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〈世帯年収1,400万円・貯金3,500万円〉子のいない59歳共働き夫婦、湾岸タワマンで“幸せな老後”のはずが…夫の急逝で「海外帰りの義弟」と修羅場に→84歳義母の「ひと言」に拍手喝采【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月11日 11時15分

〈世帯年収1,400万円・貯金3,500万円〉子のいない59歳共働き夫婦、湾岸タワマンで“幸せな老後”のはずが…夫の急逝で「海外帰りの義弟」と修羅場に→84歳義母の「ひと言」に拍手喝采【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

湾岸にあるタワマンで仲良く暮らす59歳の共働き夫婦。しかし、夫の急逝により1人のこされた妻のもとに、ほとんど面識のない「海外在住の義弟」が現れ、“驚きの要求”をしてきたのです……。FPの山﨑裕佳子氏が具体的な事例をもとに「遺産相続」の注意点について解説します。

世帯年収1,400万円…「遺跡巡り」が趣味の仲良し夫婦

佐々木マサル・ヤスコさん夫婦(仮名・59歳)は、高校時代の同級生です。同窓会での再会後に交際へ発展した2人は、28歳のときに結婚しました。それ以降、夫婦共働きでありながら、良好な関係を保っています。

妻のヤスコさんは貿易会社で事務課長を務めており、昨年の年収は600万円でした。一方、夫のマサルさんは中堅商社の営業職で、年収は800万円ほど。佐々木夫妻の世帯年収は1,400万円です。

2人とも結婚当初から子どもを望んでいましたが、長い不妊治療を経ても、希望は叶いませんでした。35歳を過ぎたころ、「子どものいない人生でもいいじゃないか。2人だからこそできることを精一杯楽しもう!」と、夫婦だけの生活を前向きに歩んでいくことを決断しました。

そして、40歳のときに東京湾岸エリアのタワマンを共有名義で購入。59歳の現在、住宅ローンは間もなく完済するというところです。

働き者の2人は結婚して以来、負債は住宅ローンのみという堅実な家計を築いてきました。それでも金銭的に余裕があったことから、夫婦は共通の趣味である「遺跡」をめぐる旅にお金を使おうと、長期休暇を利用して年に2回は国内外の名所に足を運んできました。

こうした比較的ゆとりのある暮らしぶりで、佐々木家の預金残高は59歳の時点で3,500万円となっていました。

60歳目前のある日…夫婦に訪れた「悲劇」

マサルさんの還暦を3ヵ月後に控えたある日のことです。マサルさんはヤスコさんに次のように言いました。

マサル「ちょっと、いいか? もうすぐ住宅ローンの返済も終わるしある程度の蓄えもあるから、思い切って60歳で退職しようと思うんだ。どうかな?」

ヤスコ「あら、いいじゃない。これまで一生懸命働いたんだもの。じゃあ私も60歳になったらフラダンスを習おうかしら。実はずっとやりたかったの」

マサル「フラダンス!? いいじゃないか!」

マサルさんの勤務先は、65歳まで再雇用で働けることになっていますが、マサルさんは60歳で完全に仕事を辞め、老後を謳歌しようというのです。夫の考えに、妻は二つ返事で了承。夫婦は、互いを尊重しながらも、退職後の生活に心を躍らせていました。

しかし、その2ヵ月後、夫婦に“思わぬ悲劇”が襲いかかります。マサルさんが、「くも膜下出血」により急逝してしまったのです。

葬儀にやってきた「海外帰りの義弟」から“驚きの要求”が

マサルさんは60歳の誕生日を迎えることなく、この世を去ってしまいました。

あまりに突然のことにヤスコさんは呆然。家事も仕事も手につきません。義母と義弟夫婦に連絡するのがやっとです。あとは葬儀社に言われるがまま、バタバタと通夜・葬儀を執り行いました。

その後も涙すら出ず、茫然自失状態のヤスコさん。しかし、葬儀から1週間後、義弟のタカフミさんから次のように持ちかけられました。

タカフミ「僕ら、そろそろ戻らないといけないんだよね。兄さんの遺産の話をしてもいいかな?」

ヤスコ「遺産、ですか……」

タカフミさんは、海外赴任先のシンガポールで働いており、葬儀のために妻を連れて一時帰国していたのです。

「突然『遺産』と言われても……」

義弟の言葉に困惑したヤスコさん。これまで遺産や相続についてきちんと調べたことがありませんでした。義弟の言葉を受け、初めてマサルさん名義の資産を計算してみると、1,500万円の預金と500万円の有価証券、あとはヤスコさんと共有名義で購入したいま住んでいるマンションが「遺産」と呼べるものであるとわかりました。

しかし、ここでヤスコさんは、「遺産は配偶者と子どもがもらうもの」と親が言っていたことを思い出しました。さらに、義弟は生前マサルさんとほとんど連絡を取っておらず、不仲とも聞いています。

「失礼ですが……、タカフミさんには、遺産をもらう権利がないのではないですか?」とヤスコさんが恐る恐る尋ねると、義弟は逆上。

「兄さんとヤスコさんには、子どもがいないんだろ? なら、兄さんの遺産は俺たちも貰う権利があるはずだ。あなたと僕で遺産は半分ずつ。これでいいよね? 1人になったんだし、どうせならマンションも売って現金にしたらどう?」

タカフミさんは、傷心のヤスコさんに詰め寄ります。

「落ち着いて話しませんか」とヤスコさんは消え入る声でなだめますが、タカフミさんの耳には届かない様子です。

子どもがいない夫婦の場合、義弟の遺産相続権は?

「夫との思い出が詰まった家を売らなきゃいけないの……?」

義弟の言葉でなにが正しいのかわからなくなったヤスコさんは、まず知り合いのファイナンシャルプランナーに相談することにしました。

するとそのFPは「法定相続人」のキホンについて下記のように教えてくれました。

FP「法定相続人とは『遺産相続の権利があると法律で定められた人』のことです。法定相続人には相続順位が定められています」

ヤスコさん「なるほど。義母やタカフミさん(義弟)にもマサルさんの遺産をもらう権利があるのね……」

FP「いえ、全員に相続権があるのではありませんよ。上位の順位に該当者がいない場合に、順次、下位の順位の相続人に相続権が移っていきます。

今回の場合、配偶者のヤスコさんは常に相続人です。そして、第1順位の「子」はいらっしゃらないため、相続権は第2順位の「親」に移ります。マサルさんのお母様はご存命とのことですので、相続権は第2順位までで、第3順位の兄弟姉妹には相続権がありません」

法定相続割合どおりに分割すると、マサルさんの遺産の2/3をヤスコさんが、1/3を義母が相続することになります。ただし、相続割合は遺産分割協議にて法定相続人全員が納得すれば、任意で決めることができます。

「つまり、現状だとタカフミさんに遺産を受ける権利はないってことなんですね。なるほど……」

FPに相談後、一連の話をタカフミさんにしたところ、「そんなバカなことがあるか!」と、案の定怒ってしまいました。佐々木夫妻には子どもがいないため、自分にも相続権があるものと思い込んでいたようです。

「わざわざシンガポールからここまで来たのに、一銭も得ずに帰るなんてありえない」と考えたタカフミさんは、往生際悪く騒ぎ立てました。

「いや、遺言書があれば話は別だよな。俺と兄さんは仲がよかったから、きっとあるはずだ!」

タカフミさんは家中を探し回りましたが、もちろん遺言書らしきものは見当たりません。トラブルが長引くのを避けるため、ヤスコさんも法務局の「遺言書保管制度」の利用有無も調べましたが、利用はなかったようです。

そもそもマサルさん本人にとっても、こんなに早く亡くなるつもりはなかったでしょうから、遺言書の準備などしていなかったのでしょう。結局、遺言書は見つかりませんでした。

遺産をもぎ取ろうと奮闘する義弟に、義母が放った「トドメのひと言」

「それなら、話し合いだ! いまから俺が遺産をもらうってことを母さんとあなたに認めさせればいいんだろ!」

遺言書がないことがわかり、無理やり「遺産分割協議」を始めようとする義弟に、隣の部屋で寝ていた84歳の義母も起き上がり、開口一番こう言いました。

「うるさい! あんたが投資で負けた金はもう戻ってこない! 私が死ぬまでおとなしく待ちなさい。そうしたら私の遺産は全部あなたのものになるんでしょう!」

義母は夫を6年前に亡くし、夫の遺産を相続しています。不謹慎ながら、あまりの剣幕に義弟はようやく大人しくなりました。

「……投資?」

ヤスコさんが尋ねても、タカフミさんは顔を真っ赤にして黙ったままです。

あとでわかったことですが、タカフミさんは最近、投資で大きな失敗をしてしまったらしく、遺産で穴埋めできると踏んでいたようです。

結局、マサルさんの遺産について、義母は相続を放棄。マサルさんの遺産は、すべて妻であるヤスコさんが相続することで落ち着きました。

後を絶たない「相続トラブル」…専門家に相談のうえ、冷静に対処を

法務省民事局が行った遺産分割等に関する認知度調査によると、相続の際に相続人間で遺産分割を行った人は約62%。このうち、専門家などに相談せずに、当人同士で相談して分割合意した人は約70%、専門家に相談して遺産分割に合意した人は約23%となっています。

もともと遺産分割や相続の知識があるという人は多くないでしょう。今回のヤスコさんのように、親や兄弟姉妹が亡くなり当事者となったことで初めて問題に直面する人も多く、相続トラブルに発展してしまうケースも少なくありません。

特定の人に財産を相続させたい場合は、「生命保険の活用」や「遺言書」が効果的です。生命保険金は受取人の固有の財産となるため、遺産分割協議から除外されます。

金銭が絡んだトラブルは、それまでの関係が一変してしまうことが少なくありません。トラブルを避けるためには、あらかじめ相続に関する一定の知識を身につけておくことが重要です。また、困ったときは専門家のサポートを受けながら、冷静に対処するようにしましょう。

山﨑 裕佳子 FP事務所MIRAI 代表  

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