トランプ大統領が仕掛ける米中貿易戦争が「フィリピンにとって好機」といえる理由
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月10日 7時15分
![トランプ大統領が仕掛ける米中貿易戦争が「フィリピンにとって好機」といえる理由](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_66897_0-small.jpg)
写真:PIXTA
一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏がフィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週はトランプ大統領就任がフィリピンにとって大きなチャンスになりうる話題を中心に展開していきます。
ウィークリー・フィリピンレポート記事 20250206
フィリピンは米中貿易戦争の影響を受け、輸出志向の企業にとって新たな投資先となる可能性があります。米国は2月6日、中国からの輸入品に対し追加関税10%を課し、一方でメキシコとカナダに対する高関税の適用を30日間延期しました。これに対し、中国は米国産の石炭や液化天然ガスに15%、原油や農業機器、自動車などに10%の報復関税を発表し、2月10日から適用するとしています。
米国が関税を引き上げることでこれらの国々の製品が高くなり、米国の輸入業者が代替供給国を探す可能性が出てきています。フィリピンが競争力のある製品を提供できれば、輸出の機会が拡大する可能性があり、フィリピンは中国を輸出拠点としていた企業の受け皿になれる可能性があります。米国の関税政策を回避するために、多くの企業が新たな生産拠点を探しており、労働力の供給が豊富なフィリピンは好機を生かすべきだとの考え方です。一方で、貿易の相互依存関係を考えると、米国の関税引き上げが間接的にフィリピン経済にも悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。
アテネオ・デ・マニラ大学のフィリップ・トゥアノ経済学教授は、自動車部品、石油化学製品、コンピューター、携帯電話などの分野で米国の関税が大きな影響を与えると指摘し、フィリピンがこれを活用できると述べました。特に、フィリピンは自動車部品の主要輸出国の一つであり、中国から撤退する企業を誘致できる可能性があります。さらに、電子部品も米国が代替供給元を求める分野であり、フィリピンの輸出拡大が期待されています。また、日本や韓国の自動車メーカーや部品供給企業に対し、フィリピンへの投資を促進すべきだと述べています。
国連貿易統計(UN Comtrade)によると、2023年の米国の主要輸入品は、自動車、携帯電話、コンピューター、自動車部品、石油化学製品であり、これらの分野でフィリピンが貿易拡大の機会を得る可能性があります。しかし、フィリピンはインフラ整備や物流効率の向上が課題であり、グローバルサプライチェーンへの参入を強化するためには、労働力のスキル向上も必要とされています。
アテネオ・デ・マニラ大学のレオナルド・ランゾナ教授は、現在の状況をフィリピンの貿易政策を見直す機会と捉えるべきだと述べました。フィリピンが比較優位を持つ製品を特定し、それに特化する戦略を立てるべきだと提案しました。また、デジタル化や気候変動対策、グローバルバリューチェーンへの参画を考慮した包括的な戦略を策定することが重要だと強調しました。
また、米国がカナダ、メキシコ、中国に対し関税を引き上げることで、世界的なインフレ圧力が高まる可能性があります。関税による価格上昇が広範囲に及べば、米国の金利上昇を引き起こし、外国為替市場にも影響を与える可能性があり、その結果、フィリピンを含む多くの国で金利が上昇し、世界経済の不確実性が高まる可能性があるのです。
フィリピンの2024年の年間貿易収支は前年比3.1%増の542億1,000万ドルの赤字となり、フィリピンの貿易赤字の増加が続いていることを示しています。2024年も米国はフィリピン製品の最大の輸出先であり、輸出総額は121億2,000万ドルで、全輸出の16.6%を占めました。
先月、セフェリノ・ロドルフォ貿易次官は、フィリピン政府が米国との二国間自由貿易協定(FTA)の締結を積極的に推進すると発表しました。トランプ政権下ではこの協定が実現しやすくなると見込んでおり、トランプ大統領もフィリピンとのFTA締結への関心を歓迎していると述べました。
株式取引税が0.1%に引き下げ…その効果は?
フィリピン上院と下院は2月7日、株式取引税を現行の0.6%から0.1%に引き下げる法案の両院協議会報告を承認しました。この措置により、フィリピンの株式市場が活性化することが期待されています。また、国営銀行であるフィリピン開発銀行(DBP)の資本金を現在の350億ペソから3,000億ペソへ増資する法案も承認されました。
今回の税制改正を含む「資本市場効率促進法」は、資本市場の発展、資本移動の促進、金融活動の向上を目的としています。この法案では、株式の新規発行時にかかる印紙税(DST)も、額面価額の1%から0.75%に引き下げられます。また、投資信託(Unit Investment Trust Fund)の発行や償還にかかる印紙税が免除されることになり、投資家の負担が軽減されます。
また、雇用主が従業員の個人年金口座(Personal Equity and Retirement Account)に拠出した額の50%を税控除可能とする制度も導入されます。これにより、企業が従業員の老後資金形成を支援しやすくなります。フィリピン証券取引所(PSE)の予測によると、株式取引税が0.1%に引き下げられることで、2029年までに市場の取引量が4.9兆ペソに増加すると見込まれています。
さらに、上院はDBPの新たな憲章(DBP Charter)に関する両院協議会報告も承認しました。この法案では、DBPの授権資本(Authorized Capital Stock)を3,000億ペソに引き上げるとともに、国が常に70%の株式を保有することを義務づけています。政府はすでに320億ペソ(10.67%)の資本を払い込んでいますが、今後はDBPが新規株式公開(IPO)を実施できるようにもなります。
DBPの資本増強によって、インフラ、医療、社会サービス、農業といった政府の優先分野のプロジェクトに対する融資が拡大するとみられています。さらに、この措置によって、DBPは、国民に対して雇用機会の創出、サービスの向上、生活の質の向上といった恩恵をもたらすことが期待されています。
今回承認された2つの法案は、フィリピンの資本市場の発展と金融システムの強化を目的としており、投資家や企業の負担軽減、ひいては経済成長の促進が期待されています。
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