪問診療アシスタント1名で構成する3人一組のチーム体制です。
私たちのクリニックでは、医師と看護師の訪問診療に同行するスタッフを「訪問診療アシスタント」と呼んでいます。診療に赴く際は原則この体制になりますが、訪問診療アシスタントの人員が不足しており、かつ看護師が確保できる状況の際には、医師1名看護師2人という編成に臨機応変に変更することもあります。
医師、看護師、訪問診療アシスタントによるチーム体制のメリット
この1:1:1の編成にたどり着く以前は、看護師が車の運転手を兼任しながら、医師1名、看護師1名の2名をチームの基本単位とし、1台の車で患者さんの自宅を回っていました。しかしこういった体制は、たとえば看護師が勤務時間外のオンコール対応等により、前日に十分な睡眠時間を確保できていなかった場合、安全リスクが高まるという問題が生じます。
さらに、車内での移動中は、直前に診た患者さんの処方箋を薬局に送ったり、カルテを書き足したり、次の患者さんのカルテの確認作業を行う貴重な時間です。それらすべてを医師1人でこなすのは至難の業ですが、直接的に診療に携わることのないスタッフ(訪問診療アシスタント)が運転を担うことで、移動中に行うべき作業を医師と看護師が効率的に行うことができるようになりました。
訪問診療アシスタントの役割
私たち医療法人グループにおける訪問診療アシスタントの役割を解説します。無論、クリニックの診療形態によって医療職でない現場スタッフに求める仕事は異なりますが、当法人の例から、どのような業務を任せられる人材が欲しいのか、具体的に考えるきっかけになればと思います。
訪問診療アシスタントの業務
車の運転
第一に、当法人が訪問診療アシスタントに求めるお仕事は車の運転です。これは先述の通り、医師と看護師と一緒に患者さん宅を回るためですが、単に車の運転ができるだけでなく、「迷わず正確な目的地にたどり着く」スキルも必要です。
もちろん、ナビでおおよその場所はわかるものの、初診訪問の際には、この家なのか、もしくはその隣なのか、はたまた裏側の家なのか、患者さん宅の正確な位置が分からないといった状況が生じることも少なくありません。対処法のひとつとして、契約等で事前に患者さん宅に伺った際、家の外観や駐車場の様子を撮影した写真をカルテに載せておくことをおすすめします。
医療事務
2つ目は、患者さん宅に出向いた際に行う必要書類の手配や授受、保険証の確認、月に1度の集金等をはじめとした医療事務の仕事です。ほかには、予防接種を希望するかの確認等も診察アシスタントの業務です。そうした事務処理を担当するスタッフを配置することで、医師や看護師が治療行為に専念することができるため、治療の精度の向上に繋がります。
診察補助
3つ目は、診察補助です。たとえば患部の撮影をする際は、患部が見えやすいように医師と看護師が患者さんの体勢を支え、アシスタントがスマホで写真を撮ります。背中を診察する際は、患者さんが横になれるよう介助することもあります。
クリニックとの連絡
4つ目は、現場とクリニックとの橋渡し業務です。私たちのクリニックは、定期的に診療へ出向く「定期訪問」という診療形態を基本としていますが、その他に1日10~15件ほど臨時の往診が入ります。
臨時往診が入ると、どの医師がどの現場に行くかスケジュール調整がクリニックで行われ、訪問診察中の診療チームに緊急で連絡します。その際連絡が入ったチームの訪問診療アシスタントは、診療で手が離せない医師、看護師にかわって「このような往診依頼が入りましたが、行けますか?」といった確認をし、クリニックに返信する連絡係を担います。さらに、訪問診療を終えてクリニックに戻ると、物品管理や、訪問スケジュール調整を行います。
体力ときめ細やかな配慮の両方が求められる
このように、訪問診療アシスタントの業務は多岐に渡ります。訪問診療アシスタントを配置することで、医師と看護師は、目の前の患者さんに集中することができ、良質な医療を提供することができるのです。訪問診療アシスタントは、状況に応じたきめ細やかな対応が求められる一方、運転や診察補助など、体力が求められる仕事もこなさなければなりません。そのため、私たちは新規に訪問診療アシスタントを採用した場合、少なくとも最初の1ヵ月は先輩アシスタントの診療に同行しながら仕事を覚える研修期間を設けています。
訪問診療アシスタントとして身に着けた知識や経験は内勤の事務にも役立つため、なかには訪問診療アシスタントで培った経験を生かして、地域連携室などで活躍するスタッフもいます。
野末 睦 医師、医療法人 あい友会 理事長
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