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貿易会社なら、法人税わずか「3%」…マレーシアのタックスヘイブン「ラブアン」の魅力【税金のプロが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年1月31日 23時0分

貿易会社なら、法人税わずか「3%」…マレーシアのタックスヘイブン「ラブアン」の魅力【税金のプロが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

日本との時差わずか1時間、親日国として知られるマレーシア。このマレーシアに、「ラブアン」と呼ばれるタックスヘイブンがあることをご存じでしょうか。今回は、国際課税研究所首席研究員の矢内一好氏が、マレーシアとラブアンの税制の違いについて解説します。

マレーシアのタックスヘイブン、「ラブアン島」

外務省の資料等によれば、マレーシアの概要は以下のとおりです。

正式国名:マレーシア

面積:日本の約0.9倍

人口:3,350万人

1957年に「マラヤ連邦」として英国より独立し、1963年にシンガポール、サバ、サラワクを加えてマレーシアが成立。1965年にシンガポールが分離、独立し、現在に至る。

このマレーシア政府が設置した、「ラブアン」という税制特区をご存じでしょうか。

ラブアンはボルネオ島サバ州の沖合にあり、面積は千葉県船橋市とほぼ同じ。9万人の人口を持つ島です。

1963年にサバ州内の一地域としてマレーシアへ加わり、1984年に連邦直轄領となりサバ州から離脱。1990年にマレーシア政府により「オフショア会社法」が制定され、自由貿易港となりました。ラブアンはアジア内外からオフショア(租税回避地)として注目を集めています。

マレーシアの税制は、「居住法人」と「非居住法人」で異なる

マレーシアでは法人が「居住法人」か「非居住法人」かに分類され、それぞれ課税の仕方が異なります。

「居住法人」か「非居住法人」かの区分基準は、「管理支配地主義」という考え方によって行われます。管理支配地主義とは、「その法人の管理や支配がマレーシア内で行われている」ということです。

したがって、外国法人がマレーシア内で実質的な管理・支配を行っている場合には「居住法人」、マレーシアにおいて設立された法人であっても、その法人の管理・支配が国外において行われている場合には、その企業は「非居住法人」と分類されます。

また、「居住法人」か「非居住法人」かによって課税所得の範囲も異なります。

居住法人の場合は、銀行業、保険業および国際運輸業等の特定事業に従事する法人を除き、原則としてマレーシア国内源泉所得に対してのみ課税対象とされます。

非居住法人の場合は、マレーシア国内源泉所得についてのみ課税対象とされます。したがって、マレーシア国外の源泉所得については、送金の有無に関わりなく課税されることはありません。

法人税率24%も、ラブアンなら「3%」

通常、マレーシアの株式会社は「マレーシア会社法」に基づいて設立され、「マレーシア会社登録委員会(SSM)」に登記されます。この場合、法人税率は24%です。ただし、例外も存在します

※ 自社および支配関係会社の払込済資本の額が250万リンギット(約8,826万円)以下で、かつ年間売上額が5,000万リンギット(約17億6,530万円)以下のマレーシアで設立された居住法人については、課税所得のうち60万リンギット(約2,118万円)までの金額については2020賦課年度以降17%の税率が適用され、60万リンギットを超える金額について24%の税率が適用されます。

しかし、「ラブアン法人」は課税方法が異なります。ラブアンにおいて、「ラブアン会社法」により設立され、国際取引および金融事業等を行う企業は、その売上に対して3%の法人税が課されます。

このほか、「ラブアン・オフショア事業活動課税特例法」により、3%の法人税に代えて2万リンギット(約70万円)の固定税額を納める選択もできましたが、2019賦課年度以降、これは廃止となっています。

なお、受取配当や受取利子等、非事業所得については免税、ラブアン法人から非居住者への利子・配当、ロイヤリティ等の支払いに係る源泉所得税についても免税となっていますが、知的財産から生じる所得については軽減税率の適用はなく、通常の税率が適用されます。

2019年税制改正…基準を満たさない企業は「法人税率24%」に

ラブアンの税制は、2019年に改正され、「実体基準(substance requirements)」が導入されました。

これにより、持ち株会社の基準は、フルタイムの社員を2名雇用し、年間運営費が5万リンギット(約176万円)以上、リース会社はフルタイムの社員2名で年間運営費が10万リンギット(約353万円)以上となりました。

この基準を満たさない場合は、マレーシアの法人税率24%の適用となります。

日本・マレーシア租税条約における「ラブアン」の取り扱い

日本とマレーシアは、1999年に「日本・マレーシア租税条約(以下「日馬条約」という)」を締結しています。原条約が1999年2月の署名であることから、ラブアンがタックスヘイブンになって以降の締結です。

日馬条約の議定書5(a)および(b)には、以下の規定があります。

5(a)

この条約における租税の軽減または減免は、個人を除く一方の締約国の居住者が、居住地国の固定的施設を通じて実質的な活動をしていないときには、その者に対して適用しない。

5(b)

1990年に施行されているラブアン・オフショア事業活動課税特例法第2条(1)の規定、もしくは今後行われる改正で、オフショア事業活動を行う者またはマレーシアの法令により同様の取り扱いを享受する者で両締約国の政府が合意する者に対しては適用しない(以下「ラブアン条項」という)。

つまり、マレーシア法人とラブアン法人が内国法人から投資所得を受領する場合、マレーシア法人は「日馬条約」により、一般配当15%、親子間配当(25%株式所有要件)5%、利子および使用料10%の限度税率の適用となりますが、ラブアン法人の場合、国内法の20%の適用となります。

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員  

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