就職氷河期世代を生み出す一因になった「非正規雇用」が爆発的に増加した4つの理由とは?
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月7日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
「就職氷河期世代」は雇用に至るまでに大変な苦労を強いられた世代です。苦労しても就職できず、正社員としての道を絶たれて非正規雇用に進む人も数えきれないほどいました。そもそも、なぜ正規雇用が減り、非正規雇用が増加したのでしょうか。本記事では、第一生命経済研究所の主席エコノミストである永濱利廣氏による書籍『就職氷河期世代の経済学』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集して、就職氷河期世代を生み出す一因となった「非正規雇用者」増加の背景について、わかりやすく解説します。
1990年代後半から増えてきた非正規雇用
就職氷河期世代は、バブル崩壊後の採用数の減少に直面し、採用ゼロによって希望する企業に応募するというスタートラインにすら立てなくなった学生もいれば、100を超える企業に応募はがきを出しても面接はおろか説明会にすら進めない学生も多く、大変な苦労を強いられることになります。
それにより、正社員としての道を断たれ、アルバイトや派遣といった非正規雇用に進む人も少なくありませんでした。
日本の労働市場では、1990年代後半から非正規雇用の割合が急増していますが、背景にあるのはバブル崩壊後の経済の低迷です。企業が雇用コストを削減するために正社員の採用を抑制し、非正規の雇用を増やしたことが主な原因です。
非正規雇用にも、パート、アルバイト、派遣、契約社員、嘱託といくつもの区分けがあります。
パート・アルバイトは、週の所定の労働時間が短い労働者のことを指します。
契約社員は、一定期間の雇用契約を締結した労働者で、正社員よりは雇用が不安定なのですが、比較的高い賃金を得る人もいます。
嘱託は、特定期間で企業等から業務に携わることを委託される労働者で、社会保険に加入していないケースもあり、雇用としては不安定です。
そして、就職氷河期の問題としてしばしば取り上げられる派遣社員というのは、派遣会社と雇用契約を締結して、派遣先企業で働く労働者です。正社員登用の機会が設けられている場合もありますが、多くは非正規雇用のままで働いています。
就職氷河期世代を生むことにつながった4つの要因
そもそも、なぜこうした非正規雇用が増えたのかというと、理由は4つあります。
1つ目はここまで触れてきたバブル崩壊です。
とはいえ、バブル崩壊直後は一時期、リストラされるよりも、そもそも会社に頼らない生き方を実現するために、積極的に正社員ではなく、今でいう「フリーランス」的な働き方がかっこよく、正社員になって会社に縛られる働き方は古いという流れがありました。
しかし、経済低迷が深刻化すると、先ほども触れたように、企業が人件費の抑制を行うために、日本では正社員の解雇が簡単ではないことから、新卒採用の数を抑制して、代わりに非正規雇用を増やしたというのが最も大きな理由です。
2つ目は技術革新です。
技術革新では、それまで正社員が担っていた仕事の一部が機械化や自動化されると、企業はその分、正社員の数が必要なくなり、賃金水準が低くて労働力調整がしやすい非正規雇用を増やすことになります。
最近話題になっている生成AIが本格的に活用されるようになると、これまで専門家が担っていた仕事でさえ生成AIで代行できるようになるため、これまで以上に正社員の数は減るかもしれません。しかし、かといってその分、非正規雇用が増えるのかということさえ疑問です。
3つ目はグローバル化です。
今に始まったことではありませんが、生産拠点の海外移転が進めば、当然のように国内の雇用は減少しますし、海外からの部品調達などが増えれば、こちらも国内の協力会社の仕事は減ることになります。
4つ目は労働市場の規制緩和です。
日本の場合、いったん正社員として雇用すると、解雇するのはなかなか難しくなります。
そこで正社員を増やさない代わりに「雇用の調整弁」として活用できる非正規雇用者について法律改正などを受けて雇いやすくなったわけです。
つまり、バブル崩壊で不況になった時、バブル期に大量採用した人を初めとした正社員の首を切ることができない代わりに、企業は新規の採用を大幅に減らして、同時に主にシニア層に対して、割り増し退職金を支払うことで退職を促します。
そして、新たに多くの派遣社員などの非正規雇用者を雇い入れることで人の問題を解決しようとしたわけですが、そのことが結果として就職氷河期世代を生むことにつながっています。
結果、就職氷河期世代の人たちは就職活動で大変な苦労を強いられ、運よく正社員になることができた人はともかく、そうでない人はパートやアルバイト、派遣社員といった非正規雇用での就職という道を選ばざるを得なくなったのです。
永濱利廣
第一生命経済研究所
主席エコノミスト
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