亡くなった〈85歳の父〉は元宗教法人の代表!? 自宅の敷地に建てられた宗教法人の建物の処分方法に55歳長男が頭を抱えたワケ【相続の専門家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月4日 10時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
宗教法人の代表を務めていた父が亡くなり、遺された不動産の管理について相談しに来た春男さん。調べてみると宗教法人にいくらか土地を贈与していたことがわかりました。しかし宗教法人の代表者である父は亡くなっています。処分を考えねばなりません。本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、名義人がいなくなってしまった財産の管理方法について解説します。
父親が亡くなった
春男さん(55歳)は4人きょうだいの長男で、姉と2人の妹がいます。4人とも就職や結婚などで実家を離れていて、両親が二人暮らしをしてきました。母親は15年前に亡くなり、その後は85歳の父親が一人暮らしをしていました。
春男さんも姉や妹たちも実家からは遠く離れたところに住んでいて、長男の春男さんも実家に戻る予定はないといいます。その父親が亡くなり、春男さんが相談に来られました。
自宅敷地で宗教法人の活動
父親は地方の最寄り駅から徒歩5分のところに住んでいます。春男さんが学生の頃から父親は宗教の信者となり、地域の幹部となり、最終的には代表までのぼりつめました。そのため、自宅の敷地に宗教法人の建物を建てて、父親が取り仕切っていました。
しかし、父親も会員信者も高齢となり、次の世代の後継者がないことから宗教法人の活動も継続できなくなりました。父親が一人暮らしをしにくくなったことで介護施設に入所してからは、まったく活動できておらず、実家も宗教法人の建物も空き家となっていました。
実家には戻らない
父親は自分の財産はすべて宗教法人に注ぎ込んでいましたので、介護施設の費用は年金と春男さんの援助で支払ってきました。財産は実家の不動産だけということで、相続税がかかる範囲ではありません。
姉と妹は不動産のことは長男である春男さんに任せると言っています。皆、実家に戻ることはないので不動産はいらないということです。
春男さんもすでに実家を離れて久しく、また自分の家を購入しているため、実家に戻って生活する選択肢はありませんので、地元で使いたいという人がいれば贈与してもいいと考えています。そうするにしても、いったんは相続手続きをしなければなりません。
土地は誰のもの
今まで父親から不動産の名義など聞いたことがなかったため、この機会に調べるようにお勧めし、相談時間中に土地の構図と土地、建物の登記簿をネット取得しました。
すると自宅の土地、建物と裏山は父親名義ですが、宗教法人の建物と周辺の土地は宗教法人に贈与していることがわかりました。すでに父親の財産ではないということです。しかし、宗教法人の代表者である父親は亡くなっているため、実体のない法人が所有している形になっています。
法人の後継者もいないため、空き家として放置されている状況です。父親が管理できなくなっても困らなかったのは、固定資産税が課税されていなかったためでしょう。
実家と一緒に処分
実家も宗教法人の建物もすでに数年、空き家状態で、このまま放置してもいいことはありません。いらない不動産なので相続放棄できるか? ということも考えたと春男さんは言言いましたが、国が引き取らない不動産だと判断されるため、書類上の相続放棄ができたとしても相続人の管理責任は残ります。
相続放棄は現実的ではないので、処分できる方法を探すことをお勧めしました。最寄り駅から徒歩5分の立地はいいこと、市街化区域で建物は建てられることなどから売却できる見込みはありそうです。
問題は宗教法人の名義を個人に戻してもらう手続きですので、司法書士と連携して進めることになります。春男さんは不動産の名義が確認でき、方向性が見えてほっとしたと言われていました。実務的な手続きはお任せしたいということで少し肩の荷を下ろしていただけたようです。
できる対策は?
●できる対策
⇒父親の相続登記をし、不動産の名義替えをする。代表がいなくなった法人は閉鎖するなどして土地を個人に戻してもらう。使わない土地は活用できる人に売却する。
●注意ポイント
⇒不動産の名義が入り組んでいるので全体の確認が必要。父親が贈与した土地を戻してもらうための手続きが必要だが、手間がかかる。こうした課題を残さないように生前に父親が手続きしておけると、手間がかからずに手続きができたので残念。
曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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