【VW ゴルフ GTI試乗】日常性と異次元の速さを兼備した懐の深い走りに脱帽
&GP / 2017年8月5日 19時0分
【VW ゴルフ GTI試乗】日常性と異次元の速さを兼備した懐の深い走りに脱帽
VW(フォルクスワーゲン)の代名詞的存在であり、世界累計販売台数は3300万台を超える同ブランドの看板モデル「ゴルフ」。
今回、7世代目ゴルフのマイナーチェンジと合わせて、各部を一新した高性能バージョン「ゴルフ GTI」をドライブする機会に恵まれましたので、その印象をレポートします。
ゴルフ GTIは、ゴルフシリーズのスポーティグレードに代々与えられてきたグレード名で、いわゆる“ホットハッチ”の代名詞ともいえる称号。今ではより高性能な4WDモデル「ゴルフ R」がラインナップに加わったため、シリーズ最速の座は譲ってはいるものの、FF車としては依然として最もホットなバージョン。
2016年に、市販車開発の聖地といわれるドイツ・ニュルブルクリンクの北コースで、当時の“FF量産車最速”となるタイムをたたき出したゴルフも、GTIの名を冠した「ゴルフ GTI クラブスポーツS」でした。
さて、ベースとなる新しいゴルフは、マイナーチェンジで前後ライトがLED化され、ヘッドライトを囲むように配置されたLEDデイライトで精悍さが増しました。特にGTIは、フロントフェイスにレッドのラインがあしらわれ、ホイールからのぞく同色のブレーキキャリパーと相まって、さらにスポーティな印象を強めています。このヘッドライトとラインのおかげで、従来とはかなり印象が変わり“走りが良さそう”というオーラを放っています。
その印象は、シートに乗り込みんでアクセルをひと踏みすると、確信に変わります。今回のモデルチェンジで“マルチポイント噴射”を備えた“デュアルインジェクションシステム”を新採用し、従来モデルから10馬力のパワーアップを果たした2リッターの“TSI”エンジンは、1500~4600回転という幅広い回転域で最大トルクを発生することもあって、アクセルペダルに軽く足を乗せただけで、ベースモデルの1.4リッターエンジンとは明らかに異なる加速を披露します。
“ドライビングプロファイル機能”を「ノーマル」から「スポーツ」に切り替えると、排気音も変わり、変速プログラムも高回転まで引っ張る特性となるので、さらに俊敏な加速が可能に。試乗車には、オプション設定の“DCC(アダプティブシャシーコントロール)”が搭載されていたので、ダンパーの減衰力や電動パワーステアリングの特性も、同時にスポーティなものに切り替わります。
とはいえ「スポーツ」モードを選択しても、街中や渋滞時での乗りにくさを感じないのが、ゴルフ GTIのすごいところ。低速でゆっくり走っていても、レスポンスが良すぎてギクシャクすることはありませんし、都市高速などによくある路面の継ぎ目を乗り越えても、ゴツゴツとした印象は皆無。しっかり踏ん張ってはくれるけれど、路面の凹凸などはしなやかにいなしてくれる印象です。
「スポーツ」モードのまま、少し深めにアクセルペダルを踏み込むと、1380kgの車体が軽やかに加速します。モードに合わせ、スポーティな表示となる新しいデジタルメータークラスター“アクティブ インフォ ディスプレイ”も気分を盛り上げてくれますが、決してタコメーターの針がヒュンヒュン跳ね上がるような特性ではなく、アクセルを踏みやすいトルクの出方です。
以前ドライブしたルノー「メガーヌ RS 273 ファイナルエディション」のようなチューニングカーっぽさは感じられませんが、このくらいの方がアクセルペダルを積極的に踏めて、速く走れそうな気がします。コーナーリング中にアクセルペダルを踏み足しても、トルクステアを感じさせることはなく、車体はピタッと安定。この辺りに、ベースモデルが持つシャーシの完成度の高さが感じられますね。
そして、そのまま街乗りしても、乗りづらさを感じることはありません。前述したように足回りもしなやかなので、同乗者に不快感を与えることはなさそう。ただ「スポーツ」モードだとシフトプログラムが高回転まで引っ張る特性になるので、燃費がちょっと気になるくらいでしょうか。この辺りの懐の広さにも、ゴルフシリーズの伝統を感じさせます。
逆に「ノーマル」モードや「エコ」モードで走っていても、少し深めにアクセルペダルを踏み込めば“速い!”と感じるのに十分以上の加速を披露してくれます。日常の使い勝手と速さが同居しているというか、日常の延長線上に取り出しやすい速さがある、という印象です。
インテリアに目を向けても、ゴルフ GTIのキーカラーであるレッドのステッチをあしらったステアリングや、タータンチェック柄のシートなど、スタンダードなゴルフとは一線を画す仕上がり。
シートは座り心地が良く、タイトな印象はありませんが、コーナーリングで横Gがかかるシーンでは包み込むように体をホールドしてくれます。どんなシーンでも扱いやすく、アクセルを踏み込むだけで異次元の速さを味わえる。そんな、両極端ともいえる特性を、二面性ではなくひとつの面の中に収めているのが、ゴルフ GTIのすごいところといえそうです。
ちなみに価格は、ベースモデルである1.4リッターの「ゴルフ TSIハイライン」が325万9000円なのに対し、74万円アップの399万9000円(6速“DSG”モデル)。この走りの良さと適度に存在感を示せる内外デザインが手に入ることを考えれば、かなりお得なのではないかと思います。
<SPECIFICATIONS>
☆GTI(6速DSG “DCC”パッケージ装着車)
ボディサイズ:L4275×W1800×H1470mm
車重:1410kg
駆動方式:FF
エンジン:1984cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6速DSG
最高出力:230馬力/4700~6200回転
最大トルク:35.7kg-m/1500~4600回転
価格:399万9000円
(文/増谷茂樹 写真/村田尚之)
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