恨みます…年収700万円の53歳サラリーマン、亡き父が遺した「実家と預金1,000万円」を母に譲った2年後、税務調査で〈年収の倍以上の追徴税〉を課された“まさかの理由”【税理士が警告】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月9日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
税務調査といえば、個人事業主や富裕層といった一部の人以外には無関係に聞こえるかもしれません。しかし、実際には誰もが税務調査の対象で、さらに「資産を持っている」ことに無自覚であるほど、税務調査官に狙われてしまうのです。都内の企業に勤めるAさん(55歳)の事例をもとに、現役税理士・CFPの宮路幸人氏が「相続税申告時の落とし穴」について解説します。
自営業の父が逝去…税務調査官が目をつけた“あるモノ”
中堅メーカーで経理として働くAさん(53歳)は、都内近郊の賃貸物件に妻と2人の子どもと4人で暮らしています。
Aさんの父は自営業で工務店を経営していたものの、2年前に逝去。その際、父の相続財産を確認したところ、自宅の土地建物と約1,000万円の預貯金のみで、その他の不動産や金融資産はありませんでした。
仕事柄お金を扱っているAさんは「自分は数字に強い」という自負もあり、税理士代を節約する目的から父の相続税について自ら申告書を作成し、提出しました。
そして、父の死から2年ほど経ったある日のこと。Aさんのもとに税務署から連絡が入りました。恐る恐る出てみると「お父さまの相続税調査に伺いたい」といいます。
「税理士に頼まず自分で申告書を作成したから、なにか間違いがあったのかも……」
不安に思ったAさんでしたが「とはいえ、父の財産は預貯金と自宅くらいのものだし、特に大きな問題にはならないだろう」と楽観的に考え、税務調査を受け入れることにしました。
そして調査当日、調査官と次のようなやりとりがありました。
調査官「お父様の確定申告を確認させていただきまして、事業規模なども鑑みますと、相続税の資産額が少ないように思えるのですが……」
Aさん「ああ、それは……父は金遣いが荒かったもんですから。父は仕事上交友関係が広く、見えっ張りなところもありまして、お金は入ってきた分使う人でした」
調査官「そうだったんですね。お父様がどのようなことにお金を使っていたか覚えていらっしゃいますか?」
Aさん「そうだな、本当にいろいろ使っていたから……。これといって思い当たりませんね」
調査官「そうですか……。ところで、Aさんがつけていらっしゃるその腕時計、すごく素敵ですね。普通にお店に通ってもまず買えないモデルじゃないですか?」
調査官から告げられた「まさかのひと言」
Aさん「ああ、これは父の形見ですよ。父は腕時計を集めるのが好きで、いくつかコレクションをしてましてね。それを僕が形見として受け継いだんです。そう考えると、父は腕時計に一番お金を使っていたかもしれないですね。家と預貯金はおふくろに全部渡しましたから、これが親父との唯一のつながりです」
調査官「なんと……それは素晴らしいお話ですね。コレクションというのは、いまも保管していらっしゃるんですか? もしよろしければ、見せていただけないでしょうか」
Aさん「ああ、ありますよ。もちろん構いませんが、そんなものを見てどうするんですか? ただの形見ですよ」
そしてコレクションが飾ってある一室へ案内すると、その高級腕時計の数々に、調査官は感嘆の声を上げました。
調査官「これはすごい! ロレックスに、パテックフィリップ……私もそんなに詳しくないですが、有名な時計も結構ありますね」
Aさんが喜んでいると、調査官は冷静に言いました。
調査官「これは相続財産として、申告が必要になりますね。鑑定に回しますが、よろしいですか?」
Aさん「え? これも相続財産にあたるんですか? こんなの、ただの形見分けじゃないですか!」
Aさんの抵抗も虚しく、鑑定の結果高級腕時計コレクションは「時価4,500万円」との評価を受けました。この結果、Aさんは「1,500万円」もの追徴税を課されることになります。
Aさん「尊敬する父の趣味を褒めてくれたから正直に話したのに……悪いけど、あなたたちを恨みます……」
Aさんが税務調査の対象となったワケ
Aさんの父は長年、その地域のなかでは有数の工務店を経営していました。自営業ですから、毎年欠かさず確定申告も行っています。
こうした情報から、Aさんの所得についておおむね把握している税務署は、過去の所得状況から鑑みて相続財産が少ないのではないか? との疑いをもち、Aさんの父を税務調査の対象に選んだのだと考えられます。
また、相続税の申告の場合、中身が複雑であるため約85%の申告者がプロである税理士に依頼しています。税理士を頼まずに自己申告した場合、税務署に疑われやすい(調査対象に選ばれやすい)といえるでしょう。
課税「される形見」と「されない形見」の差
Aさん自身、高級腕時計のブランドについて知っているのはロレックスぐらいのもので、その他の腕時計については詳しい知識を持ち合わせていませんでした。また形見が課税財産に含まれるという認識がなかったといいます。
しかし、相続税の課税対象は、「金銭的価値があるすべてのもの」です。つまり、高級腕時計だけでなく、自宅のなかにある家財などもすべて相続税の課税対象財産となりえます。
自動車や宝石、掛け軸など、家財道具1つあたり5万円を超えている場合には、個別に評価して「相続税財産」として加える必要があります。
なお、家財のなかに1点あたり高価なものがない場合には、まとめて「家庭用財産一式10万円」などとして申告するケースが多いです。
国内外問わず腕時計をコレクションしている人は多く、なかには値上がりの売却益目当てに投資目的として購入する人もいます。
2019年には、世界で1本しかないパテックフィリップが、約34億円という過去最高額で落札されたこともあります。これは極端な例としても、高級腕時計には財産価値があると考えたほうがいいでしょう。
税務調査の際は“雑談”に要注意
税務調査は通常朝10時から始まりますが、到着していきなり「あれを見せろ」「これを見せろ」とはいいません。最初の1時間ほどは、故人の人となりや経歴や趣味等についての雑談から始まることが多いです。
しかし、この税務調査官との“雑談”は要注意です。筆者の経験上、優秀な調査官ほど人当たりが柔らかく、聞き上手な人が多い印象があります。
今回のケースでもAさんの身に着けていた腕時計を褒めるところから、思わぬ追徴課税となりました。必要なことはもちろん答えなければいけませんが、積極的なおしゃべりには気をつけたほうがよいでしょう。申告漏れした財産については相続税の本税のほか、ペナルティとして過少申告加算税と延滞税が課されます。
今回の場合、Aさんは申告漏れが指摘されたため、泣く泣く形見の一部を売却し、相続税の追徴税額の納付にあてることとなりました。
財務省は「個人の財産」への監視を強めている?
今回のケースのように形見の腕時計だと思って申告が漏れた場合、本税のほか各種加算税や延滞税なども課されることとなってしまいます。
相続された動産で金銭的価値がありそうなものを保有している場合、その金銭的価値を見積ったうえで申告する必要があります。
余計な詮索を受けずに済むよう、保有財産の一覧表などを作成・保管しておくことをおすすめします。
宮路 幸人
多賀谷会計事務所
税理士/CFP
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