【マツダ CX-8試乗】「3列シート車でSUV」の新選択。プレミアムな走りは想像を超えた
&GP / 2017年12月24日 11時0分
【マツダ CX-8試乗】「3列シート車でSUV」の新選択。プレミアムな走りは想像を超えた
マツダの国内向けSUVラインナップにおける最上位モデル「CX-8」の販売がスタートしました。
デビュー時のレポートでもご紹介いたしましたが、CX-8最大の特徴は、3列シートの採用によって6/7人乗りを可能としていることでしょう。
つまり、SUVでありながら、家族や友人とのドライブといったミニバン的な使い方も想定したモデルというわけです。となると気になるのは“走りはどうなの?”という点。今回、市街地と高速道路をテストドライブできましたので、その印象をレポートします。
■CX-8の3列目席は、プレミアムにふさわしい静粛性と乗り心地
フロントフェンダーからリアへと流れる抑揚の効いたライン、シルバーの加飾があしらわれたバータイプのフロントグリルなど、CX-8のエモーショナルで品格のあるフォルムは、ひと目見ただけでマツダのSUVと分かるたたずまい。一方、ディテールの処理と4900mmという全長を除くと、そのデザインは弟分に当たる「CX-5」に通じる方程式が活かされています。
このようなエクステリアから「CX-8はCX-5のストレッチ版なの?」と推測される方もいるのでは? でも、そうした回答を導き出すのはやや早計です。マツダは海外向けモデルとして、より大型の「CX-9」を用意しており、CX-8はCX-9の構造を元に、全幅などを縮小したモデル、というのが正解に近いと思います。
実際、2930mmというホイールベースはもちろん、プラットフォームや足まわりなども、CX-9をベースに最適化を図ったもの。決して、CX-5の設計にゆとりがないわけではありませんが、“プラス2名”分の荷重増加や、厳しさを増す安全面への対応を考えると、CX-9ベースの方がよりマージンを確保しやすかったのでしょう。
とはいえ、ドライバーズシートに収まると、メーターまわりや各操作系の配置など、眼前に広がる景色はCX-5と“ほぼ”共通。しかし、センターコンソール周辺の形状や、ダッシュボードにあしらわれる本木目パネル、そして、シートの感触などはCX-5とは異なり、フラッグシップSUVふさわしい質感やデザインへと改められています。この辺りの巧みさには「マツダやるなぁ…」と思わず“ニヤリ”としてしまいます。
そして、こうしたマツダの巧みさと“ニヤリ”は、走り出してからも続きます。
キーを受け取ったのは、最上位グレード「XD Lパッケージ」の4WDモデル。CX-8のエンジンは、2.2リッターディーゼルターボ“スカイアクティブ-D”のみの設定で、最高出力はCX-5に比べて15馬力アップの、190馬力となっています。一方、車両重量は約200kgほど増えているので、動力性能としてはCX-5とほぼ同等では? と想像していました。
しかし、エンジンを始動させて100mも進むと、その違いに再び“ニヤリ”としたのです。まず驚いたのは、その静粛性の高さ。“超高応答マルチホールピエゾインジェクター”や“新形状ピストン”、そして“急速多段燃焼”など、細部にわたる改良が図られたスカイアクティブ-Dは、出力の向上だけでなく、その滑らかさや、音量・音質においても、従来型を上回る完成度を感じさせてくれたのです。
ストップ&ゴーを繰り返す市街地を進むと、その上質な感触がさらに際立ちます。特に、しっとりとしていて息の長い加速感は、「スムーズ」としか表現できない筆者の語彙力のなさが申し訳なく感じるほど。ディーゼルの場合、最新エンジンであっても、滑らかという表現を使うことに躊躇する場合がありますが、粒感の細かいサウンドも含め、新しい2.2リッターのスカイアクティブ-Dは、迷うことなく滑らかといえるレベルに達しています。
この好印象は、高速道路にシーンを移しても変わりません。静粛性は高級ミニバンをはるかに凌駕するほど。特に、車体後方からの雑音がしっかりシャットアウトされており、フロントシートとサードシート間での会話も、声量を上げることなく楽におしゃべりできます。また、100km/h巡航時のエンジン回転数は2000回転弱といったところですが、80km/h程度から追い越しなどで100km/h前後まで加速しても、音量や音圧の変化をキャビン内で感じることはありませんでした。
乗り心地についても、プレミアムと呼ぶにふさわしい上質さを実現。高速道路の舗装の繫ぎ目などを通過しても、車内ではかすかに「トン」という音が聞こえる程度で、わだちなど大きなうねりを通過しても、車体が左右に揺すられることもありません。また、コーナーなどでボディがロールした直後も、不快な揺り返しがなく、極めて自然にスッと姿勢が戻ります。
しかも、この落ち着きある乗り心地が、フロントシートはもちろん、セカンドシートでもサードシートでも変わらない、というのが、CX-8の特筆すべき点。特に、リアタイヤよりも後方に配置されるサードシートの乗り心地といえば、一般的に、小刻みかつ上下に揺すられる印象がありますが、CX-8ではそうした不快さを感じることはありません。CX-8のサードシートは、身長170cmの乗員を想定して設計されたもので、スペースだけを見ればミニバンのそれには適いませんが、着座姿勢や乗り心地においては、ミニバンよりも十分なアドバンテージがある、といえるものでした。
SUVとミニバンのいいとこ取りをした、3列シート車としてはもはや突っ込みどころのないCX-8ですが、あえて重箱の隅を突くならば、2WD(FF)モデルと4WDモデルとでは、若干乗り味に違いがあったのが気になりました。
具体的には、4WDモデルの方がしっとり感や重厚さがより濃密、濃厚でした。「降雪地に出掛けることは少ないし、ミニバン代わりとして使うので4WDは不要」という人もいるかと思いますが、現時点においてCX-8の“上質さ”を余すところなく味わいたいなら、上位グレードの4WDモデルの方がベターだと思います。
ともあれ、SUVやミニバンを検討中ならば、ぜひ一度、CX-8をドライブしてみることをお勧めします。もちろんその際は、サードシートのチェックをお忘れなく。
<SPECIFICATIONS>
☆XD Lパッケージ(4WD)
ボディサイズ:L4900×W1840×H1730mm
車重:1900kg
駆動方式:4WD
エンジン:2188cc 直列4気筒 ディーゼル ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:190馬力/4500回転
最大トルク:45.9kg-m/2000回転
価格:419万400円
(文&写真/村田尚之)
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