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貯金2,000万円あるから大丈夫…〈退職金2,400万円〉〈年金夫婦で月21万円〉余裕の老後がみえた60歳サラリーマン、定年退職からわずか6ヵ月で老後崩壊の想定外「何かの間違いでは?」

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月29日 7時15分

貯金2,000万円あるから大丈夫…〈退職金2,400万円〉〈年金夫婦で月21万円〉余裕の老後がみえた60歳サラリーマン、定年退職からわずか6ヵ月で老後崩壊の想定外「何かの間違いでは?」

(※写真はイメージです/PIXTA)

老後、どれほど貯金があればいいのか……多いにこしたことはありませんが、「老後資金2,000万円不足問題」の余波からか、「2,000万円」を目標に頑張る人が多いといわれています。しっかりと貯金がたまり、老後に不安がなければ定年で退職、というケースも。しかし定年後、経済的な懸念がクリアされたからといって、安泰の老後が待っているとは限らないようです。

大手メーカー勤務の男性…60歳定年で仕事を辞めた理由

60歳定年を機に、大手メーカーを退職した森浩二さん(仮名)。同年代のなかでも、定年で会社を辞める人は圧倒的に少数で、多くが再雇用制度を利用し、そのまま働いています。森さんの場合、会社を辞め、そのまま仕事を引退。なぜそのような選択をしたのでしょうか。

――計算すると、もう働かなくても夫婦で生きていけると確証を持てたことが大きかったですね

森さんは持ち家。2人の子どもはすでに独立し、実家を離れています。毎月の支出は夫婦二人の生活費で、娯楽費を含めて平均20万円ほど使っていました。そこで問題になるのが、年金を受け取り始めるまでの生活費。収入がなければそのぶん、貯金から取り崩していくことになります。逆をいうと、60歳定年での完全引退に向けて、5年分の生活費が何とかなるのであれば、第一関門はクリアといったところ。

単純計算、5年で1,200万円。それに対し、森さんがもらえる予定だった退職金は、概算で2,400万円ほどでした。5年分の生活費で半分が消えますが、半分は残ります。

そして年金。ねんきん定期便で確認してきたところ、森さんは月19万円、妻・明美さん(仮名)は月14万円を受け取ることができることがわかりました。夫婦で33万円。手取りにすると28万円ほど。現状の支出額のままかかるとしても、十分暮らしていけます。そして貯金額は2,000万円。一時、「老後2,000万円不足問題」と騒がれましたが、その2,000万円を目標に資産形成を進めてきた森さん。しっかりと目標を達成しました。退職金と合わせると、65歳以降の貯金は3,200万円になります。年金だけで生活できるとなると、あくまでも貯金は万一のためのものであり、そうそう減ることはない……。このような計算をして、60歳以降、無理に働く必要はない、という結論に達したのでした。

【60代の資産額】

■平均:2,588万円

■中央値:1,200万円

資産額額の分布

100万円未満…7.4%

100万~200万円未満…5.7%

200万~300万円未満…5.5%

300万~400万円未満…3.8%

400万~500万円未満…2.4%

500万~700万円未満…9.2%

700万~1,000万円未満…8.4%

1,000万~1,500万円未満…8.7%

1,500万~2,000万円未満…6.8%

2,000万~3,000万円未満…12.0%

3,000万円以上…26.0%

※出所:金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)』

※二人以上世帯、金融資産を保有する世帯を対象とした数値

定年後の夫婦の生活、経済的な懸念はなかったが…

年金の繰上げ受給を選択することにしたという森さん。年金の繰上げ受給は、老齢年金を本来の受給開始年齢である65歳よりも早く受け取る制度。60歳から65歳の間に手続きを行うことで、年金を早期に受け取ることが可能になりますが、その際には年金額が減額。減額率は1ヵ月につき0.4%で、最大24%の減額となります。

なぜ、年金の繰上げ受給を選んだのでしょうか。

――私も妻も繰り上げたら、手取りで月21万円強になる計算です。つまり、60歳からでも年金だけで暮らしていける。年金で生活費をカバーできるなら、退職金も減らすこともなく、万一の際の貯金は4,400万円になる。心の余裕が違いますよね

老後に向けて着々と進めていた森さんですが、実際に定年を迎えてからは波乱続きだったといいます。

まず定年で会社を退職することを妻・明美さんには相談することなく決めてしまい、険悪なムードに。さらに年金の繰上げについても説明しておらず、「何でそんな重要なこと、1人で決めるのよ!」と大目玉をくらったといいます。

さらに極めつけは、妻・明美さんから出てきた離婚話。定年以降、ほぼ家にいる森さんにストレスを感じていた明美さん。小さな喧嘩も絶えないようになり、「もう無理、限界!」と離婚届をたたきつけられました。

――何度、「何かの間違いだろ?」といっても、「もう無理」の一点張りで

離婚となれば、婚姻期間中に築いたものであれば財産分与の対象。マイホームも、さらには年金も対象です。定年からわずか半年しか経っていないタイミングでの急展開でした。

定年から6ヵ月で安泰だと思っていた老後が崩壊するとは思ってもみなかった森さん。「2,000万円の貯金があるから、仕事を辞めても大丈夫」と結論に至った自分を悔やんでいるといいます。

――もう少し老後について一緒に語っていれば、違う展開になったかもしれません

株式会社LIFULLが行った『パートナーとの老後生活に向けた意識調査』によると、老後についてパートナーと話し合ったことがある人は約6割。残り4割は、「話し合ったことはない」と回答しています。またパートナーとの老後の暮らしについて聞くと「できるだけ二人で長く暮らしたい」が76.8%と圧倒的多数である一方、「パートナーと関係を維持しつつ元気なうちから別居したい」は5.9%、「パートナー関係を解消したい」は4.6%。夫婦の1割ほどは老後を前に不穏な空気に包まれているといえます。

果たして、自分たち夫婦は……定年前に確認しておいたほうがいいかもしれません。

[関連資料]

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)』

株式会社LIFULL『パートナーとの老後生活に向けた意識調査』

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