不動産を「共有名義」にしてはいけない理由【行政書士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2025年2月12日 12時0分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
相続を見据えて終活を検討するべきは、一部の富裕層だけではありません。不動産を持っている人は、不動産の共有名義化を防ぐ対策を検討する必要があります。なぜ共有名義にしてはいけないのか? 不動産を共有することの本質的な問題について、不動産取引関連書の著者であり、実務にも詳しい平田康人氏(行政書士/宅地建物取引士)が解説します。
一見、公平に見える「共有名義」の落とし穴
共有とは、複数人が共同して1つの物の所有権を有する状態を指します。各共有者は、共有物の全部について所有権を有していて、各共有者が有する共有物に対する所有権を「共有持分」といいます。共有持分は所有権なので、各共有者は、共有物全体を共有持分に応じて使用することができますし、各自の共有持分を自由に処分することもできます。
ただし、共有物全体については、各共有者が他の共有者と同じように権利を持っていることから、各共有者が「何でも」自由にできるわけではなく、共有物に対する行為の内容によって、共有者間の意思決定の方法が民法で定められています。
共有物に対する「変更行為」「管理行為」「保存行為」とは?
共有者間の意思決定の方法は、共有物に与える影響の大きさを勘案して、共有物に対する行為の内容を「変更行為」「管理行為」「保存行為」の3つに区分しています。
◆1.変更行為
変更行為とは、共有物の形状や効用に変更を生じさせる行為で、共有物の変更をする場合には、共有者全員の同意を要します(民法第251条)。変更行為には、「物理的変化を伴う行為」と「法律的に処分する行為」があります。
【例】
<物理的変化を伴う行為>
・土地の造成(田畑を宅地に造成する工事、盛土等の造成工事など)
・建物の大規模な改修、建替え、解体
・土地上の建物建築 など
<法律的に処分する行為>
・所有権を失う契約の締結(売買契約、贈与契約)
・短期賃貸借期間(民法第602条)を超える、または借地借家法の適用がある賃貸借契約の締結
・共有不動産全体に対する担保権(抵当権等)の設定 など
◆2. 管理行為
管理行為とは、共有物の性質を変更しない範囲での利用・改良する行為で、各共有持分の価格の過半数を有する共有者の同意を要します(民法第252条本文)。
【例】
・共有物の使用方法の決定
・賃貸借契約(「民法第252条第4項に定める期間」を超えず、借地借家法の適用がないもの)の締結や更新、解除
・一般的な賃貸借(サブリースによる例外あり)の賃料変更(増額、減額) など
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※「民法第252条第4項に定める期間」と「短期賃貸借(民法第602条)の期間」は、どちらも以下の期間になります。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 10年
二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 5年
三 建物の賃借権等 3年
四 動産の賃借権等 6ヵ月
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◆3. 保存行為
保存行為とは、共有物の物理的な現状を維持し、他の共有者に不利益が及ばない行為をいいます。そのため、各共有者が単独で行うことができ、他の共有者の同意を要しません(民法第252条第5項)。
【例】
・共有する建物の修繕
・法定相続による所有権移転登記
・不法占有者等への明渡請求、無権利者への所有権抹消請求 など
複数人で不動産を共有することの本質的な問題
以上のように、共有不動産では、保存行為を除いて何をするにも他の共有者との協議や同意が必要です。加えて、共有関係が長期にわたる場合、時間の経過とともに、各共有者を取り巻く環境も、各共有者自身も変わります。なかには、予期しないような事態が起こり、共有不動産の管理行為や変更行為をするための合意形成に支障をきたすこともあります。
具体的には、次のようなことが起こったときの対処法を考えておく必要があります。
(1)一部の共有者が行方不明になったら…
共有者の一人の所在が不明な場合、共有不動産全体を共同売却したいと思っても、全員の同意を得ることは困難です。これを解決する方法として、令和5年4月1日施行の改正民法で新設された「所在等不明共有者の持分譲渡権限付与」という制度があります。
本制度は、一部の共有者の氏名や所在がわからない場合でも、他の共有者は所在等が不明となった共有者の共有持分を譲渡する権限を取得して、共有不動産全体を第三者に譲渡することができます。そのため、不在者の財産の処分権限がない従来の不在者財産管理制度よりも、手続きが簡素化され、売却実現までの時間も短縮できることになります。
(※不在者財産管理制度によって共有不動産を売却するには、裁判所から選任された不在者財産管理人がさらに、不在者の財産の処分許可を裁判所から受けなければなりません。)
(2)一部の共有者が認知症になったら…
認知症は、いつ誰が発症しても不思議はありません。共有者の一人が、突然病気や事故で判断能力が低下してしまうと、共有不動産の変更行為や管理行為での合意形成が難しくなります。その場合、有する行為能力の程度に応じて「後見・保佐・補助」といった成年後見制度を利用することになり、管理行為や変更行為をするには、それぞれ成年後見人や保佐人、補助人などと協議し、同意を取得する必要が生じます。
(3)一部の共有者に相続が発生したら…
共有不動産の各共有者に相続が発生すると、共有持分がさらに細分化されることになります。そうなると、共有者の数が増えるだけでなく希薄な関係の共有者が増えることにもなりますから、共有不動産の変更行為や管理行為での同意取得は難易度が上がります。
(4)一部の共有者が、自身の共有持分を第三者に売却したら…
共有持分の処分は共有者各自が自由に行えるため、共有者の一人が、他の共有者以外の第三者に共有持分を売却することがあります。その場合、他の共有者は、見ず知らずの第三者と不動産を共有することになります。もともと共有持分は、単独の所有権と比べて制約が多いため、流通性は低く、一般的には流通していません。また共有持分単体の価格も、通常の所有権と比較して、共有減価(2~3割減)を考慮した評価となることがほとんどです。
そんな共有持分を好んで購入する買手は、購入後の転売や投資を目的とするプロ(不動産業者、投資家など)であることが大半です。そうなると、新たに共有者となった第三者から、共有物分割訴訟をチラつかせながら、執拗に共有解消を迫られるかもしれません。
自分亡きあと、「火種」を残さないために
以上が不動産を共有名義にしてはいけない理由です。残された家族らが共有不動産を原因として揉めることがないよう、「相続前(終活時)・相続時(遺産分割時)・相続後(遺産分割後)」の各時点において、不動産対策としての「共有関係の回避や離脱、解消」を検討する必要があります。
平田 康人
行政書士平田総合法務事務所/不動産法務総研 代表
宅地建物取引士
国土交通大臣認定 公認不動産コンサルティングマスター
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