北海道の森林を取得している国の第1位が「サモア」?「タックスヘイブン」だからこそ起こる意外なコト
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月31日 9時0分
(※写真はイメージです/PIXTA)
サモアやカリブ海のバージン諸島はどちらも2つの区分を抱えており、またタックスヘイブンであるという似た境遇にあります。こうした国々で今何が起きているのでしょうか。国際課税研究所首席研究員の矢内一好氏が解説します。
2つに区分される「サモア」「バージン諸島」
サモアは、ニュージーランド、ツバル、トンガ、クック諸島、ニウエのある太平洋のポリネシア地域に位置しています。
サモアは東サモアと西サモアに分かれています。東サモアは現在、米領サモアであり、西サモアはサモア独立国です。サモア独立国の人口は約20万人、米領サモアの人口は4万5,000人となっています。
これと同様の状況になるのが、カリブ海のバージン諸島です。バージン諸島の西側半分は約50の島々からなる米領で、東側半分は約60の島々からなる英領です。英領バージン諸島はBVIという名称で有名なタックスヘイブンです。サモア独立国は1962年1月1日、西サモアとして独立しています。
「米国国籍」を持っていても「市民権」を持たない米領サモア
各国の所得税では、個人を居住者と非居住者に分けて、国内に住所あるいは居所を有する個人を居住者、それ以外の外国に居する様な個人を非居住者としています。
この区分は、課税所得の範囲に影響するもので、居住者は原則として全世界所得課税、非居住者は国内源泉所得のみ課税となります。なお、国によっては、居住者の課税所得の範囲を国内源泉所得としている国もあります。
米国は上記の居住者あるいは非居住者という区分ではなく、市民権を有している個人について、その住所地に関わらず、全世界所得を課税所得の範囲にしています。そこで、米国国籍と市民権の相違が問題になります。
実際は、米国国籍の個人は米国市民権を有しています。厳密には米国国籍ですが、米国市民権を有しない個人が存在します。
米領サモアの住民は米国国籍を有しますが、市民権を持ちません。米国属領である、プエルトリコ、北マリアナ諸島(サイパン)、グアム、米領バージン諸島の住民は、市民権を有しています。
対中国投資の多い国サモア独立国
サモアは、対中国投資が多いことで知られています。EUが公表した最新のブラックリスト国で、オフショア所得軽課税国です。
日本との関係では、北海道の森林を取得している国として、サモアが第1位、中国・香港が第2位となっています。この森林取得をするサモア法人は、中国などのダミーです。
国内で営業する居住法人は税率27%で、全世界の所得に対して課税されます。非居住法人は国内源泉所得のみに課税されます。
タックスヘイブン「英領バージン諸島」
英領バージン諸島(BVI)は、カリブ海の西インド諸島にあるイギリスの海外領土(自治領)で、人口は約3万人です。税制は全所得軽課税国等に該当するタックスヘイブンとなっています。
中国本土企業は、香港の会計事務所等の仲介により、BVIに簡単に法人を設立することができます。中国への対外直接投資(2016年)の比率では、①香港58.2%、②米国8.7%、③BVI6.3%、④シンガポール1.6%、⑤ケイマン諸島6.9%です。この数字からも、BVIとケイマン諸島がいかに利用されているかということがわかります。
旧日英租税条約の適用廃止
昭和37年に署名した日英租税条約第22条には同条約の適用拡大に関する規定があり、交換公文により次の地域にこの日英租税条約が基本的に適用されることになりました。適用拡大した地域は、①英領バージン諸島、②フィジー、③モントセラット、④セーシェルです。
昭和44年改正の第2次日英租税条約発効後も、日英租税条約の適用地域拡大の規定は有効でした。昭和57年にセーシェルの適用終了、平成12年に日英原租税条約の適用拡大地域とされていた英領バージン諸島およびモントセラットに対する同条約の適用を終了する旨を日本からの通告されました。
これにより、平成13年1月1日以後に開始する各課税年度の所得および各賦課年度の租税について日英租税条約はその効力を失うことになり、フィジーだけが日英原租税条約の適用の継続となっています。
BVIは、日本とは租税情報交換協定が平成26年6月に署名され、同年10月に発効しています。また、OECDにより進められた金融口座情報自動的交換報告制度(AEOI)は、脱税および租税回避の防止を目的として、非居住者の金融口座情報をその者の居住地国の税務当局に通知する制度ですが、BVIはこれに参加しています。したがって、日本居住者である個人は、BVIに預金等を所有していると国税庁にその通知が来ることになっています。
国際課税研究所首席研究員
矢内一好
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