もう人生、終わりました…〈年金月20万円〉65歳の定年教員、婚活イベントをきっかけに資産運用に目覚めるも、わずか4ヵ月で〈退職金2,200万円〉が半減「何かの間違いでは?」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月28日 5時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
老後の生活資金となる定年退職金。「大切に貯金しておく」というのが定番でしたが、昨今は長寿化を背景に「少しでも増やそう!」と資産運用に回すケースも珍しくないといいます。しかし定年後に投資デューという人のなかには、想定外の失敗で撃沈するケースも珍しくありません。
真面目に生きてきた65歳元教員「生涯をともにできる人がいれば…」
田中洋一さん(仮名・65歳)。長く教員を続け、60歳の定年後は再任用教員として働いてきました。担当教科の授業のほか、さまざまな校務をこなし、定年後とさほど仕事は変わらなかったといいますが、給与はほぼ半減の月25万円ほどに。さらに管理職含め全員が年下という環境下、面倒な存在と思われぬよう、細心の注意を払ってきたといいます。
――いまどき、すぐに「老害」といわれるので、細心の注意を払っていました。定年後は1年ごとに勤務校も変わるので、精神的につらかったですね
それでも、65歳までは働きたいと思っていたという田中さん。
――年金を早めにもらうこともできましたが、それは避けたかった。無収入になる期間を埋めるためにも、何とか65歳までは働きたいと考えていました
そして、ついに65歳。年金の受け取りを開始し、教員の世界からも引退しました。年金は月20万円強。ひとり暮らしには十分と考えていました。
これまでも教員という肩書に縛られてきたという田中さん。「教員たるもの、人の見本になる生き方をしなければならない」と考え、私生活含めて、決して羽目を外すようなことは一度もなかったといいます。ただ真面目過ぎたという反省があります。教員から引退したら始めたいと思っていたことがひとつ。婚活です。
――結婚相手はもちろん、交友関係を広げたいと思っていました。教員仲間はあくまでも仕事上の関係で、プライベートで付き合っていくような人たちではないなと考えていて。年齢も近い、気軽に話せる友人がいればなと思いますし、さらに生涯をともにできる人もいれば……
タメニー株式会社が50~79歳の未婚男女を対象に行った調査によると、独身ミドル・シニア世代に恋愛・結婚に対する考えとして、「恋人が欲しい」は10.7%、「結婚(入籍)相手が欲しい」は7.1%、「事実婚・同棲相手が欲しい」は3.7%。2割は恋愛・結婚に前のめりです。その理由を尋ねると、男性の1位は「安心・信頼できるパートナーがほしいから」で66.9%。「人生をより充実させたいから」「1人では寂しいから」52.7%、と続きます。
また結婚相手を探すための行動として最も多かったのが「マッチングアプリ」で43.0%。「SNS]22.5%、「婚活パーティ・街コン」が20.4%、「趣味の集まり」19.0%と続きました。いまやミドル・シニア層でも「マッチングアプリ」での出会いは当たり前のようです。
65歳元教員、突如始めた資産運用で「まさかの大胆行動」
田中さんがまず参加したのは、シニアサークル。同世代の交流を深めるもので、まずはシングル限定のランチ会に参加してみたといいます。
――おしゃれな会席が楽しめるお店でした。婚活とともに交流の幅を広げたいという同年代が参加していました。みなさんバックグラウンドが異なるので話はどれも興味深いものでした
特に興味深かったのが、老後の生活設計、それに伴うお金の話。「職業柄、勉強の話はいろいろとしてきましたが、お金の勉強の話はしたことがなかった」という田中さん。そのため金融業界出身という人の話はとても参考になったといいます。
田中さん、イベント後に即、口座開設。65歳にして、初めて投資にチャレンジしようと考えたといいます。
――これまで貯めてきたお金もあるし、さらに2,200万円ほどの退職金もそのまま貯金しています。年金も月20万円ほどあるし、お金に困らないと考えていました。ただみなさん、長寿に備えてしっかりと運用されている。私もまずは真似てみようと考えました
資産運用を行う同年代に触発された田中さん。ここで大胆行動にでます。証券会社の窓口で説明を聞いたあと、気になる株式や投資信託を選び、退職金の全額をつぎ込んだのです。
そのことを話すと周囲は「真面目で安定志向の田中さんが!?」と驚かれたといいます。一方で田中さんは、これまでにない大胆な行動をとる自分に、ちょっと酔っていた部分があったとか。
――これまで想定通りの人生だったので、そこからはみ出していることに、快感みたいなものも覚えて。証券会社の人が勧めてくれたというのもありますし
世の中にはビギナーズラッグもありますが、そんなに甘いものではありません。購入したすべてで損失が出たわけではありませんが収支は大きくマイナス。投資信託は手数料が高く思ったほど儲からなかったといいます。さらに損失を取り戻そうと、信用取引にも手を出してしまい、退職金はあっという間に半分になってしまいました。その間、わずか4ヵ月……。
――何かの間違いではと何度見直したところで、退職金は半分しかない……人生、終わったと思いました
食事会で知り合った人からのアドバイスもあり、これ以上損失を拡大させないよう、田中さんは投資の世界から早々に引退を決めたといいます。
田中さんは、参加したイベントがきっかけで退職金の運用を考えましたが、そもそも退職金が振り込まれると、金融機関から提案を受けることがよくあります。このとき、投資経験のない人ほど、大胆な行動を取りがちなのも、よくある話です。しっかりと投資リスクを理解し、自身がどれほど許容できるか把握することが第一歩。投資商品の簡単な仕組みや、運用コストなど、しっかりと抑えつつ、分散投資を意識して進めていきたいものです。
[参考資料]
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