世帯年収950万円・貯金1,500万円の50代夫婦、念願の新築マンション購入で「ここに一生住むんだ」と満面の笑みも…わずか2年後、六畳二間のアパートへの引っ越しを断行したワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月28日 11時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
「いつかはマイホームを」そう思っても、生活や教育資金にお金がかかり、その夢に手が届かないという人も少なくありません。また「老後を迎える前にはせめて」と、年を取ってから念願叶って購入したとしても、思わぬ落とし穴にはまることもあるようです。見ていきましょう。
いつかは欲しいマイホーム…みんなは何歳で買っている?
賃貸がいいか購入がいいか。この論争は永遠のテーマともいえますが、やはり結婚や出産で家族が増えたタイミングなどで「マイホームが欲しい」と考える人は多いようです。
実際、世の中の人々は何歳ぐらいで家を購入しているのでしょうか。国土交通省「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」によれば、平均年齢は以下のようになっています。
物件を購入した平均年齢 ・注文住宅…39.5歳 ・分譲戸建住宅…37.5歳 ・分譲集合住宅…39.9歳 ・中古戸建住宅…43.6歳 ・分譲集合住宅…39.9歳 ・中古集合住宅…43.7歳
※国土交通省「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」より
全体として平均は30代後半~40代前半、中古のほうがやや年齢が上がるという傾向にあるようです。
年を取ると返済期間が短くなることから審査が厳しくなると考えられていますし、また、収入が減ってからの住宅ローン返済は負担が大きいため、できれば定年を迎える65歳までに完済するのが理想とも言われています。
「どうせお金を払うなら、早いうちに」そう考えて手持ちが少なくても若くして購入に踏み切る人もいますが、家計に余裕が出てきた50代以降で購入する人もいます。
世代に関係なく住宅購入は完済するまでは「大きな借金」なのでリスクはあるのですが、年を取ってから購入した人ならではの落とし穴があることは知っておいた方がよさそうです。
例えばこんなケースです。
念願のマイホームを購入できたのに…わずか2年で転居へ
加藤良夫さん(仮名・当時53歳)はようやくマイホームを買うという夢を叶えようとしていました。20代前半で結婚、娘が2人。当時、若い夫婦の収入は少なく、日々暮らすのが精いっぱいでした。しかし、2度の転職を経験し徐々に収入はアップ。娘たちも無事私立大学を卒業しました。
教育費がかからなくなったことを期に、そこから数年で貯金を1,500万円まで貯めた加藤さん。妻に「自分たちの家を買おう」と話をしました。娘たちは一人暮らしをして既に家を離れています。そのため、妻と2人で暮らす終の棲家を手に入れたかったのです。これには妻も大賛成。胸を弾ませながら夫婦で物件探しを始めました。
それからしばらくして理想的なマンションを見つけた加藤さん。価格は4,200万円でした。本当はもう少し安い物件を想定していましたが、一目モデルルームを見たら、すっかり気に入ってしまったのです。今の住まいからも近く、環境が大きく変わらないのも魅力的でした。
加藤さんの年収は600万円、妻は350万円、貯金も1,500万円あります。65歳まで働くつもりだし、退職金も出る予定。年齢的にローン期間が短く毎月の支払いは多めですが、なんとか返済していけるのではないか……そう考えました。
「2人で頑張って返済していこう」そう前向きに購入を決めたのでした。
しかし、それから1年ほどして想定外の出来事が襲い掛かります。
加藤さんは、少なくとも50代のうちは年収をキープできると考えていました。ところが、勤め先の会社が新聞に載るほどのトラブルを抱えたことで、業績が急激に悪化。ボーナスが丸々カットとなり、さらに、家族手当や役職手当など見直すと発表されたのです。
加藤さんの給与は、基本給が安くボーナスや手当で大きく上乗せされていました。それまでは普通にもらえていたので意識していませんでしたが、基本給ベースでの支払いになると、その金額は非常に少ないものでした。
不幸はそれだけに留まりません。妻は加藤さんの勤め先の系列会社に勤めていました。同じく業績悪化のあおりを受けて収入ダウン。遠まわしの退職勧奨まで受ける始末でした。
「これ、いつ元に戻るか分からないよ」「戻らないんじゃない?」
「退職金ももらえないと思う」「そもそも、それまで会社が持つかわからないよ……」
そんな不安な会話が夫婦の間で毎日交わされました。
転職活動もしてみたものの、50代半ばというのもあり、なかなか書類選考を通りません。やっと面接を通過しても、退職金はなし。給与も、大幅ダウンした今の会社の収入とあまり変わりません。
ローン返済、管理費や修繕積立金の支払い、老後への不安。仕事の不安定さも相まって、妻は度々体調を崩すように。
先が見えない状態で、ローン負担の大きい家に住んでいることは自分たちにとってマイナスでしかない。そう考えた加藤さんと妻は、まだ新築に近い今の時点で売却することを決意しました。
住宅価格の上昇もあり、買値とほとんど同じ価格で売ることができたのは幸運でした。手放すときには涙したものの、小奇麗な賃貸アパートに引っ越した2人の表情はスッキリ。
「これで住宅ローン破産に怯える必要もない。生活を立て直すところから始めよう」そう話しています。
その収入がずっと続くとは限らない…50代はリカバリーも大変
加藤さんの例でなくても、50代は役職定年などで収入が下がることもめずらしくありません。「ずっと同じ年収」という想定でローン返済の計画をたてるのは危険です。
また、年齢が若ければ一時的に支払いが困難になってもローンの延長をするなど打つ手があるかもしれません。収入が減れば他社への転職も比較的容易でしょう。しかし50代になると、そういったことが難しくなるという実情があります。
子育てがひと段落してから終の棲家を探す場合、あらゆるリスクを考えた上で返済計画をたてた方がよさそうです。
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