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「所得税・法人税」ナシ⁉…〈ケイマン諸島〉のタックスヘイブンが独り勝ちした背景【国際課税のプロが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月5日 9時0分

「所得税・法人税」ナシ⁉…〈ケイマン諸島〉のタックスヘイブンが独り勝ちした背景【国際課税のプロが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

観光地としても有名なカリブ海には多くのタックスヘイブンが存在します。代表的な例が、所得税・法人税がないバハマとケイマン諸島です。この2つの地域にはどのような特徴があるのでしょうか。今回は、国際課税研究所首席研究員の矢内一好氏が、バハマとケイマン諸島について解説します。

カリブ海のタックスヘイブン、ケイマン諸島とバハマ

カリブ海には多くのタックスヘイブンが存在します。代表的な例がバハマとケイマン諸島です。

ケイマン諸島は自治権を持つ英国の海外領土で、バハマは英国から1973年に独立しています。両者に共通していることは、所得税・法人税がないことです。

世界には、所得税・法人税等の課税がない全所得軽課税国等が約10あります。これら全所得軽課税国等に各国が均等に投資をしているわけではありません。

ともに英国支配にあったバハマとケイマン諸島は、どちらも全所得軽課税国等にあたります。投資する側の外国企業等からみると税制面において同等でありながら、投資の多くはケイマン諸島に対して行われています。

ケイマン諸島の概要

ケイマン諸島はキューバに隣接する位置にあり、人口は約5万人。米国からのカリブ海クルーズ船が立ち寄る観光立国の地域です。

ケイマン諸島の概要は以下のとおりです。

①ケイマン諸島の登録している会社数は8万社超、登録済み投資ファンドは9,000以上あり、760の自社専用保険会社(キャプティブ)があります。また、ケイマン諸島における設立費用は(設立業務を行う者に対する手数料を除き)600ドルです。

②米国財務省の資料によると、米国投資家は2006年末で、約3,760億ドル(37兆6,000億円)のケイマン法人の株式を保有しています。2007年9月現在、米国銀行のケイマンからの借入金は1兆5,000億ドル(約150兆円)で外国では最高となっています。

2007年6月現在、米国銀行のケイマン諸島への貸付金は9,400億ドル(94兆円)で、英国に次いで2位です。

③法的システムが安定し、国際基準に達していることが、ケイマン諸島が金融活動に利用される理由です。

④2001年11月に米国は英国の英領であるケイマン諸島に関するTIEA(租税情報交換協定)に署名し、2006年に発効しました。脱税に関しては2004年から、他の事項は2006年から有効です。

⑤ケイマン諸島は、登録している企業数が約8万社です。対中国投資が多いことで有名な英領バージン諸島の登録企業数は約62万社で、香港における企業数約54万社を上回っています。中米のパナマの登録企業数は約37万社です。

⑥2021年のケイマン諸島の対外直接投資の純流入額(国際収支統計:世界銀行統計)は9億8,491万ドルです。

⑦香港の上場法人の7割強が、ケイマン諸島、バミューダ、英領バージン諸島(BVI)などのオフショア法人です。

⑧ケイマン諸島では慈善信託のように、信託された資産を最終的には慈善目的に使用するという名目の下で、実質は受益者不在となる目的信託が合法化されており、委託者の裁量が発揮できる形態が認められています。

⑨ケイマン諸島会社法(Companies Law of the Cayman Islands)は2018年改正法の最新版です。

⑩ケイマン諸島への日本の対外直接投資は2020年で61億6,400万ドルです。

バハマの概要

バハマの総面積は福島県とほぼ同じで、人口は約40万人。2016年9月に公表された「バハマ文書」によると、1990年以降から2016年までにバハマで設立されたペーパーカンパニー等の法人は約17万5,000社です。

バハマの税制では、内国法人、外国法人という区分はされていません。また、法人税、個人所得税、キャピタルゲイン税、相続・遺産税の課税がなく、配当、利子、使用料に対する源泉徴収税、給与に対する課税もありません。政府の財政収入の主たるものは以下のとおりです。

①輸入関税

②印紙税

③不動産税(毎年不動産に課される固定資産税)

④保険業税(バハマで事業を行う許可を得た内国保険業者は、保険料収入の1%の税を課されます)

オフショア・カンパニーの非居住株主は、配当、利子または清算分配について課税はありません。

ケイマン諸島の利点

ケイマン諸島とバハマの比較において、全所得軽課税国等という条件だけで外国からの投資が増加しているわけではありません。

ケイマン諸島の場合、企業活動に有利な法制度の整備、秘密保持の徹底等、税制以外の領域において投資家の要望に応えているかという点がバハマを上回っています。

また、過去にバハマで何らかのトラブルが発生し、ケイマン諸島に資金が移動したということもありました。  

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員  

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