日米金利差の縮小をにらみ、米ドル「続落」の可能性…2月第2週の米ドル/円予想レンジは〈149~153円〉【国際金融アナリストが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月11日 10時15分
![日米金利差の縮小をにらみ、米ドル「続落」の可能性…2月第2週の米ドル/円予想レンジは〈149~153円〉【国際金融アナリストが解説】](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_66949_0-small.jpg)
(※画像はイメージです/PIXTA)
先週は日本の金利上昇と米金利低下により、一時150円台を記録するなど、日米金利差の縮小がみられた為替市場。トランプ関税への懸念がされるなか、2月第2週の米ドル/円はどのように展開するのでしょうか。マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が解説します。
2月11日~2月17日の「FX投資戦略」ポイント
・先週の米ドル/円は日本の金利上昇、米金利低下で日米金利差、米ドル優位が大きく縮小するなかで一時150円台まで一段安となった。
・トランプ関税への懸念などを受けた米金利上昇はすでに「行き過ぎ」でその修正が起こっている可能性あり。そうであるなら、さらなる金利差米ドル優位縮小次第で米ドルに続落の余地もあるのではないか。今週の米ドル/円予想レンジは149~153円。
先週の振り返り…一時150円台まで米ドル/円の下落が急拡大
先週は、トランプ米大統領がカナダ等への関税発動を決定、ついに「貿易戦争」が始まったとして3日の日経平均株価が1,000円以上の暴落となるなかでスタートを切りました。カナダ等への関税発動はその後すぐに1ヵ月の延期となりましたが、そういったなかで米ドル/円は一時150円台まで最大で5円近くもの一段安を記録します(図表1参照)。
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このような米ドル/円の一段安は、基本的には日米金利差の米ドル優位縮小に沿ったものでした。日米10年債利回り差の米ドル優位は、一時は2024年12月上旬以来の3.1%台まで大きく縮小しました(図表2参照)。
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ところで、これについて日米の10年債利回りを別々に見ると、先週の動きは少し異例だったようです。日米の10年債利回りは基本的には連動する傾向がありますが、先週は米10年債利回りの低下を尻目に日本の10年債利回りは大きく上昇するといった具合に反対方向の動きが目立ちました(図表3参照)。
相対的に低い日本の金利が上昇する一方で、相対的に高い米金利が低下したことから、金利差の米ドル優位の縮小も大きくなったわけですが、ではなぜそのような異例の展開となったのか。
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まずは米金利低下から考えてみましょう。米金利の低下は、主に予想より弱い米経済指標がきっかけとなりました。ただ米経済指標のなかには予想より強い結果もあったのですが、なぜ米金利は低下要因に過敏に反応するところとなったのか。これについて私は、米金利「上がり過ぎ」の修正ということだったのではないかと考えています。
上述のように、先週はトランプ大統領の関税発動決定から始まりました。これに対して米金利はまず低下での反応となったのでした。これは、「貿易戦争」への警戒から株価が急落、リスク回避局面となったことから「安全資産」の債券が選好された結果ともいえなくはありません。
ただもともとは、関税の引き上げはインフレ懸念を再燃させることで金利上昇要因との見方も多かったと思います。そもそも米10年債利回りは一時4.8%程度まで上昇しましたが、これはまさにこの関税政策を含めたトランプ大統領の経済政策の金利上昇リスクを先取りした面が大きかったでしょう。
にもかかわらず、いざ実際に関税を引き上げるとなったときに米金利が低下したのは、すでに米金利が「上がり過ぎ」となっており、その転換が始まっている可能性を感じさせるものでした。
実際に、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米10年債ポジションは、売り越しが一時100万枚を大きく上回るなど空前の拡大となっていました(図表4参照)。
トランプ大統領の経済政策の金利上昇リスクを警戒し債券を売り、債券価格が下落、利回りが上昇する動きが「行き過ぎ」となっていた可能性を感じさせるものでしょう。そしてそうであれば、いよいよ関税引き上げが現実的になったときに債券はむしろ買い戻しとなり、債券利回り低下となったこと、そして先週弱い米経済指標の結果に過敏に反応して米金利低下が広がったことも納得できるのではないでしょうか。
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いずれにしても先週、米金利が低下するなかで、日本の金利は上昇が目立ちました。本来、日本の金利は「世界一の経済大国」米国の金利の影響を強く受けます。しかし、そんな米金利が低下するなかで日本の金利が上昇したのは、日米首脳会談でのトランプ大統領による日本の低金利や円安への批判を懸念した影響などが大きかったのではないでしょうか。
今週の注目点…米金利低下がさらに広がるか
こういったなかで先週の米ドル/円は約2ヵ月ぶりに足下で152.2円の52週MA(移動平均線)を下回ってきました(図表5参照)。
米ドル/円は2024年夏に一時139円まで下落が拡大するなかで52週MAを大きく下回り、経験的には下落(米ドル安・円高)トレンドへ転換した可能性が浮上しました。
そうであれば、経験的にはトレンドと逆行する一時的な上昇は52週MAを1ヵ月以上といった具合に「長く」、5%以上といった具合に「大きく」上回らない程度にとどまる可能性が高いところ、その意味では今回は異例といえるほど「長く」52週MA以上での推移が続きました。それはやはりトランプ大統領の経済政策の影響が大きかったということだったのでしょう。
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それでも改めて、米ドル/円が52週MAを下回ってきたことで、イレギュラーながら下落トレンドへの転換は間違っていなかったと考えるなら、この先はトレンドと逆行する一時的な上昇は52週MAを大きく長く上回らない程度にとどまり、一段安へ向かう見通しとなるでしょう。
今週はCPI(消費者物価指数)など注目度の高い米経済指標の発表が多く予定されています。それらの結果を受けて、すでに見てきたように米金利が「上がり過ぎ」修正局面にあるとの私の見方が正しいとするなら、米金利低下がどこまで広がるかが焦点になるでしょう。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は149~153円中心で予想したいと思います。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
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