【検証2017-2018年の注目車⑤】アレがなければ…。日産「リーフ」の“残念”じゃない真価に迫る
&GP / 2018年1月7日 11時0分

【検証2017-2018年の注目車⑤】アレがなければ…。日産「リーフ」の“残念”じゃない真価に迫る
2017-2018 日本カー・オブ・ザ・イヤーならぬ“残念”カー・オブ・ザ・イヤーといえば、日産「リーフ」に尽きるのではないでしょうか?
ただし、この場合の“残念”とは「デキが悪い」とか「期待外れ」といった意味ではなく、単に、評価のまな板に載せることができなかったという点において。
メーカーの人々はもちろん、カー・オブ・ザ・イヤーの関係者、はたまた、2世代目となった本格EV(電気自動車)が「どのように評されるのか?」と興味津々に見守っていた世のクルマ好きにとって、日産自動車のノミネート辞退は拍子抜けの結果となりました。
個人的には“完成車検査の不正事件”を背景として踏まえた上で、ハードウェアとしてのリーフを評価してもらってもよかったのでは? と思いますが、そこにはいろいろな事情が絡んでいるのでしょう。いずれにせよ“残念”です。
■バッテリーの容量アップでオーナー像に変化が…
そんな思いを抱きながら、2017年の年末に行われたリーフの試乗会に参加してきました。
基点となった会場は、カートレースなどが開催される、新装したばかりのキレイなミニサーキット。EVというと、どうしても“環境&航続距離”にトピックが集中しがちですが、実は「ドライブしても楽しい!」ということもアピールしたい…。そんな日産自動車の意向が反映された試乗スポットです。
2017年10月に発売された新型リーフは、分かりやすいカッコ良さをまとったボディに、大容量化したバッテリーを搭載。カタログ上は、400kmの航続距離を謳うピュアEVです。価格は315万360円〜。
新リーフは、発売開始後3カ月間で、約1万2000台の受注を得たのだとか。人気グレードは、運転支援システム“プロパイロット”を標準装備した最上級の「G」(399万600円)で、全体の64%。次いで、“ヒートポンプシステム(省電力暖房システム)”などを標準装備する「X」(351万3240円)が31%。ベーシックな「S」はわずか5%に過ぎません。リーフを求めるユーザーは「先進的なカーライフを味わいたい」と考える人たちでしょうから、納得の受注構成です。
ただし、受注台数に関しては「もうちょっとスタートダッシュを利かせたかった」と、日産自動車の関係者はいいます。件の検査員問題に加え、大々的な発売キャンペーンを張れなかったのが響いているのでしょう。ホント“残念”。
スタッフの方に話をうかがって驚いたのは、リーフ購入者のほぼ半数が、マンションなどの“集合住宅住まい”ということ。「ええーっ! 充電はどうするんですか?」と当たり前の質問を発すると、「何日か乗って、電池が減ってきたら近所の急速充電器でチャージするんです」とのこと。うーん、そうなんですか! 定額制の充電サービスはあるものの、やはりEVは「夜間に自宅で充電してこそ価値がある」と考えていた自分は、古いのでしょうか…。
新型リーフの航続距離は、公称400km。実電費は7掛けで280kmとして、毎日通勤で50km走っても、5日間はカバーできる計算です。なるほど、それなら週イチの充電で事足りるわけですね。バッテリーに厳しい急速充電によって、劣化がどれだけ進むかは分かりませんが、「相応の対策を取っている」との回答を得ました。そもそも、バッテリーの大容量化で充電の回数そのものが減れば、ヘタリも減るというもの。日産自動車では8年16万kmのメーカー保証を設けています。
さて、新型リーフのドライビングプレジャーについて、です。EVならではのスムーズさ、静かさについては、それこそ、19世紀末の自動車黎明期から賞賛されています。リーフでは、EVが元来持つ特性に加え、遮音・吸音を徹底。100km/h巡航時の静粛性は、メルセデス・ベンツ「Eクラス」やBMW「5シリーズ」のそれに匹敵するといいます。実際、静かな車内ゆえ、むしろタイヤが発するロードノイズが耳につくほどです。
動力性能に関しても、電気モーターの最大トルクは32.6kg-m(320N・m)ですから、いわば3.2リッターのV6エンジン級。それも、ペダルを踏んだ瞬間から発生するので、俊敏かつ痛快な加速感です。
その上、新型リーフでは、減速時の回生機能と機械的なブレーキを協調制御することで、ワンペダルで走れる“e-ペダル”機能を実現しました。
内燃機関のクルマで例えると、1速、2速時の強力なエンジンブレーキを積極的に活用し、クルマを運転するようなもの。ブレーキペダルを踏む代わりに、アクセルペダルを戻す感覚が新しくて、楽しい。意外とすぐに慣れるものです。ただし、ガツン! と急に止まるには、やはりブレーキペダルを踏む必要があります。
面白いのは、e-ペダル機能を使うと、結果的に運転が丁寧かつスムーズになること。ペダルを踏み換えてブレーキペダルを踏まずに済むよう、つまり、文字どおりワンペダルだけで運転を続けるために、e-ペダルの減速力を踏まえ、しっかり先読みをしなければいけない。e-ペダル機能には、ある種“ドライバーの教育効果”があるわけです。
とはいえ、繰り返しになりますが、急減速にはブレーキペダルを踏む必要があります。今回のように、ミニサーキットで他車の心配をしないで済む状況なら、大いにワンペダルドライブを満喫できますが、一般の公道、市街地ではどうなのでしょう? 僭越ながら、上から目線で苦言を呈しますと、クルマを減速、停車させるのに「ペダルを戻す」と「ブレーキペダルを踏む」の2系統があるのは、慣れる、慣れないといった次元ではなく、根本的に混乱の元になりかねません。
さんざんe-ペダル・ドライブを楽しんでおいてナンですが、内燃機関のクルマにおけるエンジンブレーキ同様、e-ペダル機能は、あくまで補助的な機能と捉えるべきでしょう。あたかも、ワンペダルで運転が完結するようなアピールをすることは、安全を最優先すべき自動車メーカーとして間違っているように思います。
…といった諸々は、守旧派クルマ好き、日産車好きの愚痴に過ぎないのでしょうか。かつて“技術の日産”にほれて日産車を買い続けていた自分にとって、最近の“やっちゃえ”系の宣伝方法には共感できないことが多く、そこだけは“残念”でなりません。
<SPECIFICATIONS>
☆G
ボディサイズ:L4480×W1790×H1540mm
車重:1520kg
駆動方式:FF
最高出力:150馬力/3283〜9795回転
最大トルク:32.6kg-m/0〜3283回転
価格:399万600円
(文&写真/ダン・アオキ)
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