こんなことになって恥ずかしい…救急車搬送もゴネる〈87歳独り身の叔母〉。後日、62歳甥が自宅に駆け付けて目にした「まさかの光景」とは?【相続の専門家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月31日 10時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
住み慣れた自宅でいつまでも過ごしたいと思う人は多数います。しかし、年齢を重ねることでトラブルは起きやすく、一人で暮らしていると周りに気づかれにくいことも…相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、最期まで自宅で生活する際に生じる課題と対策案について解説します。
ハキハキと話す80代の叔母
おひとりさま、一人暮らしの悦子さん(87歳・女性)と甥の浩さん(62歳)が2人で相談に来られました。悦子さんは誕生日が来ると88歳ということですが、はきはき話されるし、明るく楽しい方です。
悦子さんは、3人きょうだいの末っ子。長女が浩さんの母親、長男、次女の順です。浩さんの母親はすでに95歳。まだ健在ながら自宅での生活はできなくなり、近くの老人ホームに入所しています。
悦子さんは大学を出てから仕事が決まり、通いやすいところで一人暮らしを始めました。公務員として安定した職場だったということで、定年まで勤めたといいます。来られたときにはお元気そうに見えた悦子さんですが、浩さんが言うには3か月前には警察や救急車を呼ぶ事態となり、大変なことがあったといいます。
待ち合わせに来ない…警察を呼ぶことに
浩さんは一人暮らしの悦子さんの通院に付き添うようにしていました。80代になりひとりで電車やタクシーでの移動に不安があるということで、定期的に悦子さんのサポートをしています。
3か月前も悦子さんと携帯で連絡をして待ち合わせ場所を決めて病院に行く約束をしていたのです。待ち合わせ場所にいつもは元気に歩いて来る悦子さんなのに、待ち合わせ時間になっても現れない。忘れているのかと思い、携帯や家に電話してみるものの電話に出ないのです。
真夏のことなので、暑い中、行き倒れてはいやしないかと心配になり、浩さんは悦子さんの住むマンションまで行き、呼び鈴を押しても、再び電話してみても応答なし。
郵便受けを見ると前日の夕刊がささったまま。浩さんは悦子さんのマンションの鍵を持っていないし、さすがに心配になり、管理人と相談して警察を呼ぶことにしたのです。
救急隊員がベランダから室内へ
程なくパトカー1台と救急車1台が到着。悦子さんの部屋はマンションの中層階ということもあり、消防車、梯子車も到着。まわりは騒然とした雰囲気になりました。鍵を壊して入るのかと思いきや、さすが百戦錬磨のプロ、それは最後の手段らしく、まずは同じ階の住宅を軒並みあたり、在宅の家にお願いして中を通らせてもらって、ベランダの非常隔壁を外しながらベランダ伝いに悦子さんの部屋のベランダに到達。
すると、日頃からの自然志向でエアコンを設置していない悦子さんの部屋のベランダの掃き出し窓は開いていたのです。そして、救急隊員は窓際にへたり込んでいた悦子さんを発見。前日からそこで動けなくなっていたようです。悦子さんの意識は混濁していたものの、応答はできる状態でした。
まさかの搬送を拒否、説得に1時間…
救急隊員が声を掛け続けると、ようやく悦子さんの意識ははっきりして来たものの、まさかのことですが、悦子さんが病院には行きたくないとゴネはじめたのです。「こんなことになって恥ずかしい、、」といいます。
救急隊も本人に意識があって搬送を拒否している場合はそれを無視して搬送はできないということですが、どうみても衰弱していて、普通ではありません。それから浩さんと救急隊員の両方が必死に説得して、1時間近くたった頃、ようやく悦子さんが納得して待機していた救急車で病院に搬送できたのでした。
一人暮らしにはまわりの適切な見守りが不可欠
この間、警察官、消防隊員、救急隊員合わせて10名が待機。自治体の社会支援の手厚さを実感するとともに、大変な社会資源を浪費してしまったことへの申し訳なさを痛感したと浩さんは言います。
「住み慣れた場所でいつまでも……」はとても大切で理想的です。けれども、それを実現するためには、普段からの定期連絡や安全確認、いざというときのための鍵の共有、キーボックス活用など、本人を支える家族、縁者、友人等の適切な見守りが不可欠であることを改めて心に刻みましたと話してくださいました。
もう一人暮らしには戻れない、入院中に老人ホームを手配
浩さんは病院の付き添いや食事をしたりで、毎月のように悦子さんに会ってはいましたが、最近はマンションまで行くことはなく、今回のことであらためて室内に入り、愕然としたと言います。
しっかりものの悦子さんですから、部屋もきれいにしてあるかと思っていたところ、一人暮らしには十分な広さの3DKの室内は、洋服やものであふれていて、いろいろなものが散乱している状態だったのです。米寿を迎える悦子さんは片付けや掃除ができない状態で、このままマンションに戻って一人暮らしは無理だと判断したのです。
幸い、浩さんの母親が入所している老人ホームに空きがあり、すぐに入れる状況でした。そこで、入院中の悦子さんに、「姉と同じ老人ホームで楽しく生活できるから」と説得して決断してもらうようにしたのです。
悦子さんも今回のことは大いに反省し、無理はできないと思ったようで、退院後は老人ホームに入れて、安心できたということです。
自宅マンションが空室に
悦子さんと浩さんが相談に来られたのは、空室になったマンションを売却したいと言うことでした。悦子さんは40年前に新築の分譲マンションを購入し、ローンの返済も終わっています。
老人ホームに住み替えた後は、また自宅マンションに戻って生活することはできず、おひとりさまの1人暮らしは倒れていても発見されなかったり、助けを呼べなかったりと不安がありますので、売却することが妥当だとアドバイスし、売却の仲介をさせていただくことにしました。
立地はいいので売らずに賃貸することも選択肢ですが、築40年のため、賃貸するには間取りや設備をそっくり作り変えるフルリフォームが必要で、費用も時間もかかり、賃貸事業も経験がないということで、選択肢は売却としています。
遺言書も作成しておく
悦子さんのきょうだいはHさんの母親と長男ですが、長男夫婦には子どもがいません。甥の浩さんは一人息子で唯一の次世代なのですが、母親が健在のため、まだ悦子さんの相続人ではありません。
けれども今後、悦子さんの老後のサポートができるのは浩さんしかないのは明白です。よって財産も浩さんに託したいというのが悦子さんの希望です。
これを実現するには遺言書で遺贈をするとする必要があります。マンションの売却を進めながら、浩さんに財産を遺贈することも盛り込んだ公正証書遺言を作成する準備を進めています。
このように、生前に老人ホームへ住み替えられたタイミングで、マンションの売却と公正証書遺言ができることで安心だと悦子さんと浩さんはほっとしていました。安心して長生きして頂けるサポートができ、よかったと思う次第です。
「最後まで自宅で生活」することの課題
独身で一人暮らしを続ける場合、特に「最後まで自宅で生活する」ことにはいくつかの課題があります。相続人がきょうだいの場合、状況が複雑になる可能性もありますので、以下の理由を踏まえ、事前の対策を検討することが重要です。
1.身体的・健康的な問題
●老化による身体能力の低下
年齢を重ねると、階段の昇降や重い荷物の持ち運びが難しくなるほか、転倒やケガのリスクが増大します。
●持病や突発的な病気の可能性
認知症、心筋梗塞、脳卒中など、突然一人での生活が困難になる病気に見舞われる可能性があります。
●緊急時の対応が困難
倒れたり体調を崩したりしても助けを呼べない状況が考えられます。
2.日常生活の維持が困難
●家事や買い物の負担増加
高齢になるにつれ、掃除、料理、洗濯などの日常的な家事が難しくなります。また、買い物や病院への通院も困難になることがあります。
●住宅のメンテナンス不足
一人暮らしの場合、住宅の修繕や清掃が行き届かず、老朽化が進行する可能性があります。
3.精神的な孤独感
●社会的なつながりの減少
高齢になると交友関係が減少し、孤独感やうつ状態に陥るリスクが高まります。
●緊急時の相談相手がいない
悩み事や不安があっても、すぐに相談できる相手がいない場合、精神的負担が大きくなります。
4.財産管理と相続問題
●財産管理の難しさ
高齢になると財産の管理が複雑になり、詐欺被害や誤った管理が起こりやすくなります。
●きょうだいへの相続時のトラブルの可能性
相続人がきょうだいの場合、遺言がないとトラブルが発生しやすいです。また、きょうだいには相続税の基礎控除が少なく、高い相続税が課される場合があります。
5.介護の問題
●自宅での介護は難しい
自宅で介護を受ける場合、設備の整備や介護人材の確保が必要ですが、一人暮らしではこれが難しいことが多いです。
●施設への移行の必要性
最終的には介護施設やサービス付き高齢者住宅など、外部の支援を活用することが現実的な選択肢となります。
対策案
1.財産管理の計画
遺言書や家族信託を作成して財産の管理と相続の準備をしておく。
2.住環境の整備
バリアフリー化や利便性の高い住宅への引越しを検討。
3.早期の介護サービスの活用
デイサービスや訪問介護を早めに取り入れ、生活の補助を確保。
4.きょうだいとの話し合い
遺産分割や介護に関する考え方を共有し、円滑な相続を目指す。
独身で一人暮らしの場合、自分の希望を実現するためにも早めの計画と準備が必要です。
曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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