市場は「トランプ関税」に委縮しすぎた…今週の米ドル/円は〈152.5~157.5円〉と、引き続き「ドル安」展開か【国際金融アナリストが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月28日 10時15分
(※画像はイメージです/PIXTA)
ここ1ヵ月ほど156円~158円を中心に方向感の定まらない展開が続いていた米ドル/円ですが、先週は一転、米金利の低下を受けて一時155円割れまで反落しました。20日に第2次トランプ政権が誕生し、28日・29日にはFOMC、30日にはECB理事会が控えるなど、重要な金融系イベントが目白押しの今週ですが、米ドル/円はどのように展開するのでしょうか。マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が解説します。
1月28日~2月3日の「FX投資戦略」ポイント
・先週の米ドル/円は、155円台中心に方向感の定まらない展開が続いたが、「トランプ関税」への警戒感が後退したことなどを手がかりに一時米ドル安・円高に振れる場面もあった。
・投機筋のポジションを見ると、過去最高に迫るまで拡大した米ドル買い越しが、先週は縮小した。これは「トランプ関税」関連取引の“行き過ぎ”修正が始まった可能性を感じさせる。
・「トランプ関税」関連取引の“行き過ぎ”修正は基本的に「米金利低下=米ドル安」要因。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は152.5~157.5円で予想。
先週の米ドル/円…「トランプ関税」警戒後退で一時155円割れ
先週の米ドル/円は、155円台を中心に方向感の定まらない展開となりました(図表1参照)。
トランプ氏が正式に米大統領に就任しましたが、関税引き上げは警戒されたほど過激にはならないという見方が強まり、また日銀の追加利上げなどが材料視され155円を割れる場面もありましたが、さらなる続落には至りませんでした。
ところで、過去1ヵ月あまりの米ドル/円は日米の短期金利差との連動が薄れた状況が続いています。
もしも米ドル/円と2年債利回り差との連動が続いていたら、基本的に155円以上に上昇することはなかったでしょう(図表2参照)。
米ドル/円が155円以上に上昇したのは、日米の長期金利、10年債利回り差米ドル優位が拡大したことによるものでした(図表3参照)。
この長期金利差が最近もっとも影響を受けるのが、トランプ大統領の関税政策でしょう。こうした関係がこの先も続くなら、米ドル/円の行方は「トランプ関税」を受けた「日米長期金利差」が最大のカギを握るということになります。
「トランプ関税」リスクの“修正”進む
ところで、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション※は、先週にかけて買い越しが縮小しました(図表4参照)。
※ CFTC統計……ヘッジファンドの取引を反映するもの。[図表4]は円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、加ドルの5通貨で試算。
同買い越しは、この年末年始で過去最高に迫るほど急拡大しましたが、これこそまさに「トランプ関税」による「米金利上昇=米ドル高」リスクの織り込みが主因だった可能性があります。
この状況は、見方を変えれば“買われ過ぎ”懸念が高まっていたということもできます。つまり、「トランプ関税」に関連した取引の“行き過ぎ”懸念が高まっていた可能性がありそうです。
「トランプ関税」関連取引の代表格が、「加ドル売り」です。最近にかけて、投機筋による過去最大規模の加ドル売り越しが続きましたが、これはトランプ大統領がカナダからの輸入関税を25%に引き上げると警告してきたことが主因とみられます。
しかし、この加ドル売り越しは、先週にかけて2週連続で縮小しました(図表5参照)。これは、「トランプ関税」リスクの“反動”=修正が入った可能性を感じさせる動きです。
この見立てが正しければ、「米金利上昇=米ドル高」は限られるでしょう。「トランプ関税は警戒したほど過激ではない」といった要因に市場が過敏に反応すれば、「米金利低下=米ドル安」が広がりやすくなるかもしれません。
今週は、「FRB」や「ECB」など欧米の金融政策発表に注目
さて、今週はFRB(米連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)による金融政策の発表が予定されています。さらに、2024年第4四半期の米GDP速報値など、注目度の高い米経済指標発表も控えています。
こうしたなか、「トランプ関税」関連取引の“行き過ぎ”修正がどれだけ広がるかが、米ドル/円の行方を左右するカギになるでしょう。
「トランプ関税」関連取引の修正は、基本的には「米金利低下=米ドル安」要因ですから、それを踏まえると米ドル/円の上値余地は限られ、きっかけしだいで下落余地が拡大する可能性があります。したがって、今週の米ドル/円は「152.5~157.5円」を予想レンジとします。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
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