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相続は「子ども」が主役…親亡き後、立ちふさがる「4つのハードル」

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月9日 11時15分

相続は「子ども」が主役…親亡き後、立ちふさがる「4つのハードル」

これまでの相続対策では「親が主役」のイメージが多くありました。しかし「子ども」が主役となって早い段階から相続対策に参加することで、適切な準備を進めることができます。実際に親が亡くなり相続が始まると10ヵ月以内に手続きを終わらせる必要があります。この10ヵ月はあっという間に過ぎていきます。本連載では、相続専門税理士の岸田康雄氏が子どもが主役で進める相続対策を解説します。

少子高齢化が進む現代…相続のカギを握る生前の「準備」

「相続」という言葉に抱くイメージとはどのようなものでしょうか。

多くの人々にとって、亡くなった親の財産を子どもたちが分け合うというものではないかと思っています。実際の相続の現場は、ただの「財産の分け方」だけでは語り尽くせないほど多岐にわたります。特に、最近の相続はその「準備」がより一層重要になってきています。

少子高齢化が進むなかで、親世代が保有する不動産や金融資産の承継が急務となり、「相続税申告」だけでなく「相続対策」そのものが重要な課題となっているからです。企業経営者の事業承継だけでなく、不動産オーナーの資産承継も同様に複雑なテーマとなりつつあるのです。

子どもが積極的に関わることで「適切な準備」が進められる

これまでの「相続解説本」とは一線を画した新しいアプローチを採用しています。それは子どもの立場から「相続対策」を考えるという視点です。

これまでは、相続の主役は“親”でした。親が亡くなったあとに、子どもたちがどのように財産を分けるかが主要なテーマでした。しかし親が亡くなる前から、子どもが主体的に関与していくべきであると筆者は考えます。親が元気なうちから子どもが積極的に関わることで、資産の全体像を把握し、適切な承継の準備を進めることが可能になります。

■なぜ「子どもが主体的に関わる」必要があるのか

親が元気なうちは、資産の状況を誰にも見せないケースが多く見られます。「うちの家族は問題ないから大丈夫」という漠然とした安心感があるため、なかなか家族会議が開かれません。ところが、親が高齢化して突然病気や認知症になってしまった場合、子どもたちは“何も知らない”状態から相続手続きを進めることになります。

親がどの銀行にどんな預金を持っているのか? どこに不動産があるのか? 遺言書はあるのか? これらを「相続が発生したあとから探す」のは非常に大変です。相続税の申告期限は10ヵ月以内と決まっています。その短い期間に必要な資料を集め、遺産分割協議を行い、税金を納めなければならないのです。

■子どもが主体的に関与するメリット

子どもが主体的に相続対策に関わると、以下のメリットが得られます。

○相続税の負担軽減が図れる

「生前贈与」や「小規模宅地等の特例」などで、早めに対策を講じることが可能になります。

○もめ事を未然に防ぐことができる

生前に話し合うことで、きょうだい同士のトラブルを防げます。

○スムーズな相続手続きができる

親の資産を把握しているため、亡くなったあとも速やかに相続手続きを進めることが可能です。

○親の意思を尊重した遺産分割ができる

親が元気なうちに意思を確認し、遺言書の作成に取り組めば、家族が納得のいく分割が可能です。

相続手続きは「10ヵ月以内」に終わらせなければならない…

家族が亡くなり、悲しい気持ちはわかるのですが、いつまでも泣いてはいられません。なぜなら、財産の持ち主の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内に相続手続きをしなくてはならないからです。

■必要になる「4つの手続き」

まず相続手続きの全体像を説明します。大まかにいうと、次の4つです。

①相続人の確定

②遺産の分割

③相続税申告

④名義変更手続き

①相続人の確定…出生から死亡時までの戸籍を確認

まず、相続人を確定することが重要です。遺言書があれば、そこに名前を書かれている人が相続するわけですが、遺言書がなければ相続人を確定しなくてはなりません。

何よりも重要なものは、身分関係の書類をそろえることです。相続人を確定するために欠かすことができません。相続税の申告がいらないケースであっても、遺産分割を行うために必ず入手してください。

最初に被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と附票を入手します。これらを入手すれば、相続人が誰なのかを確定することができます。

入籍と転籍で古い戸籍にさかのぼっていきます。複数の市区町村役場に請求することになりますが、自身で取得する場合は、左記の手順を参照してください。また、この手続きは税理士に依頼すれば、取得代行ができます。

《故人の戸籍謄本取得の手順》

(1) 自身が法定相続人であることを示す戸籍謄本の取得※

(2)死亡記載のある戸籍謄本(除籍謄本)を取る

(3)(2)で取得した戸籍謄本に出生からの情報がなければ、さかのぼって別の市区町村へ取りに行く(郵送可)

(4)2003年1月11日以前のものは改製原戸籍謄本・除籍謄本を取る

相続人全員の戸籍謄本と附票、住民票をそろえ、法務局で「法定相続情報一覧図」を作成してもらってください。「法定相続情報一覧図」があれば相続税申告以外の手続きで被相続人の戸籍謄本を提出しなくてすみます。この制度を利用することで相続の手続きを簡単にして、相続登記など遺産相続の手続きをスムーズに進めることができます。

また、相続が発生する前に「法定相続情報一覧図」は作成できません。身分関係の書類は、相続開始日10日以降のものでなければ使えないからです。

そして相続人全員の印鑑証明書を用意してください。「遺産分割協議書」には相続人全員の実印を押しますが、それに添付するためです。

※戸籍謄本は近年個人情報保護法の観点から、請求できる人が限られています。相続人であっても法定相続人だということを証明できる自身の戸籍謄本も必要になります。

②遺産の分割…まずは大まかな財産を把握

相続人が確定したら相続財産を把握してください。この時点では正確に金額を評価しなくても問題ありません。相続放棄と相続税申告の必要性を判断するだけですから、ひとまずは大まかな把握に努めてください。

相続の際にはプラスの財産だけではなくマイナスの財産として借金も相続することになります。借金が大きい場合は3ヵ月以内に相続放棄することも検討しなければなりません。

たとえば、借金がなく、自宅の相続税評価額が3000万円、銀行預金が2000万円、証券口座が1000万円、生命保険が500万円であれば、相続財産は合計して6500万円です。基礎控除の4800万円を超えていますので、相続税申告が必要になります。

③相続税申告…遺産分割協議書の準備

財産の大まかな把握ができれば、次は遺産分割協議です。相続人全員で遺産の分け方を話し合い、その内容を書面にまとめます。

話し合いが決まり次第、遺産分割協議書を作成します。

④名義変更手続き…司法書士、行政書士に依頼

不動産や預金などの名義変更にも必要です。

預金については銀行で書類を受け取り、相続人全員が署名押印して提出します。相続人の銀行口座に分割して振り込まれ、預金口座は名義変更をする必要がありません。

証券口座については、相続人が新しい証券口座を開設して、そこに有価証券を移します。不動産の名義変更や相続登記は、司法書士に依頼してください。

岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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