さては親父の財産を狙ってるな?兼業農家を営む父の財産を牛耳る56歳長男。すっかり人が変わってしまった兄に姉妹が頭を悩ませるワケ【相続の専門家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月10日 10時15分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
現状の不動産評価と相続税の予想額を算出し、分割案の提案、相続税の納税案、相続になったときの流れとポイントなどをまとめておくことで、相続の不安を解消することができます。本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が具体的な事例をまじえて、相続プランをまとめておくことの重要性について解説します。
父親は兼業農家で土地持ち
寿栄子さん(54歳・女性)の父親(85歳)は兼業農家で、アパート経営をしながら、農家も続けています。父親は長男で、祖父から農地などを引き継いで守ってきました。そうした家督相続的な風習が残る地域ですので、父親も長男に継がせるという思いのようです。
そうしたことから、当然のごとく長男である兄は家を継ぎ、土地を守るとして育ってきましたので、ずっと実家に住み、結婚してからも同居を続けています。
寿栄子さんと妹は結婚を機に実家を離れています。また、母親が5年前に亡くなってしまい、父親が亡くなったときの相続人は兄(56歳)、寿栄子さん、妹の3人です。しかし、「相続人は多いほうが節税になる」という兄の強い要望で、兄の子である甥が父親と養子縁組をしましたので、相続人は4人、基礎控除は5,400万円となりました。
父親の財産は長男が仕切っていて、父親も妹も口出しできず
父親は80代になって賃貸事業や農業などは長男に任せるようになっています。すでに兄は不動産は全部、自分が管理し、自分が相続するものだと思っているようで、寿栄子さんたちにもそうした発言をしてきます。
寿栄子さんと妹は兄が家を継いで、不動産を相続することもよしと思うものの、不動産のことなど聞こうものなら、「お前には関係ない!」「財産をあてにしているのか!」など高圧的なことばかり言うのです。兄は父親に対しても強い口調で言ったり、父親の預金も管理するようになり、通帳なども預かって父親の自由にさせず、わずかなお金を渡す程度で、すっかり牛耳っているのです。「前からそのケはあったけれど、ここまでモンスターになるとはね……」と姉妹はため息が出るばかり。
なおさら相続になれば、相続税が払えるのか? 自分と妹はどれだけ相続できるのか? 気になることばかりですが、兄に不動産や相続のことは言っても取り合ってくれません。それでもなにかしておきたいと、寿栄子さんと妹の2人で相談に来られたのです。
不動産は固定資産税評価証明書か、名寄帳を入手する
すぐに確認できるものは、不動産です。場所がわかれば登記簿で確認できますが、まとめて確認するには、役所の税務課で、固定資産税評価証明書か名寄帳を入手することで、一度に確認できます。各市区町村ごとの申請になりますが、所在がわかれば取得することができます。申請するのは原則、所有者本人で、本人が出向けない場合は、委任状を持参するようにします。
寿栄子さんには事前に取得してもらうようにお伝えしていたので、父親に委任してもらい、取得できたと持参されていました。これで不動産全部の評価をすることができます。
相談時間で不動産の一つ一つにつき、グーグルマップで場所を確認していきました。
寿栄子さんと妹は結婚して家を離れましたが、それぞれ子どもが学校に入るときのタイミングで家を建てています。父親が「自分の土地を提供するので家を建てたら?」と申し出たことで、ふたりとも実家と同じ市内に住んでいます。父親名義の土地を貸してもらい、建物はそれぞれの夫が建築費のローンを組んで担保提供もしてもらっています。
売却と購入を整理して、現金残を推定する
父親は以前に、3か所の畑やアパートを売却しています。生産緑地指定の30年が終了する2022年以降は畑が大量に売りに出されて価格が下落すると言われて、その前に売却しておいたほうがいいと不動産会社から勧められたということでした。
寿栄子さんが父親から聞いたところでは、3か所で6億円以上の価格で売却したようです。その後、新たに駅に近いテナントビルやアパートを3つ、購入していますので、畑や土地がビルやアパートになったと言えるのですが、借入が4億円も増えています。どうやら、売れた価格で購入ではなく、ほぼ借り入れで購入しているように思えるのですが、これも兄が主として動いていて、80代の父親は全体像を把握していないのが実情です。
当社で、売れたときに入った現金と購入時の支出を登記簿の抵当権額から想定してみましたところ、売れた譲渡税と購入の頭金を想定しても3億円以上のお金が残っていると思われます。
現状を把握、課題を整理して提案する「相続プラン」を委託
父親の財産は自宅土地、建物が500坪で1億円、賃貸ビルやアパート4棟、畑や生産緑地などがあり、不動産は8億円程と想定されます。預金残を3億円程度とし、借入れ4億円を差し引きしても、1億円を超える計算となりました。
しかし、相続税は現金で払えると判断できますし、現金を寿栄子さんと妹が相続し、相続税は家賃収入から分割払いをすることも可能だと判断できました。
当社では寿栄子さんからお預かりした不動産関係の書類をもとに現地調査をし、書類なども精査することで、課題を整理、対策の提案をする「相続プラン」の委託をいただきました。それから1カ月程度の時間を経て、提案書にまとめて寿栄子さんと妹さんに「相続プラン」の提案をしました。
現状の不動産評価と相続税の予想額を算出し、分割案の提案、相続税の納税案、相続になったときの流れとポイントなどを提案書にまとめて説明しましたところ、寿栄子さんも妹さんも「ようやく整理できてよかった」「相続税が払えそうで安心した」「自分たちも相続できる財産がありそうでイメージできた」と安心されたようでした。
課題は相続になってからの兄との遺産分割協議
普段から兄は寿栄子さんと妹には高圧的で、「不動産や相続のことは口出しするな」と言って説明もしてくれず、とにかく一方的に進めていて、聞いても答えないばかりか、起こり散らす態度で、それ以上は言えない状態であきらめてきたのが現状だと言います。
本来は父親が仕切ってくれるといいのですが、高齢になり、父親も兄には強く言えないでいます。しかも父親は遺言書を書くつもりはないようで、長男に任せてしまおうということのよう。
寿栄子さんと妹も、相続になったらきちんとしてもらおうということで、そのための準備として「相続プラン」を手がかりにしたいということでした。
父親が遺言書を用意しないということであれば、相続人で遺産分割協議をする必要があります。兄はいままでどおりに妹たちには詳細は教えずに「書類に印を押すように」「お前たちに分ける物はない」「不動産は全部、自分がもらう」といったことを言ってくるのではと想定されますが、全員の合意の上、遺産分割協議書を作成し、実印を押印、印鑑証明書を添付してようやく相続手続きができるのです。
相続の時には兄や養子のペースでは進められないので、そのときこそ自分たちの主張をするようにとアドバイスしたところ、寿栄子さんたちも「そのつもりなのでサポートしてください」ということでした。
調停しても、裁判してもいいことはない
寿栄子さんも妹も、兄の賃貸事業や不動産を取り上げたり、侵害したりするつもりはなく、調停する気もなく、できるだけ円満に済ませたということです。
当社も、調停しても、裁判してもいいことはないので、兄の立場を尊重しながら現実的な相続手続きや遺産分割のサポートができたらと考えています。
そのためにはまずは情報共有が必要。相続はまだ先でしょうが、現在の状況が把握できただけでも気持ちが楽になり、相続でもサポートしてもらえるとわかってさらに安心できたようです。
相続実務士のアドバイス
●できる対策
不動産を中心に財産を確認することで相続税の予想額の算出をする相続プランを作ることで現状確認と対策のイメージが持てる。
●注意ポイント
相続になっても兄の立場を尊重する遺産分割協議をすることで理解を得ながら、情報共有をしていきたいところ。どちらかが一方的に進めてしまおうとするとまとまらないため、慎重に対処する必要があります。
曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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