漫画『ホクサイと飯さえあれば』に学ぶ魔法瓶での「甘酒」づくり
&GP / 2017年6月10日 21時0分
漫画『ホクサイと飯さえあれば』に学ぶ魔法瓶での「甘酒」づくり
ここ数年、甘酒は栄養価の高さから「飲む点滴」として大人気ですね。お正月の初詣では、神社で振舞ってくれる甘酒をフウフウしながら飲みますが、実は夏の飲みもの。俳句の季語にもなっていて、江戸時代から夏バテに効くと庶民の間で愛されてきたんだそうです。
そんな甘酒ですが、漫画「ホクサイと飯さえあれば(1巻)」に、“おかゆと麹さえあれば”あとは魔法瓶に入れて待つだけで甘酒が出来上がるという、まさに魔法のようなレシピを見つけました。今年の夏バテ対策は「甘酒」だ!ということで、さっそく作ってみました。
コミックス「ホクサイと飯さえあれば」では、大学へ進学して一人暮らしを始めた主人公の山田文子(通称:ブン)が、入学式の朝、炊いたおかゆと米麹を魔法瓶に詰めてキャンパスへ向かいます。大学を卒業して早、いく年月…。薄れる記憶を手繰り寄せ、大学の入学式当日、まだ少し肌寒い春の朝を思い出しながら作ることにします。
まずは、1巻の82~83ページで材料の確認から。
・米 半合
・麹 100g
…以上! 作り方は、
1.炊飯器でおかゆを炊く
2.おかゆを65~70度まで熱を冷ます
3.米麹がだまにならないようにほぐしておかゆへ入れる
4.魔法瓶に詰めて8時間寝かす
5.お湯をほんの少し足して、出来上がり
とあります。魔法瓶は、サーモスの「真空断熱フードコンテナー JBI-382(レッドチリ)」を使います。
これだけで飲む点滴が出来るの? ほかには何も要らないの? と一抹の不安を感じながら、おかゆを作るためお米を研ぎます。
▲注)不安な気持ちを落ち着かせる(?)ため、おかゆは2倍の量で作っています
――約1時間が経過。ピーっという電子音を聞いたら、炊飯器の蓋を開けておかゆの出来上がりをチェック。
つやつや光って美味しそうなおかゆの完成です!(このまま食べたい……)という誘惑に負けそうになりながら、65~70度までおかゆを冷まします。
▲米粒をふんわり包んでいるのが麹菌
炊きたてのおかゆは90度前後のアツアツ。そこへ米麹を入れてしまうと、これから活躍してくれる麹菌の酵素がうまく働かず、甘酒が作れなくなります。酒屋さんのサイトなどでは甘酒は60度に保温して作ると説明しているところもありますが、コミックスでは魔法瓶に入れっぱなしにすることを考えてか、少し高めの65~70度に設定しているようです。
しゃもじでかき混ぜながら冷まし、おかゆの温度が70度を切ったところで、スタンバイしていた米麹をおかゆに混ぜ込みます。
▲おかゆの量を2倍にしたので、米麹も200gにして入れました
パラパラにほぐした麹を少しずつ分けて入れながら、おかゆと麹をざっくりかき混ぜます。立ち上る湯気からは、早くもほんのりと甘酒の香りが……! これは期待出来そうです。
魔法瓶におかゆを入れました。白く光るおかゆの中に生成色の米麹がうっすらと見えるのが分かるでしょうか? 美味しい甘酒のためにこれから頑張ろうと、控えめにおかゆと混ざり合う米麹に愛おしさすら感じます。
蓋を閉めて待つこと8時間。
コミックスでは、ブンは入学式を終えて式場を出た途端、サークル新歓活動の嵐に巻き込まれます。チラシを1枚もらうと、その上に次から次へとほかのサークルのチラシが重なり、次から次へと待ち構えて取り囲むテニサーの人々。
テニサー、テニサー、テニサー。テニサーって何さー?……ついに出た寒いギャグで我に返ると、時刻は12時を過ぎていました。7時に蓋を閉めてから5時間、甘酒マラソンは折り返しに。あと3時間――。オラ、ワクワクしてきたぞ。
■8時間後、蓋を開けて姿を現したのは
そして、時刻は午後3時。いよいよこのときがやってきました。はやる心を抑えて呼吸を整え、魔法瓶の蓋を回します。
開封の儀。(ジャジャーン!!)
甘酒の香りがほんのりと立ち上り、8時間前に比べて米麹の生成色がおかゆに溶け込んでとろみが増したようです。ちょっぴりスプーンですくって味見をすると、今まで出会ったことのないふんわり甘い口当たり。これは、まるで綿菓子! このままでも十分美味しく感じましたが、飲むには少し濃いのでコミックスにある通り少しだけお湯を足しました。
トポトポとお湯を注ぎ入れる音すら美味しそうに聞こえる……。さっきと味に違いが出るんでしょうか? もう、この時間もワクワク、ドキドキ。楽しくて仕方ない!
おかゆと米麹が出会って8時間、ようやく甘酒の完成です!
出来たての甘酒を1さじすくって口に運びながら、原形をとどめない米の口当たりと麹の優しい香りを一緒にかみしめます。ああ、美味しいものをいただく幸せ! 市販の米麹甘酒にはない手作りならではの無垢な甘さに感動すら覚えます。
■甘酒をアレンジしてみる
コミックスには登場しませんでしたが、順調に甘酒を作ることが出来たので少し余った分を使って、アレンジに挑戦。健康のために毎日飲むようになれば、1つの味では早々に飽きてしまうかもしれないので、日替わりのシェーク感覚で楽しめそうな「ブルーベリー」「ストロベリー」「ココア」のフレーバーをセレクトしました。
▲左上から、ブルーベリー、ストロベリー、ココア、プレーン、抹茶の5種類
ブルーベリーとストロベリーは果実をミキサーでペースト状にし、ココアと抹茶は製菓用の粉末を少量のお湯でのばしてから甘酒に混ぜました。どのフレーバーも甘酒になじんで美味しい仕上がりに。これで5日間、違う味で甘酒を楽しめる!
意外なことに、男性に好評だったのがストロベリー。筆者はほかのフレーバーに比べて少し酸味が気になったのですが、ストロベリーの酸味が甘酒のコクのある甘みを中和してくれて、飲みやすく感じるようです。
■夏の甘酒、オススメは炭酸水割り
さらに、小さじ1杯のレモン汁を加えて炭酸水で割ってみると、すっきり夏らしい甘酒の完成。コクのある甘さが苦手な人でも、炭酸水で割った甘酒なら気に入るかもしれません。夏の暑い日、仕事を終えて帰宅したときの一服にピッタリ合いそうです!
コミックスの中でブンは言っています。
「作った方がほんの少しだけ美味しい気がするんだ」
「作ってる時間が楽しいんだよ」
朝、おかゆと米麹を混ぜてから甘酒が出来上がるまでの8時間で、大学進学で単身上京した当時を思い出したり、完成した甘酒に合うフレーバーを頭の中でいろいろ組み合わせたり。決して短い時間ではありませんが、さまざまな思いが行き交ってワクワク楽しい時間を過ごせました。
最後に、体に良い甘酒づくりを続けるコツがないか考えてみました。おかゆは消化が良いので朝食に合います。中国や台湾などで、朝、現地の人が屋台でおかゆをすすっている姿を見たことがある人もいるのではないでしょうか。
1合分のおかゆを炊いて、半分を朝食でいただき、もう半分は米麹と合わせて魔法瓶に詰めれば、甘酒ライフを続けやすくなりそうです。午後からもうひと頑張りしたいときのエナジードリンクに、昼過ぎに小腹が空いたときのおやつに、買うよりもほんの少し美味しい甘酒の大活躍は間違いなし! ぜひ1度、お試しあれ。
(取材・文/髙橋尚美)
■たかはしなおみ/ライター
大手通信キャリア系列の出版社とニュースサイトで勤務後、夫のUターン転職で岐阜へ。2014年からフリーライター。主に食育、家事、育児、マネー、不動産の記事を執筆。3児の母で精神年齢は幼児並みの四十路。
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