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死ぬまで開けるな…95歳亡父の遺言、「銀行貸金庫」に眠る真実。年金暮らし・老後不安の65歳息子が目にした「巨額の富」【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月6日 10時45分

死ぬまで開けるな…95歳亡父の遺言、「銀行貸金庫」に眠る真実。年金暮らし・老後不安の65歳息子が目にした「巨額の富」【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

三菱UFJ銀行で発生した貸金庫窃盗事件は、貸金庫の安全性に対する人々の不安を掻き立てました。しかし、貸金庫にまつわる問題は窃盗だけではありません。相続が発生した場合、貸金庫の開扉は複雑な手続きを伴い、思わぬ事態を招くことがあります。本記事では郷さん(仮名)の事例とともに、貸金庫のメリット・デメリットと現代の相続における注意点について、FP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

あまり時間が残されていない父

大企業の地方支店に勤務していた郷英二さん(65歳/仮名)は、定年退職を迎え年金生活になりました。

退職後、時間にゆとりができた郷さんは、これまであまり会いに行くことができなかった介護施設に入居している95歳の父のもとへ足を運ぶようになります。父は認知症が進んでおり、郷さんのことを認識できない様子。それでも、残り少ない時間を大切にしたいと考え、通い続けていました。

一方で、3人の子供たちが次々に浪人と留年をしたことで独立までに時間がかかり、郷さんは十分な老後資金を準備できないままリタイア生活を迎え、不安を抱えていました。

認知症が進んでも、父が頑なに言いつづけてきたこと

そんなある日、父の容体が悪化し介護施設から病院へ移ることになります。1週間が過ぎたころ、病院から連絡があり、郷さんは父の最期を見届けました。

葬儀を終えて初七日が過ぎ、姉と父の遺産の整理と相続について話を始めました。そこで2人は、父に「自分がこの世を去るまでは絶対に開けるな」と言われていた銀行の貸金庫について考えます。

「一体なにを入れたのか……」

父が亡くなったあと、姉とともに貸金庫を開けるために銀行に電話をしました。すると、金庫の開扉には相続人全員の同意が必要だと説明を受けました。そこで相続人を確定させるために、父の出生から死亡までの戸籍謄本を取得します。すると、郷さんと姉には「腹違いの兄」の存在が判明しました。

父が隠したかった事実を知った郷さんと姉は、お互いに顔を見合わせました。

わからない法定相続人

父と郷さんの腹違いの兄とは、郷さんの母と再婚してからは会っていなかったようで、連絡も取れません。

司法書士に調べてもらうと、兄はすでに他界していることが判明しました。しかし、その兄には5人の子供がいることがわかります。郷さんはその全員から同意をもらう必要がありました。

住所を調査して手紙を送りますが、なかなかスムーズに進みません。やっと返事が来た1人を通じて、なんとか5人の相続人から了解を得ることができました。郷さんに貸金庫を開けるときが来ます。

ついに開いた父の貸金庫

ついに貸金庫を開けた郷さん。そこには、首都圏にある土地の権利書が保管されていました。坪数は30坪と小さな土地ですが、道路に面しており、非常に立地のよい1億円以上の価値のある土地でした。父と腹違いの兄とのあいだにどんな過去があったのかはいまとなってはわかりません。

しかしこのような結果を鑑みるに、もしかすると父は、土地の価値が将来的に上昇することを見越していた可能性もあります。自分が亡くなってから相続させるほうが、より多くの遺産を子供たちに残せると考えていたのか……。亡くなった父に確認することはできませんが、認知症が進んで我が子すら認識できなくなっても資産を守り抜いた父を思うと胸が熱くなりました。

父が遺した予想外の資産に喜んだ郷さん。もともとないものだと思っていただけに、姉や5人の子供たちと争うこともなく、協議はスムーズに進みました。ほかの資産も含め、均等にわけ合うことで話はまとまります。

貸金庫を開けるまでに3ヵ月もの月日と調査費用を要したものの、郷さんは父の思わぬ遺産に感謝の気持ちを抱きました。

貸金庫のメリット・デメリット

貸金庫は、土地の権利書などを確実に保管しておくことができるといったメリットがあります。

一方で、昨今話題になった銀行員による貸金庫の中身の窃盗事件や、相続にまつわる場合には問題が起きるケースもあります。また今回の事例のように、相続人同士が連絡を取りにくく、多大な労力や調査費用が発生するだけでなく、法定相続人の特定に時間がかかると、遺産分割協議が遅れ、時価が下がるリスクも潜在しています。

さらに、土地のまま保有していると、一度名義変更してから売却するなどの手間も発生します。買取り先の不動産会社によって買い取り価格も大きな差が出るため、生前に信頼できる不動産会社に売却し現金化することで、貸金庫の利用料を支払う必要がなくなる場合があります。

このようなリスクを避けるためには、事前にほかの相続人の存在や連絡先を子供たちに共有し、遺言書を遺しておくことが重要です。

資産の管理・保全には適した金融商品、手段を考慮する

今回は貸金庫を利用し遺産を遺そうとし、子供たちが苦労してしまうという結果になった郷さんの事例を紹介しました。郷さんのケースでは時間を置いたことにより資産価値が上がり、結果としては幸運だった例といわざるを得ないでしょう。資産の管理・保全には適した金融商品、手段があり、それぞれのメリット、デメリットを考慮しなければなりません。

たとえば、2024年に改正され話題となったNISAは税制優遇が大きな魅力ですが、相続時の手続きが煩雑になることがあります。相続の手間を考えると、生命保険のほうが適している場合もあるのです。

税制面や法的な面、コスト面など、さまざまな角度から考慮し、自分にとって適切な商品を選んでいきましょう。  

小川 洋平

FP相談ねっと

CFP

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