日経平均と「ラグビー日本代表の活躍」の関係 “南ア撃破”や“決勝トーナメント初進出”時、株価はどう動いたか【解説:エコノミスト・宅森昭吉氏】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月8日 11時10分
約40年にわたり国内外の景気分析をしてきたエコノミスト・宅森昭吉氏が、景気や市場を先読みするヒントを紹介する本連載。今回は「ラグビー日本代表の活躍」と「日経平均株価」の関係を見ていきましょう。
日本のラグビー人気に火をつけた名勝負、「ブライトンの奇跡」
2015年のラグビーワールドカップ・イングランド大会では、日本代表が強豪・南アフリカに34-32で勝利した。この歴史的快挙は「ブライトンの奇跡」として語り継がれている。本試合での勝利は、日本ラグビーの実力を世界に示すとともに、国内人気が盛り上がるきっかけとなった。
同年のラグビーワールドカップでは、日本代表はその後もサモアやアメリカを破り3勝を挙げたが、得失点差で決勝トーナメント進出を逃している。しかし、本大会での日本の活躍は世界中のラグビーファンに強い印象を与え、ラグビー人気を新たな地域に広げる契機となり、競技の普及に貢献したといえよう。
なお、決勝戦はニュージーランド対オーストラリアのライバル対決になり、ニュージーランドが34-17で勝利。ラグビーワールドカップ史上初の連覇達成チームが誕生した。
2019年に開催されたラグビーワールドカップ・日本大会は、南アフリカの3年ぶり三度目の優勝で11月2日に幕を閉じた。翌日3日、組織委員会などの大会を総括する記者会見で、ビル・ボーモント会長は「最も偉大なワールドカップとして記憶に残る。日本は開催国として最高だった」「素晴らしく、謙虚で歴史的なホスト国であった日本と日本人に心の底から感謝したい」とコメントしており、日本流の「おもてなし」が評価された大会になった。この好評は、その後の訪日外国人の増加などにつながったものと考えられる。
史上初の決勝トーナメント進出を果たしたラグビーワールドカップでの日本代表の活躍は、日本に勇気と感動を与える明るい話題となった。日本はロシア、アイルランド、サモア、スコットランドに4連勝し、全勝で予選リーグを1位通過。初の決勝トーナメント進出を果たした。
日本テレビが中継した10月13日のスコットランド戦の平均視聴率(ビデオリサーチ、関東地区)は39.2%、瞬間視聴率は53.7%と盛り上がり、裏番組となった大河ドラマ『いだてん』の平均視聴率は3.7%と史上最低を更新してしまった。
NHKが中継した10月20日の南アフリカ戦の平均視聴率は41.6%だった。ラグビーは野球やサッカーに比べてマイナー競技の印象が強かったが、開幕後はがぜん盛り上がりを見せている。ビデオリサーチは『テレビ視聴率調査』から全国の視聴人数を推計し、「1次リーグ日本戦4試合」は全国で5,486万人が見たと発表した。
ラグビー日本代表の活躍がもたらす好影響
2019年のラグビーワールドカップの盛り上がりは、日経平均株価にも好影響をもたらした。日本代表が10月13日のスコットランド戦で勝利し決勝トーナメント進出を決めた週明け10月15日の日経平均株価は、前日比408円34銭の大幅高となった。
日経平均株価は大会が始まった9月20日終値で22,079円09銭だったが、大会終了後初の取引日11月5日の寄付きは23,118円79銭で、ラグビーワールドカップ日本大会の期間中に1,039円70銭上昇した。
日本大会組織委員会が事前に公表した経済効果は直接効果、間接効果をあわせて4,372億円だった。大会終了後に発表された観客動員数は170万4,443人、チケット販売率は99.3%で過去最高であった。当初のチケット販売予想が約130万枚だったことから見て、経済効果は4,372億円を上回った可能性が大きい。
観光庁によると、2019年における訪日外国人の1人当たり旅行支出金額は、英国が241,264円と、全体の平均158,531円を上回った(『訪日外国人の消費動向 2019年 年次報告書』)。英国などからの観戦客が多かった2019年のワールドカップでのインバウンド消費がかなり出たものと思われる。実際、9月と10月の英国からの訪日外客数は、それぞれの前年同月比+84.4%、+85.6%増加と大きく伸びた。全体の伸び率も9月前年同月比は+8.2%と、8月同▲2.2%の減少から増加に転じた。
読売新聞が観戦に訪れた訪日外国人100人に聞いたアンケート調査によると、大会は44日間行われたが、滞在期間の最長は57日間、平均は約18日間。大半は試合だけでなく、各地の観光なども楽しんだという。
また、ラグビーワールドカップ関連のCDも売れた。2019年11月4日付オリコンシングル売上ランキングで、日本テレビ系列テーマソング・嵐の「BRAVE」は70.6万枚売れていた。最終的には売上70.9万枚で、嵐のCD売上ランキングでは「MONSTER」を上回り第5位となっている。
また、7~9月期に放映されたラグビー部を舞台にしたドラマ『ノーサイド・ゲーム』の主題歌、米津玄師の「馬と鹿」は週間2.4万DLを記録し、11月11日付オリコン週間デジタルシングル(単曲)ランキングで第2位にランクイン。累積売上は68.1万DLと、同ランキングの「歴代累積DL数記録」でDA PUMP「U.S.A」を上回り第2位に上昇。第1位の自身の曲「Lemon」と併せ、TOP2を独占することとなった。
2023年のラグビーワールドカップ・フランス大会では、2019年に続き日本代表の決勝トーナメント進出が期待されたが、1次リーグで敗退となった。
9月10日に第1試合チリ戦でチリに42-12で快勝するも、9月17日の第2試合・イングランド戦で、日本はノートライ、イングランドは4トライで12-34の完敗に終わった。9月28日の第3試合・サモア戦は、後半2トライを取られ追い上げられたが28-22で逃げ切った。10月7日、日本は1次リーグ3位以内が確定し、次回2027年のワールドカップ・オーストラリア大会の出場権は得た。10月8日の第4試合・アルゼンチン戦では27-39で敗れ、イングランドとアルゼンチンに次ぐ1次リーグ3位にとどまり、決勝トーナメント進出を逃している。
2023年大会でテレビ中継が2ケタの平均視聴率(ビデオリサーチ、関東地区)となったのは、NHKが放送した9月10日・チリ戦の19.7%と、日本テレビが中継した10月10日・アルゼンチン戦の21.5%だった。ただし、2019年のスコットランド戦や南アフリカ戦の40%前後の視聴率にはほど遠く、約半分程度にとどまり、盛り上がりに欠けたようだ。
2015年イングランド大会・2019年日本大会・2023年フランス大会の3大会における、ラグビー日本代表の初戦直前から日本代表最終戦直前までの日経平均株価終値の変化率は、おのおの+2.0%(9月18日~10月9日)、+1.9%(9月20日~10月18日)、▲4.9%(9月8日~10月6日)となっており、日本代表の活躍や国民の盛り上がりと関連があるように見える。
宅森 昭吉
景気探検家・エコノミスト
景気循環学会 副会長 ほか
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