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お兄ちゃん、もしかして偵察に来てる?東京23区内にいくつもの土地を所有する地主の父と2人で暮らす42歳・女性。「兄の訪問」に動悸が止まらないワケ【弁護士の助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月9日 10時15分

お兄ちゃん、もしかして偵察に来てる?東京23区内にいくつもの土地を所有する地主の父と2人で暮らす42歳・女性。「兄の訪問」に動悸が止まらないワケ【弁護士の助言】

遺産が多ければ多いほど「相続争い」が起こる可能性は高まります。特に「不動産」を中心とした相続の場合は考慮すべき事項が多く、無策でいては、親の死によって今まで良好だった親族の絆がバラバラになってしまうことも……。相続を円満に進めるには、どのようなポイントに注意すべきなのでしょうか。そこで本記事では、母の死を機に実家へと戻り、今は父と2人で暮らしている亜弓さん(仮名・42歳)の事例とともに、円満な相続を実現するための具体的な法的対応について、相続専門の弁護士・板橋晃平氏が解説します。

亜弓さん(42歳・女性)が「遺産相続」に不安を募らせるワケ

亜弓さん(42歳・女性)は父と実家で暮らしながら、フリーランスの翻訳業を営んでいます。74歳の父は東京23区内にいくつもの土地を所有する地主で、数年前に母が他界したことをきっかけに亜弓さんは実家暮らしすることを決めました。

亜弓さんには兄(45歳)と妹(38歳)がいますが、友人からは「実家暮らしで家賃もローンもなくて羨ましい」と言われることが多いです。確かに経済的には恵まれていると感じますが、最近、父が亡くなったあとの遺産相続について不安が募っています。

土地が広く価値も高いため、相続時に兄妹間で揉めるのではないか、相続税の負担はどうなるのか、といったことが亜弓さんの頭をよぎるようになりました。法律や相続の仕組みに詳しくないため、「相続争い」という言葉には大変そうなイメージを抱いています。

なんとなくですが、近頃兄の訪問も増えた気がします。父の体調も良くないのでもしかしたら「偵察に来ているのかな?」と疑ってしまうこともしばしば。亜弓さん自身は穏やかな性格で争いごとを好まないので、平等に分けられればと思っているのですが、最近は兄が来るだけで動悸がするようになりました。何より、わりと仲が良いほうだった兄を疑っている自分が心底イヤになります。

兄妹間で話し合いがまとまらなければ、裁判沙汰になることもあるでしょう。できれば穏便に、スムーズに相続を進めたいと願っています。

さて、このような状況で、亜弓さんは父に何かをお願いしたほうがよいのか、自分で何かしておくべきなのか……今からどのような準備をしておけばよいのでしょうか?

地主の相続は複雑…早めの準備が不可欠

不動産を中心とした相続では、遺産分割が困難になりやすく、代償分割や換価分割の検討、相続税の納税資金の確保、共有名義のリスク回避など、考慮すべき事項が多岐にわたります。

特に、ご相談者様のように被相続人(父)と同居している場合、自身の居住権をどのように確保するか、また、兄妹間の公平な遺産分割をいかに実現するかが重要となります。

本記事では、

  • 現在の財産を正確に把握する方法(財産目録の作成)
  • 相続税の試算と納税資金の確保策
  • 公平な遺産分割の方法(代償分割・換価分割)
  • 同居している相続人の立場を考慮した遺産分割の調整方法
  • 被相続人(父)の意向を最大限反映した公正証書遺言の作成

といった流れで、円満な相続を実現するための具体的な法的対応を弁護士の視点から解説します。

解説

【地主特有の相続問題】弁護士が考える法的リスクと対応策

1. 現在の資産を特定し、財産目録を作成する

財産目録とは、将来被相続人となる方が有する現在の財産と負債を明確に記載した一覧表です。

円満相続の第一歩として、将来の相続財産の範囲と評価額の概算を明確にすることが不可欠です。将来の相続財産の特定や評価が不十分なままでは、適切な生前相続対策をすることができず、いざ相続が発生した際に、相続人間で認識の齟齬が生じ、紛争の原因になりかねません。

(1)財産範囲の把握

以下の項目を整理し、被相続人となる方のみならず、推定相続人全員がどれほどの財産が将来遺産となるか把握できるようにしておくことが望ましいです。被相続人となる方の相続がいつ発生するかによって、財産の範囲が変動することとなりますが、まずは現時点での財産の範囲を把握しましょう。

  • 不動産:所有する土地・建物の登記簿謄本、固定資産税評価額、路線価
  • 金融資産:現金、預貯金、株式、投資信託、退職金
  • 動産:自動車、貴金属、その他資産性のある物
  • 負債:住宅ローン、借入金、税金未納分
  • 生命保険:契約内容、受取人の指定

(2)財産の試算について

財産の範囲を把握したあとは、それぞれの財産の試算をすることとなります。

不動産の評価額は相続税の評価の基礎となる「路線価方式」または「固定資産税評価額」を基準として試算してみるとよいのではないでしょうか。もっとも、収益物件や特殊な不動産に関しては、上記基準では適切な評価ができない可能性があることから、場合によっては不動産鑑定士や税理士と協力し、財産の時価評価を行うことが望ましいです。

不動産以外の財産に関しては、現時点で現金に換価した際の金額を評価額とすることが多いです。

負債は、現時点で弁済することとなる残額を評価額とすることが多いです。

2. 相続税の試算と納税資金の確保策

上記で述べた財産目録を作成するとわかるのですが、地主の相続では、不動産が遺産の大半を占めており、生前相続対策をしていないと相続税の支払が困難になるケースが多くなります。

納税資金を確保する方法として以下の施策を生前のうちから検討しておかなければなりません。生命保険の活用(非課税枠:500万円×法定相続人数)

  1. 不動産売却の検討(一部換価し、納税資金を確保)
  2. 延納・物納の活用(一括納付が困難な場合のための税務手続)

具体的な納税資金の捻出は個々の家庭によって異なりますので、あなたに合った納税資金の確保の方法を見つけるためにも、弁護士や税理士等の相続の専門家に相談しましょう。

公平に遺産を分割する「2つの方法」とは

3. 公平な遺産分割の方法(代償分割・換価分割)

すでに述べた通り、不動産を多数保有する地主の場合、遺産分割をする際、遺産となる不動産を誰が取得するかで揉めることが多いのですが、その理由としては、不動産ごとに評価額が異なるため、現物分割により相続人の数に応じて相続する不動産を割り振っても、相続人全員が納得できるような公平な遺産分割が難しいことがあげられます。

また、不動産を公平に分割する方法として共有分割といった方法もありますが、不動産を相続人全員で管理するといった煩雑な作業が生じることや相続人の誰かが共有物分割請求をした場合には結局不動産の所有権を相続人又は第三者に帰属させることになり、遺産分割後に相続人間で争いになりかねません。

民法ではなるべく公平な遺産分割を実現するための遺産の分割方法として現物分割や共有分割の他に代償分割と換価分割といった方法があるので、これらの分割方法について説明します。

(1)代償分割とは?

一部の相続人が不動産を単独で取得し、その代わりに他の相続人へ相応の金銭を支払う方式です。

<メリット>

  • 遺産である不動産に居住していた場合、そのまま住み続けることが可能
  • 共有名義によるトラブルを回避できる

<デメリット>

  • 代償金を用意する必要がある
  • 基本的には他の相続人の同意が必要となる。

(2)換価分割とは?

不動産を売却し、売却代金を相続人間で分配する方式。

<メリット>

  • 分配が明確になり、争いを防ぎやすい

<デメリット>

  • 居住していた不動産に住み続けることが難しくなる
  • 基本的には他の相続人の同意が必要となる。

最終的にどの方式を利用するかは、相続時の相続人の人間関係や意向に左右されますが、被相続人となるのみならず、推定相続人となる方も財産目録を基に推定相続人がどの遺産の取得を望んでいるかの話し合いをする際、円満相続を実現するためにはどのような遺産分割方法がベストであるか検討するうえで、上記のような遺産分割方法を理解しておく必要があります。

相続争いを防ぐために「公正証書遺言」を作成しておくべきワケ

4. 家族会議を開き、公正証書遺言を作成する

相続争いを防ぐためには、家族会議を開き、相続発生前に関係者全員が、財産目録の作成、相続税の試算と納税資金の確保策の策定及び遺産分割方法の検討をしておくべきです。

もっとも、検討しただけでは、十分とはいえません。それを形として残しておく必要があり、被相続人となる方には生前のうちに家族会議で検討した内容を遺言していただくのがベストです。

自筆証書遺言では、形式不備や内容不備により家族間で検討した内容に基づいた遺言ができないといったリスクが発生しかねません。また、被相続人となる方の年齢や認知能力いかんによっては遺言能力自体も争われるかもしれません。

そのため、遺言書を作成する場合には公正証書遺言の作成が必須かと思われます。

【今回の相談者のケースに当てはめた場合】

相談者の状況を整理すると、以下の通りかと思われます。

  • 現在、父と同居しており、実家に住み続けたい希望がある
  • 兄妹との公平な遺産分割を実現したい
  • 相続税の負担を軽減したい

相談者の意向を反映した具体的な対応策を検討するのであれば以下の準備を進めていくのがよいかと思われます。

  1. 財産目録を作成し、不動産の評価額を算出する
  2. 相続税の試算を行い、生命保険の活用を検討する
  3. 代償分割または換価分割を想定し、兄妹と事前に話し合う
  4. 家族会議を開き、相続後の住居問題を整理する
  • 「実家を相談者が相続する」場合 → 代償分割のための資金準備が必要
  • 「実家を売却する」場合 → 換価分割の方針を兄妹と調整する

5. 家族会議で決まった内容に基づき父に公正証書遺言を作成してもらう(実家の相続方法を明記)

このような準備を進めることで、相続争いを防ぎ、円満な相続手続を進めることが可能となります。

地主の相続は、計画的な準備と遺言の活用がカギ

地主の相続では、遺産分割や相続税の納税に伴う問題が生じやすいため、早めの準備が不可欠です。

これらを実行することで、兄妹間の争いを防ぎ、円滑な相続手続を進めることが可能です。弁護士や税理士と相談しながら、今すぐ準備を始めましょう。

板橋 晃平

弁護士

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