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〈年金月19万円〉要介護2の77歳母が「老人ホーム入居」も、半年後「ホームで覚えた違和感」に55歳長男が退去を決意「こんなところに母を預けられない」

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月2日 8時15分

〈年金月19万円〉要介護2の77歳母が「老人ホーム入居」も、半年後「ホームで覚えた違和感」に55歳長男が退去を決意「こんなところに母を預けられない」

(※写真はイメージです/PIXTA)

親の介護に直面したとき、このまま自宅で介護を続けるか、それもとも施設に入居させるか、大きく二択に迫られます。ホームに親を預ければ、安心・安全な環境のなか、家族も安心できる、と考えるでしょう。しかし、ホームに預けたからといって、その安心・安全は絶対というわけではありません。

認知症の症状進行で、在宅介護に不安感拡大

実の母が介護付き老人ホームに入居していたという林和也さん(仮名・50歳)。ホーム入居のきっかけは認知症。

ある日、林さんが実家に帰り、くつろいでいると、母は「いつ帰ってきたの?」と不思議そうに尋ねました。さっき「ただいま」といったのに、母はそのことをすっかり忘れてしまったようでした。また食事の準備を手伝おうと「今日は何を作るの?」と聞いたら、母は「まだ何も考えていないわ」といいました。以前ならすぐにメニューを思いつくことができたのに……またその夜、母が急に不安そうな表情を浮かべていることに気づきました。「どうしたの?」と尋ねると、「最近、物をよく忘れるのが怖いの」といいました。「大丈夫だよ、みんな年を取るとそうなるから」と励ましましたが、母の不安は消えなかったといいます。

さすがに様子がおかしいと思い、病院に連れていくと初期の認知症と診断されました。現在、林さんの母は要介護2。金銭管理や服薬の管理においてサポートが必要であり、徘徊や不安定な行動が見られることも。入浴や排泄などの基本的な動作に対しても介助が必要になっています。

【現在の要介護度別にみた介護が必要となった主な原因】

■要介護1

認知症…26.4%、脳卒中…19.0%、骨折・転倒…13.0%

■要介護2

認知症…23.6%、脳卒中…17.5%、骨折・転倒…11.0%

■要介護3

認知症…25.3%、脳卒中…19.6%、骨折・転倒…12.8%

■要介護4

脳卒中…28.0%、骨折・転倒…18.7%、認知症…25.3%

■要介護5

脳卒中…26.3%、認知症…23.1%、骨折・転倒…11.3%

※出所:厚生労働省『令和4年度国民生活基礎調査』

以前、母親が「自宅で死ねたら何もいうことはない」といっていたことを覚えていた林さん。要介護であっても施設に預けることには消極的でした。日中はデイサービスを使うなど外部の力を借りていますが、林さん自身もできるだけ手を貸せるようにしています。ただ認知症の症状が進んでいくと、在宅での介護に限界を感じ始め、ホームへの入居も検討するようになったといいます。

食堂でひとりたたずむ母親に違和感「何かがおかしい…」

母親が入居できる老人ホームを探し始めた林さん。そのなかで気になったのが、実家からも林さんの自宅からもほど近い介護付き老人ホーム。入居に際しかかる入居一時金は100万円。これは貯蓄から払い、さらに月額費用は18万円。母親の年金は月19万円、手取りで16万円ほどなので、月5万円ほど貯蓄からと取り崩せば、雑費含めて賄えそう。計算上、生涯入居できそう。リーズナブルな価格のほか、なによりも、何かあったらすぐに駆けつけられるロケーションが気に入ったといいます。

こうして、母を老人ホームに預けることにした林さん。毎週面会に訪れましたが、仕事の繁忙期、2ヵ月ほど面会にいけないときがありました。多忙な日々が落ち着き、久々にホームに訪れたとき、ふと違和感を覚えたという林さん。ただその違和感の正体がわからないまま、母親の居室に向かおうとすると、食堂にひとりいる母親をみつけたといいます。

林さんは「普段、母はどんな生活をしているんだろう」と、声をかけずに観察することにしたといいます。ただ母親は食事が終わったのか、ボーっと1点をみつめています。そんな母親に声をかける職員もいません。そこで林さんはホームを訪れたときに覚えた違和感の正体に気が付いたといいます。

それは、受付以外で職員に会っていないということでした。以前訪れたときは、居室に向かうまでに何人もの職員とすれ違い、そのたびに「こんにちは」「こんにちは」とあいさつをしたものでした。それが今日はまったく職員にあっていなかったのです。

痺れをきらし、母親のところに駆けつけた林さん。そして何とか施設長をみつけ、自分が抱いた違和感について聞いてみました。理由はスタッフの大量離職。実は比較的近所に新しい施設がオープンし、このホームからも多くのスタッフが転職していったといいます。そして採用活動をしているものの、まったく補充ができていないのだとか。

――圧倒的に職員が少ないなか事故が起きたら……そんな危険なホームに母親を預けることはできないと、すぐに退去を決断しました

ホームに入居して半年後の出来事でした。

昨年、株式会社キャリアが介護業界関係者に対し行った『介護業界の課題に関する意識調査』によると、介護業界全体の課題として89.5%が「人手不足」と回答。また施設経営者・採用担当者に「現在の経営課題」を尋ねると、トップが「採用活動がうまく進まない」で59.3%でした。また介護従事者に「現在働いている介護施設で改善してほしいところ」を尋ねると、トップは「給料アップ」で81.5%。「人手不足が改善」が63.6%で続きました。

145の職種の平均給与を公表している厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、介護関連の職種では102位に「介護支援専門員(ケアマネージャー)」で平均月収27.4万円、120位に「訪問介護従事者」で25.0万円、122位に「介護職員(医療・福祉施設等)」で24.1万円。介護業界は明らかに給与水準が低く。そのことが慢性的な人手不足を招いていることは、この調査からも明らかです。

林さんの後日談。退去したホームは、費用的にも安く、それゆえ職員の給与も安かったのだろうと推測。多少コストがかさんでも、安心して母親を預けることができるホームを探しているといいます。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年度国民生活基礎調査』

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

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