【アウディ Q5試乗】鋭いデザインとマニアックなまでの走りへのこだわりは驚異的
&GP / 2018年1月14日 11時0分
【アウディ Q5試乗】鋭いデザインとマニアックなまでの走りへのこだわりは驚異的
気がつけば、すっかり“SUVフルラインメーカー”となったアウディ。メルセデス・ベンツ、BMW、そしてアウディの、いわゆる“ドイツ御三家”は、いずれもSUVバブルの勢いに乗って我が世の春を謳歌中。それもあって、アウディのSUVへの力の入れ方も尋常ではない。
アウディでは元々「アバント」=ステーションワゴンの販売比率が高く、1999年には他のプレミアムブランドに先んじて、「オールロードクワトロ」と名づけたステーションワゴンベースのクロスオーバーSUVもデビューさせている。それを考慮すれば、4WDシステム=“クワトロ”へのこだわりも含め、SUVと親和性の高いブランドといえるかもしれない。
2005年に全長5mを超える大型の「Q7」から始まったアウディのSUVは、「Q5」、「Q3」、そしてコンパクトな「Q2」と、着々とラインナップを拡大。正式発表はもうちょっと先になるが、「Q8」という最上級モデルや、流行のクーペ風SUV「Q4」もスタンバイしている。もはや同社の主力モデルは、SUVといわんばかりの勢いだ。
■SUVなのにバッテリーを荷室床下に配置するQ5
そんな、アウディSUVシリーズの現時点での最新モデルが、今回紹介する新型Q5だ。
新型Q5のボディサイズは、全長4680×全幅1900mm。これは、弟分のQ3に比べると280mm長くて70mm幅広い。兄貴分のQ7に比べると、全長が390mm短くて幅が70mm狭い。ちなみに、SUVをガンガン使い倒す人にとって重要なポイントであるラゲッジスペースの容量は、Q5が550Lなのに対し、Q3は460L、Q7はサードシートを折り畳んだ状態で770L(サードシート使用時は295L)。価格帯は、Q3が369万円〜469万円、Q5が662万円〜691万円、そして、Q7は812万円〜938万円となっている。
こうして改めて3台を比べると、ボディサイズも価格も、見事なまでに上下関係が整然としていて、設定が実に巧みであることが分かる。いい換えれば、ニーズに応じて選び分けられる設定であり、ユーザーにとって優しい設定ともいえる。
今回の主役である2世代目Q5は、2017年9月末に日本へ上陸した。フルモデルチェンジしても、エクステリアデザインは先代のイメージを色濃く残すのが最近のアウディ流で、新型Q5も例外ではない。とはいえ、鋭さを増したヘッドライトをはじめ、細部が一段とシャープになっているので、見る人が見れば、新鮮さをしっかり感じとれる…そんな印象だ。
実車に接して驚いたのが、キャラクターライン。ボンネットとボディ側面に走るプレスラインのシャープさは、もはや驚愕のレベルで、鋭い刃物のようなそのエッジの尖りぶりといったら「アウディ以外ではちょっと再現できないだろうな」と思えるレベルだった。鋭いキャラクターラインを実現するには、鉄板をプレスする機械の精度を高める必要があるし、さらに、プレスする金型の寿命が短くなるなど、コスト管理上のハードルが上がる。しかし、そういったネガを恐れず、他社にはできないこと(技術的には可能でも総合判断でやらないこと)を細部まで突き詰めてライバルに差をつけるアウディのこだわりは、オーナーの満足度向上に直結するに違いない。
細かい部分といえば、マニアックな話になるけれど、新型Q5のバッテリー搭載位置にもこだわりを感じずにはいられなかった。一般的なエンジンルーム内ではなく、なんとリアシート直後の床下に収まっていたのだ。これは、比較的重量のあるバッテリーを車体の前方ではなく、後方に置くことで前後重量配分を整え、また、できるだけ重心を低くするための手法。だがその分、ラゲッジスペース(床下格納)の容量が減ってしまうなど、わずかながら実用上のデメリットが生じてしまう。走り重視のスポーツモデルなら分かるけれど、SUVでもこういったことをサラリとやってのけるのは、さすがはアウディである。
それにしても、新型Q5の細部を見れば見るほど、アウディの走りへのこだわりに感心させられる。例えば、サスペンションアーム類を鍛造アルミ製とし、軽量化と同時にバネ下重量を軽減しているし、フロントブレーキには高コストながら性能が高い、4ポッドのモノブロックキャリパーが標準採用されている。そういった細かいこだわりの積み重ねが、走りの味を高めているのだ。アウディといえば、とかく都会的なスタイリングや質感の高いインテリアが語られることの多いブランドだが、新型Q5を子細に見ることで、アウディの愚直なクルマづくりを改めて実感させられた。
新型Q5に搭載されているエンジンは、2リッター4気筒の直噴ターボ。1800kgを超える車両重量に対して不安を覚えるかもしれないが、パワーは252馬力、トルクはわずか1500回転から37.7kg-mを発生するので、力不足の印象は微塵もない。低回転域から太いトルクを発生する優等生的な4気筒ターボユニットゆえ、アクセルを踏み込んで高回転域まで回した時の爽快感はさほどないが、気がつくと速度計の針が上がっているという感覚を味わわせてくれる。
アウディの各モデルは、例えば、滑りやすい雪道といった路面状況に左右されず、どんな状況でもタイヤがしっかりと路面を捉えているという安心感が強い。それがドライバーにとっては、クルマに対する信頼を生み出すのだが、新型Q5では特に、高速域での優れた安定性が印象的だった。アウディの本拠地があるドイツには、一部区間が速度無制限の高速道路=アウトバーンが存在するが、たとえSUVであっても、その追い越し車線をガンガン走れるクルマづくりが行われていることを、改めて認識した。
このほか新型Q5では、65km/h以下では速度調整だけでなく、(ハンドルに手を添えておく必要はあるが)ステアリング操作もクルマが行ってくれる“トラフィックジャムアシスト”なども標準装備。ライバルモデルに対し、そういった先進運転補助装置でも先端を行っている。
このように、新型Q5はクルマとしての出来は素晴らしい。だが、強いていうならば、ちょっと残念なのは、特筆すべき“華”が見当たらないことだろうか。もしかすると今は、これまで先進的なスタイルなどでライバルをリードしてきたアウディゆえの“踊り場”なのかもしれない。もう少し時間を経て登場する新型車は、またアウディらしい大きなトキメキを取り戻してくれそうな予感がする。
ところで“巨体”で“高価格”のQ7はともかく、Q5とQ3では、選択に迷うという人もいるかもしれない。そんな場合は一度、リアシートに座ってみることをお勧めする。オトナが座るのに不自由はないけれど、足元空間の余裕は少ないQ3に対し、Q5ではゆったり感が増している。リアシートを使う機会の多いファミリーユースなどであれば、やはりQ5のサイズ的なゆとりが大きなメリットとなるはずだ。
<SPECIFICATIONS>
☆ファーストエディション
ボディサイズ:L4685×W1900×H1665mm
車重:1820kg
駆動方式:4WD
エンジン:1984cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:252馬力/5000〜6000回転
最大トルク:37.7kg-m/1500〜4500回転
価格:704万円
(文&写真/工藤貴宏)
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